連鎖取引類似の方法で勧誘された投資被害事案において,直接の勧誘者ではない上位者の不法行為責任を肯定した裁判例+今月(末)の1枚

1 直接の勧誘者ではない上位者の不法行為責任を肯定した裁判例(東京地判平成29年10月25日)
 連鎖(マルチ)取引類似の方法で勧誘された投資被害事案において,直接の勧誘者ではない上位者の不法行為責任を正面から肯定した判決が出ました。
 判決:東京地判平成29年10月25日 
 弊所HP上の裁判例にも掲載してあります。

 本件は,毎月3%から8%という高配当を謳うFX取引の投資ファンドが問題となった事案で,勧誘方法としては連鎖(マルチ)取引類似の方法が用いられていました。
 本件の原告は,被告から直接の勧誘は受けておらず,被告の下位者から勧誘を受けて投資をして損害を被った者でした。
 被告からは,自身は原告と面識がなく直接の勧誘を行っていないし,下位者に勧誘を行わせたこともないから責任を負わないとの主張がなされました。
 そこで,連鎖(マルチ)取引類似の方法で勧誘が行われた投資被害の事案で,直接の勧誘者ではない上位者が不法行為責任を負うかが問題となりました。
 
 本判決は,まず問題となった商品について,「出資金の運用利回りの平均パフォーマンスは,月3%ないし8%,実質6%ないし16%であり,最高で22.8%であることなどの宣伝が行われ,これに基づく投資の勧誘が行われていたが,このような異常な高利率による配当を行うだけの運用益を継続的に出し続けることは常識的に考えて不可能である。さらに,●●(運用者)に対する成功報酬や本件仕組みの下での紹介料も支払う必要があり,早晩破綻することが避けられないものであった。」,「●●ファンドにおける顧客の出資金の管理方法や出資金の運用の仕組み,具体的な運用実績,紹介料の支払い原資など一切明らかにされない」ことなどを指摘して,「出資金の運用実体は,その一部について運用の実体はあったとしても,全体としてみれば,常識を超えるような高利回りの配当等という虚偽の事実を宣伝し,これを信じた顧客から出資金名下に資金を集め,その一部を配当として還元することで高利回りの虚構性を隠蔽し,連鎖取引類似の勧誘方法(本件仕組み)を介して,顧客を拡大して資金の増大を図るという詐欺的なものであって,顧客に約束した配当を払えるだけの運用実体はなかったと認めるのが相当である」として違法性を的確に判示しました。

 その上で,被告(直接の勧誘者ではない上位者)の責任について,上記のような「常識外ともいえる高配当の支払いが謳われていることを認識していたこと」や本件における紹介料の受領の態様等を指摘して,「勝部(運用担当者)から運用実体について説明を受けていなかったとしても,被告自身としても,勝部ファンドが顧客に約束していた配当金を支払えるだけの出資金の運用の実体を有しない虚構のものであることを認識していたと優に認めることができる」とし,「本件仕組みに基づき自身の下位者を通じて投資勧誘活動を行うことで,原告を含む顧客を詐欺的な商法である勝部ファンドに出資させたものであると認められる」,「被告について,原告を虚偽取引に勧誘したことについて故意による不法行為が成立する」と判示しました。

 本判決は,高配当を謳うファンド商法について,喧伝された高配当は常識的に実現不可能であること,被告らから客観的な履歴が明らかにされないことなどを指摘して,詐欺的な商品である(当初行われた配当は高利回りの虚構性を隠蔽するためのものである)と正解してこれを明示的に判示したことに加え,特に,直接勧誘を行っていない上位者に責任ついて,(被害者との関係で直接勧誘を行っていなくとも)下位者を通じて投資勧誘活動を行うことで,原告を含む顧客を詐欺的な商法に出資させたといえるとして,全面的に(過失ではなく)故意の不法行為責任を認めている点が注目されます。

 近時,被害が後を絶たない連鎖(マルチ)取引類似の方法が用いられて被害が拡大する類型の投資被害事案において,直接の勧誘者の上位者からしばしばなされる「自身は原告と面識がなく直接の勧誘を行っていない」との主張に対する裁判所の明確な応答であり同論点について参照価値があるものと考えます。

2 今月(末)の1枚
 9月らしい風景,10月らしい風景というと,皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。
 私にとってはこれがなかなか難しく,工夫しながら作品を作っています。

サロンカーなにわ 芦原温泉-丸岡(北陸本線)

 まずは9月,頭に浮かんだのは,一面に広がる蕎麦畑に咲く蕎麦の花でした。
 そんな中を特別仕様の団体臨時列車(その名も「サロンカーなにわ」!)が駆け抜けます。
 この列車はお召列車にも使用されることもある,JRに西日本が誇る由緒正しき列車です。

カシオペア 氏家-蒲須坂(東北本線)

 次に10月,初秋の日本の風景といえば,やはり色づく稲穂です。
 そして,その稲穂が美しく輝くのは,朝日に照らされる快晴の日の早朝。
 そんな天気を確信する天気図が出た10月初旬,早朝に東京へ上る寝台列車カシオペアを狙いました。
 背後に聳えるは那須連山,青空が気持ちいい!!