D9投資被害対策弁護団・sener投資被害対策弁護団

・集団訴訟の提起について
平成30年10月29日から同年31日にかけて,当弁護団は,東京地方裁判所に合計6件の損害賠償請求訴訟を提起しました(原告138名,訴額5億2000万円余)。

・平成31年3月1日現在,D9関係で4237万5628円,sener関係で1390万6819円の現実の被害回復がなされています(被害回復がなされた被害者には個別にご連絡し,事件終了等の手続が進んでいます。)。今後訴訟手続等が進んでいく中で随時被害回復がなされていくことが期待されます。

・sener関係者逮捕の報道について
平成30年11月14日,警視庁は,元本保証や高額配当を約束し,無登録でsenerへの出資を募ったとして,関係者の男8名を金融商品取引法違反(無登録営業)で逮捕した旨公表しました。これによって,senerに関連する組織の内実や出資金名目の金銭の流れなど,senerに関する実態の解明が進むことが期待されます。当弁護団としましても,引き続き情報収集を行い,本件の被害回復に務めていく方針です。

 当弁護団は,現在新たな相談を受け付けていません。


「D9投資被害対策弁護団」及び「sener投資被害対策弁護団」について

代表弁護士 荒井 哲朗
弁護士 島  幸明
同   三ツ村英一
同   浅井 淳子
同   太田 賢志
同   五反 章裕
同   津田顕一郎
同   戸田 知代
同   見次 友浩

D9投資被害対策弁護団事務局:d9-bengodan@aoi-law.com
sener投資被害対策弁護団事務局:sener-bengodan@aoi-law.com
【事務局所在地】あおい法律事務所
〒100-0012 東京都千代田区日比谷公園1-3 市政会館地階

 

「D9Club」について

第1 事案の概要

1 「D9Club」事件は,複数の勧誘者らが,設立後13年以上継続しているブラジル法人であるとされる「D9Club」に「投資」することより,著しく高率の配当(紹介ボーナスやバイナリ―ボーナス等の複数の配当あるいは報酬があるが,このうち52週にわたり出資者に毎週支払われる配当のみでも週利3~8%程度となる。)を得られるなどと喧伝するなどして,主要勧誘組織統括者から,マルチ商法の手法を用いて下位の勧誘者を拡大し,さらに被害者を拡大させていくという組織的勧誘により投資金名下に資金を集めたが,資金を勧誘上位者らに対して分配するなどして費消し,「配当」はもちろん,投資金として出捐させた資金の返金にも応じないという事案(以下,「D9商法」という。)である。

D9商法は,上記週ごとの配当のほかに,MLM(マルチレベルマーケティング)態様の報酬が入ることがうたわれて,爆発的に拡散した。D9商法では,マルチ様組織の紹介元と紹介先にいずれも自己を配置する自己アフィリエイトも可能であり,組織の階層は相当の段数に及んだようである。

D9商法の参加者は,配当あるいは報酬(以下,併せて「配当」という。)を得るための「パッケージ」を購入する。パッケージには,ブロンズ,シルバー,ゴールド,ゴールド+の4種類があり,どれを購入したかによって受け取る配当の利率が変わる。以下では,説明の簡略化のために最も配当率が高く,購入が 推奨されていたゴールド+を基準に述べる。ゴールド+のパッケージは,2050米ドル前後(代理店や勧誘上位者による代行料金を含めるとして25万8000円から26万6000円などと円建てにされることもあった。)とされる。パッケージの購入対価は,ビットコイン,現金手渡し,口座振り込みなど複数の手段で徴収されており,勧誘グループごとに主要な決済手段が異なる傾向がうかがわれる。

D9商法には,おおよそ6種類の配当が存在している。例えば,ゴールド+を1口購入した新規参加者Aには,まず,52週にわたって1口当たり毎週170米ドルの週ごとの配当(①)が入る。

参加者Aから直紹介者Bが出れば,同直紹介者Bの購入したパッケージに振り分けられたポイントの15~50%(上記の例で直紹介者Bもゴールド+を購入した場合は,1口当たり340ポイントの50%)が,直紹介ボーナス(②)としてAに入る。なお,1ポイントは1米ドルに換算されるため,340ポイントの50%は170米ドルに相当することとなる。

さらにBの下にC,その下にD,さらにE, F,Gと参加し,それぞれがゴールド+1口を購入すると,Aにはマルチ組織の上位者として,自己の6段下までの参加者が購入したパッケージのポイントの1~5%(段が遠くなるほど利率が下がる)が紹介マルチボーナス(③)として入る。この場合,Aの6段下のGが購入したゴールド+に振り分けられた340ポイントから,直上のFが5%,その上のEが3%,Dも3%,Cが2%,Bが1%,Aも1%を紹介マルチボーナスとして得る。すなわちAのグループ全体では,Gのゴールド+1口340ポイントから合計15%に当たる51ポイント(すなわち51米ドル相当)が配当されることとなる。

紹介マルチボーナス(上記③)は,勧誘組織の下位者がパッケージを購入した際に1度のみ配当されるが,このほかに,マルチ様勧誘組織に毎週配当される週ごとのマルチレベルボーナス(④)があり,下位者に配当される上記①の週ごとの配当の1~3%に相当する配当を,上位者が得る。組織全員がゴールド+を購入していれば6段上の上位者までが週ごとのマルチレベルボーナスを得るため,上記の例で言えばGが購入したゴールド+1口2050米ドル前後(の週ごとの配当170米ドル)に対し,Aのグループ全体に10%にあたる17米ドル(週利0.8%あまり,月利3%あまり)が振り分けられる。

さらに,D9商法にはバイナリ―ボーナス(⑤)が設定されている。参加者から派生する直紹介者は,自己の「右下」か「左下」に配置し,そこからピラミッド状に同じように拡散していく。上記の例がAの右下の組織であるとすると,さらに左下にB’,その下にC’,さらにD’と連なる組織が形成される。右下と左下の組織のうち,小さい方の組織で新たに購入されたパッケージのポイントの40%(60%と説明されている末端被害者も存在している。)がAに入る。Aから見て6段下のGまで形成された右下組織と,3段下のD’までの左下の組織があれば,小さい左下の組織がバイナリ―ボーナスの対象となり,例えばD’が新たにゴールド+1口(340ポイント)を購入すると,Aにはその40%にあたる136ポイント(136米ドル相当)が入ることとなる。

D9商法では,毎月50米ドルの授業料が徴収されており(ほとんどの場合配当名目で増えているポイントと相殺されている。),これに対する授業料マルチボーナス(⑥)と称する配当も存在するが,他の配当と比べれば少額で,かつ話が複雑となるため割愛する。なお,単純化のため,上記はAのグループに連なる者全員がゴールド+を購入していることを前提としている。

上記のとおりD9商法ではおおよそ6種類の配当制度が設けられ,この高額の配当制度のためにマルチ様に爆発的に広がりを見せたと言える。

このような異常な高配当を約した投資主体(とされる)D9Clubの収益源については,ブックメーカーを利用した投資がうたわれている。

イギリスには,ブックメーカーと呼ばれるイギリス政府公認の賭け業者(賭けの対象は,競馬,サッカー,選挙結果,天気予報など様々。)が複数存在するが,その中に,サッカークラブFCバルセロナの公式パートナーでもある大手ブックメーカーのBetfair社が存在する。D9Club JAPANや勧誘組織の上部は,D9ClubはBetfair社に出資して収益を上げていると喧伝していたようであるが,D9ClubはBetfair社をブックメーカーとするスポーツブッキング(賭け)をおこなって収益を得ていると説明されていたケースも見られる。

しかしながら,上記の説明のいずれであっても,D9商法の異常な高配当を賄う収益を上げることは,後述のとおり経済常識にも反し不可能であったと言わざるを得ない。

D9商法では,マルチ様勧誘組織の下位者がどのパッケージを購入したかによって,上位者の得る配当額が変わるため,できるだけ配当率の高いゴールド+の購入が全面的に推奨されていた。ゴールド+(2050米ドル前後だが上位勧誘者の代行代金を含め26万6000円前後である場合も。)が購入されると,上記①の週ごとの配当だけで,購入者本人に週170米ドルが配当される。週ごとの配当だけで,出捐金額の約8%を毎週稼ぎ出さなければならない計算である(月利にして33%,年利では398%)。上記の例で言えば,Gが購入したゴールド+1口(約2000米ドル)に対して,Aのグループ全体に初月で支払われる配当は,最低でも本人に支払われる680米ドル(170米ドルの4週間分),グループの上位者への②③⑤などの配当を加えれば900ドルを超え,バイナリ―ボーナスが生じればさらに高額となる可能性がある。すなわち,本人と直紹介者に支払われる配当(①②)のみでさえ,初月だけで投資資金の4割に相当する額が支払いに充てられる。そして,2ヶ月目以降も週ごとの配当(①170米ドル)と週ごとのマルチレベルボーナス(④Aグループ6段で合計17米ドル)は支払われ続けるため,出捐から約3か月で当初の出損金が霧散する計算である。実際,3か月で元が取れるなどと説明された者もいる。

6種類の配当のうち,週ごとの配当(①)を維持するだけで,ゴールド+であれば2050米ドルの投資で週170米ドル(週利8%以上,年利約400%),配当率最低のブロンズでも約350米ドルの投資で週12.75米ドル(週利3.6%以上,年利約175%)の収益を恒常的に上げ続ける必要がある。すなわち,D9Clubは毎年,出資者の投資資金を最低でも2.75倍から5倍にし続けなければならない(実際はこれに加え上位勧誘者への配当分も稼ぎ出す必要がある。)のであり,このこと自体が経済常識に反し,有り得ない。

具体的には,上記3のD9Clubの収益源が,Betfairへの出資すなわち株式投資であった場合(なお,Betfair Group Incは2016年にPuddy Power Plcに買収されているため,同年以降の株式投資を行う対象としてはPuddy Power Betfair Plc(以下,「PPBP」という。)と考えられる。),出資者たるD9Clubの収益源は配当である。しかし,PPBPの2016年一年間の株主配当は1株当たり165ペンスであり,PPBPの株価は,2016年末から2017年6月現在まで,8000ペンスから8700ペンスほどの間を推移しており,PPBPへの株式投資で年利175~400%を超える利益を出し続けることは不可能である。安定した収益を得る方法としては株式投資のほかに貸付け又は同様の実質を備える取引が考えられるが,PPBPあるいはその子会社が年利175~400%を超える著しい高利息で借り入れ等を行う必要性も,そのような借り入れ等取引について上場企業として株主に説明できる合理性も存在しないと考えざるを得ない。なお,Betfairは1日に100億円を動かしているので,その微々たる部分がD9商法の出資者に回ると説明されたものもいるようであるが,ブックメーカーが日々のブッキングで動かす金額とブックメーカーの収益は別物であり,PPBPの2016年度の年間の収益(Profit for the year all attributable to equity holders of the Company)は,226.6百万ポンド(1ポンド142円換算で約378億円)である。

また,D9Clubの収益源が,Betfairをブックメーカーとするスポーツブッキング(賭け)であった場合,莫大な掛け金を用いて安定して年利175~400%を超える収益を得ることはやはり実現不可能である。なぜならば,賭け金が増え,賭けの対象や機会が増えるほど勝率は下がり,勝ち負けの確率は徐々に1:1に近づくからである。スポーツアービトラージと呼ばれる複数のブックメーカーに賭けることで行われる賭け方(機会を限った小規模の投資で,確実に収益を上げようとする特殊な賭け方)ですらなく,1社のブックメーカーを用いて行う賭けで,安定して高率かつ高額の収益を出し続けることは不可能である。

D9Clubの事業がBetfairへの出資であれ,Betfairを用いた賭けであれ,D9商法への出資者への「配当」は,D9Clubの収益の実績にかかわらず確定した率で支払われることになっており,しかも,購入されたパッケージにつき週何ドルなどという形で支払われることになっていた。D9Clubの事業などと呼ばれていたものの実態は,高額の「配当」を支払い続けられるほど恒常的に高率の利益が上げられるものでは有り得ず,D9商法とは結局,いずれは破綻することを予測しながら短期間で多くの集金を行うための単なる集金システムであったことが容易にうかがわれ,要するに破綻必至の詐欺商法であったと断じざるを得ない。

なお,当初は配当名目で増えたとされる資金を出金することが可能だったようであるが,これは上位者が下位者を勧誘しやすくして被害者を拡大させるためのこの種商法の常套手段であり,タコ足配当で実際に資金が流出することによって遠からず破綻することを意味するに過ぎない。

このような状況の中で,上位・中間勧誘者によっては,自らもD9商法が破綻必至であることを知らずに投資をした被害者であるとして,自らD9Clubの責任を追及する等と称し,あるいは集団的に弁護士に依頼すると称して,出資者に呼びかけている者もいるようである。しかし,上位勧誘者が仮に自らも資金を出していたとしても,後述するように下位の被害者との関係においては賠償責任を負う立場にあるというべきであり,そのような利益相反する当事者間において,そのような関係にあることを説明することなく,共に被害者であるなどと説明して,自らD9Clubの責任を追及しようとするなどの行為は,自らへの責任追及の矛先をかわすことをその目的とするものである場合もあることから,被害者はその点慎重な判断をする必要がある。

2 違法性

D9商法の首謀者らないしそれに準じる者らは, 上記詐欺商法を共同して行った者らであるから,共同不法行為責任(民法709条,719条)を免れ得ないものと考えられる。これらの者に法人が含まれる場合は,民法715条,会社法350条に基づく責任を負い,法人の代表者ら役員は,会社法429条1項に基づく責任を負う。

本件では,投資額の全部がD9Clubに到達してさらにBetfairを用いた投資なるものに回されていたと見ることはできないから,出資者から集めた資金の全額もしくはその一部を上位勧誘者など関係者に流出させ,または,投資に回さずにそのまま配当に充てるなど,出資者に説明していた用途と異なる目的で流用していたものと考えられ,このような行為は,詐欺あるいは横領罪をも構成しうる犯罪行為でもある。

D9商法においては,出資者の大部分は,主要な上位勧誘者と末端の被害者の間に存在する(中間)勧誘者群を経由して勧誘されている。D9商法では,「プレジデント」,「バイスプレジデント」以下,「エグゼクティブ(CEO)」や「ディレクター(Principal)」など,上位勧誘者から順に「タイトル」と呼ばれる称号を付して表章しており,これらタイトル保持者の下に,勧誘者群が連なっている。

首謀者に準じるまでは至らない勧誘者らも,その勧誘行為においては,D9商法が上記のとおり破綻必至の詐欺商法であったのに,恒常的に高率の「配当」を得ることができるなどという虚言を弄して勧誘したものであり,不法行為責任を免れ得ないものと考えられる。

上位・中間勧誘者に対する請求に対しては,「自分も信じていた」,「自分も被害者である」,あるいは「自分が賠償すべきだとしても,責任を負うのは自分が受け取った配当の差の部分のみではないか」という反論がなされることが予想される(この種商法における常でもある。)。

しかしながら,上記のとおり勧誘者らは,下位者が「購入したパッケージ」に対して何ドルなどという態様で配当を得ており,その割合は,④(週ごとのマルチレベルボーナス)のみでも,全員がゴールド+であれば上位者6段で月利3%あまりであって,バイナリ―ボーナス(⑤)が加わればその配当率は計り知れない。いかなる投資であっても,勧誘者がこのような仕組みで高率の報酬を受領していれば破綻必至であることは自明であるから,上記主張は到底採用されるようなものではないと考えられる。

この点,当職らが追行した東京地方裁判所平成23年5月27日判決は,「被告Aは,要するにB(会社)の指示のとおりに説明したにすぎないから過失がない旨の主張をするが,元本が保証され,かつ高利回りである投資商品は容易に想定しがたいのであるから,営業担当者としては会社から資料に基づいてその具体的な根拠について説明を受け,投資商品の運用状況を調査確認すべきであって,会社の説明を鵜呑みにして投資商品を販売しても過失がないというべきではなく,同被告の主張を採用することはできない。」と判示し(https://aoi-law.com/article/s_fund_14/),また,東京地方裁判所平成24年4月23日は,121INTERNATIONAL INVESTMENT LTD.で運用するFX自動売買システムを使ったファンドで,毎月2,3%の配当がほぼ確実に得られなどと喧伝されその後破綻した,いわゆる121ファンド事件において「自らは適正な運用がなされていたと信じていた」などと主張していた者の責任が問題となった事案について,「原告から預かったFX証拠金をFXの自動取引で運用することにより月利2,3%の運用利益を得ることができるという内容のものであり,しかもそれにより勧誘をした被告M・Sについても原告から預かったFX証拠金に対して月3%もの割合の報酬を得るというものである。このような取引が,およそあり得ない荒唐無稽のものであることは明らかであるから,被告M・Sは,FXの自動取引で運用しているとの内容が虚偽であることを知っていたと推認され,仮に虚偽であることを知らなかったとしても虚偽の勧誘をするにつき過失があったことは明らかであ」り,損害賠償額を被告が得た金額に限定すべき理由はないと判示しているところである(https://aoi-law.com/article/s_fx_17/)。上位者が勧誘を,例えばセミナーやYoutubeで行い,インターネット経由(LINE等を含む。)で申し込ませる方法が取られていた場合については東京地方裁判所平成28年2月18日判決ほか(https://aoi-law.com/article/s_fund_29/)が,末端の勧誘者の責任及び勧誘文言等をホームページに掲載したことについての責任については東京高等裁判所平成26年7月11日判決(https://aoi-law.com/article/s_fund_23/)などが参考になる。

 

「sener」について

第1 事案の概要

本件は,複数の勧誘者らが,米国法人であるとされる「sener」に「投資」し,マルチ様に紹介者を増やすことで著しく高率の配当及び報酬(以下,併せて「配当」という。)(配当ボーナスのほか,直紹介ボーナスやグループボーナス等の複数の配当があるが,このうち配当ボーナスのみでも自己の出資額に対し月利3~20%程度という異常な高配当である。)を得られるなどと喧伝するなどして,マルチ商法の手法を用いて下位の勧誘者を拡大し,さらに被害者を拡大させていくという組織的勧誘により投資金名下に資金を集めたが,本年6月中旬ごろより「配当」はもちろん,投資金として出捐させた資金の返金にも応じないという事案(以下,「sener商法」という。)である。

「本社」と呼ばれる「sener」は,米国ワシントン州で平成19年に設立された法人であるとされ,東京を含む世界7都市に支社を設け,2000人を超えるスタッフを雇用し,「昨年度の小売取引部門の純利益」は300億円を超えると喧伝されている。senerの日本事務局を名乗る「sener Japan」のほか,上位勧誘者,主要関与者としては上記D9商法の登場人物らと重複する者もある。

sener商法では,上記D9商法のようなインターネット上の勧誘ではなく,直接の知り合いや,知り合いの知り合いへの紹介で被害が拡大している傾向がみられる。また,D9商法とは異なり自己アフィリエイトはできない(本年2月以前は一人で2アカウント保有することができたが,3月以降は不可となったようである。)ため,他者を勧誘するインセンティブがD9商法と比してより強く働いている。

sener商法では,出資者の資金を「MT4を用いたインデックス先物投資」で増やしていると喧伝されており,しかも取引開始時に出資者の「MT4口座」の出資金額を「事実上倍増」させ,同倍増された価格を下回るとsenerが新たな資金をMT4口座に注入し,元本は100%保証されるとうたっている。「インデックス」については,「最も安定した利益を生み出す金融商品」で,「最大500倍のレバレッジ」であるとのことである。この説明のみでも意味不明かつ荒唐無稽であり,経済常識に反しているが,このような宣伝文句に加え以下の著しい高利率配当を喧伝したマルチ様の勧誘が行われていた。

senerの配当はおおよそ5種類で,①毎日の配当,②直紹介ボーナス,③グループボーナス,④ランキングボーナス及び⑤ボーナスポイントが設定されているようである。なお,配当はビットコインで支払われると約されたケースも散見される。sener商法の参加者は,やはり配当を得るための「パッケージ」を購入する。パッケージには,1000ドルパック,5000ドルパック,10000ドルパック50000ドルパックの4種類があり,購入時には116円/ドルから120円/ドルで円換算して徴収することが多い。上記①の配当は,パッケージの種類と出資から90日まで,90日から180日,180日より後で配当率が変わるが,最低でも月利3%,最高20%という異常な高利である。利率はキャンペーン等で時期により異なるケースも見られる。②直紹介ボーナスは10%,③グループボーナスはグループの配当合計の数%が付与されるが,パッケージより,利率と自己から何段目までの紹介者の配当が対象となるかが異なり,最低でも5段目までのグループメンバーの配当の10%程度は付与されていたようである。また,上位勧誘者には「シニアディレクター」,「ディレクター」などのタイトルが付与され,タイトル達成時に④ランキングボーナスが付与されるようである。また,配当の25%がポイントとして付与され,高級外車などの商品と交換できるともうたわれていた。

前述の宣伝文句だけでも,「投資」の内容自体が意味不明であるが,senerの配当体系は,自己投資額への配当(①)のみで月利3%~20%すなわち年利36%から240%である。ここに,ボーナスポイント(配当の25%)が加わると年利45%から300%となる。さらにグループボーナスが加われば上記①の配当のさらに10%が,最低でも自己のアップライン5段に支払われるのであり,senerが賄うべき配当額は計り知れない。しかも,①の配当は日払いであり,上記①~⑤の配当はすべてsenerの業績にかかわらず固定率で支払われる以上,自己の出資金が投資に回されて増えて戻されるのではなく,他者の出資金が配当に回されていることは明白である。これほどの高利を「インデックス先物投資」などというもので安定して稼ぎだすことは不可能であり(なお,高レバレッジの先物投資が安定と程遠いことは多言を要さない。),D9商法同様に早晩破綻することが明らかなポンジースキームである。

2 違法性

同商法にかかる違法性等については,概ね上記D9商法に関する記載と同様である。

 

弁護団の組成

当職らは,上記両商法に係る相談が集中的に寄せられたことから,平成29年7月,弁護団を組成した。

 

以上