3.JPB,日本プライベートバンキングコンサルタンツ(海外ファンド,金融商品取引業者の取締役の監視監督責任のあり方)

(東京高裁平成22年12月8日判決,
東京地方裁判所平成22年5月28日判決)

 会社ぐるみで組織的に違法な投資勧誘行為をし,多額の損害を消費者に与えたという事案では,放漫経営ないし経営判断の誤りに基づいて第三者に損害を与えたというような事案とはその性質を著しく異にするのであるから,取締役に期待される監視監督義務は一層高度になるとして,名目的取締役の責任を認めた事例
 本件は,大規模な組織的詐欺商法事件であるJPB,ジャパンプライベートバンキングコンサルタンツの名目的取締役がその責任を争ったものであり,その余の関係者らについては支払責任があることが確定している。

 配布した説明資料に「元本確保」と記載されている部分があったり,リスク説明を受けてこれを認識したかのような書面を徴求されていても,配布された説明資料の全体を読めば最低でも元本が保証されていると考えるのが通常であるなどとして違法な投資勧誘があったと認定した上,名目的取締役であるとする主張に対して,「株式会社の取締役は,代表取締役,支配人らの業務執行全般を監視し,必要があれば,取締役会を自ら招集し,あるいは招集することを求め,取締役会を通じて業務執行が適正に行われるようにすべき職責を有するところ,会社経営者との間で,就任に当たって名目上の取締役であり,取締役としての職務を果たさなくてもよい旨の合意をしていたとしても,上記職責を免れる理由となるものではない。そして,この理は,取締役会が開催されず,代表取締役が独断専行しているいわゆるワンマン経営の会社の場合でも異なるものではない。取締役において職責を尽くすことが困難であると思料するのならば,就任を拒絶し,あるいは退任をすべきであって,無報酬であることや業務や経営の内容を把握していなかったことなどを理由にして,対第三者との関係において,任務懈怠に基づく責任を免除されることはないものと解するのが相当である。殊に,本件は,会社ぐるみで組織的に違法な投資勧誘行為をし,多額の損害を消費者に与えたという事案であって,放漫経営ないし経営判断の誤りに基づいて第三者に損害を与えたというような事案とはその性質を著しく異にするのであるから,取締役に期待される監視監督義務は一層高度になるというべきであって,このような義務に違反し,代表取締役等の違法行為を漫然放置した場合は,相応の責を負わされることもやむを得ないというべきである。」と判示して業者役員らの控訴を棄却した。

 名目的取締役の責任についてはいろいろな考え方があるが,本判決が指摘するように,会社ぐるみで組織的に違法な投資勧誘行為をし,多額の損害を消費者に与えたという事案において,監視監督義務をあえて尽くさなかったというのであれば,責任を負うのが当然である。本判決は,会社ぐるみでされる違法な投資勧誘被害事案における名目的取締役の責任の論点に終止符を打つものとなることを期待したい。

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(控訴審判決,業者側の上告棄却,上告受理申立不受理により確定)
⇒金融・商事判例金判SUPPLEMENTVol.27No.2
⇒消費者法ニュース87号178頁

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(一審判決。業者ら控訴)

1.東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディング
(海外ファンド,金融商品まがい取引としての違法性)(東京高等裁判所平成23年12月7日判決)
「金融商品まがい取引」として違法性を導いたリーディングケース
2.東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディング(海外ファンド)
(東京地方裁判所平成20年9月12日決定)
私募ファンド業者に対する意表を突いた被害回復手続
3.JPB,日本プライベートバンキングコンサルタンツ
(海外ファンド,金融商品取引業者の取締役の監視監督責任のあり方)(東京高裁平成22年12月8日判決,東京地方裁判所平成22年5月28日判決)
この種業者の(名目的)取締役の責任について説得的に判示している
4.ストラテジック・パートナーズ・インベストメントほか
(東京高等裁判所平成29年4月26日判決,東京地方裁判所平成28年2月18日判決,東京地方裁判所平成27年2月4日ほか)
インターネットにより契約の申込みをさせていたファンド商法において,説明義務違反の違法性が認められた事例
5.ファンドシステム・インコーポレイテッド
(FX自動運用,従業員の過失による幇助責任)(東京高等裁判所平成23年12月7日判決)
「過失による幇助」による損害賠償を命じたもの
6.東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディング,New Asia Asset Management,Mongol Asset Management(海外ファンド)
(東京地方裁判所平成24年4月24日判決)
海外ファンドについて商品自体の「不適正」さを指摘したもの
7.アイ・エス・テクノロジーほか(121ファンド関係)
(1事件:東京地方裁判所平成25年11月13日判決,東京高等裁判所平成26年7月10日判決,2事件:東京高等裁判所平成26年9月17日判決,東京地方裁判所平成25年11月28日判決)
表に出てこなかった上位関与者及び収納代行業者の責任を認めたもの
8.レクセム証券(旧商号:121証券)
(東京高等裁判所平成27年1月14日判決)
121ファンド商法について一定の関係を有していた証券会社の責任を認めたもの 9.Quess Paraya,エターナルファンド
(東京地方裁判所平成27年3月26日判決)
「セレブな雰囲気」を用いて勧誘するファンド商法について,投資を行う者に適正な損益を帰属させることを目標として組成され管理されていたものということはできず,金融商品として不適正なものであったとして首謀者以下関係者に損害賠償を命じたもの 10.バーチャルオフィス契約・電話利用契約に関する本人確認書類提供者の責任
(東京高等裁判所平成28年1月27日)
詐欺商法において用いられたバーチャルオフィス・電話利用権の契約に関する本人確認書類提供者の責任を認めた事例 11.携帯電話貸与者(一般個人)
(東京地方裁判所平成26年12月25日判決)
携帯電話レンタル業者ではない一般人が貸与した携帯電話が詐欺商法に用いられた事案において貸与者に過失による幇助の責任を認めた事例 12.L・B投資事業有限責任組合関係
(東京地方裁判所平成26年2月26日判決)
投資事業有限責任組合の形態を採用して未公開株商法を行っていた業者らの責任 13.ユニオン・キャピタル,ファンネル投資顧問
(東京地方裁判所平成28年7月8日)
「本件ファンドは,そもそも,顧客の資金を運用し,顧客に適正に損益を帰属させることを目的として組成されたものとはいえない」として損害賠償請求を認容した事例 14.有限会社リンク(121ファンド関係)
(東京地方裁判所平成24年4月23日判決)
中間代理店の過失を取引の荒唐無稽さから導いたもの 15.パブリックライジングジャパン(ファンド商法)
(東京地方裁判所平成24年7月9日判決)
ファンドまがい商法被害事案において参考になる 16.パブリックライジングジャパン(ファンド商法)
(東京地方裁判所平成24年9月14日判決)
ファンドまがい商法被害事案において参考になる 17.合同会社フィールテックインベストメント4号,一般社団法人米国IT企業投資協議会(投資事業組合商法)
(東京地方裁判所平成25年2月1日判決)
投資の実態を明らかにしないことがどのような意味を持つかを正しく指摘している 18.よいルームネットワーク(探偵業者)
(東京地方裁判所平成24年11月30日判決,東京高等裁判所平成25年4月17日判決)
探偵業者による被害事案 19.恵新
(東京地方裁判所平成26年1月28日判決)
過失による幇助という法律構成を用いている 20.スペース・ワン関係
(東京高等裁判所平成26年7月11日判決,東京地方裁判所平成25年3月22日判決)
ファンド商法勧誘者,加功者の責任(「勧誘」の評価) 21.あいであ・らいふ
(東京地方裁判所平成22年9月27日判決)
リスク説明がされていたか否かについて,書面の表示・記載の内容を具体的・実質的に検討して判断したもの 22.アイ・ベスト
(東京地方裁判所平成23年5月27日判決)
「不動産ファンド」まがい商品の勧誘者について会社の説明を鵜呑みにして勧誘したとしても責任を免れないとしたもの 23.サンラ・ワールド(海外ファンド)
(東京高等裁判所平成23年5月26日判決)
広く被害を生んだサンラ・ワールドの商法に関するもの。これ以外は全て全額を支払うとの訴訟上の和解が成立している 24.東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディング(海外ファンド)
(東京地方裁判所平成23年5月31日判決)
私募ファンド商法被害事案 25.KCFホールディングズ,中央電算(フェリーマルチ商法)
(東京地方裁判所平成24年8月28日判決)
フェリーマルチ被害事案 26.住まいと保険と資産管理
(東京地方裁判所平成24年9月26日判決)
FPグループの海外投資勧誘 27.エイ,Truth Company(121ファンド関係)
(東京地方裁判所平成25年1月21日判決)
121ファンド商法の主要な代理店であった業者らの責任 28.エスペイ(121ファンド関係)
(東京高等裁判所平成24年12月20日判決,東京地方裁判所平成24年6月22日判決)
過失相殺をした1審の判決を取り消した控訴審判決 29.ハヤシファンドマネジメント,トップゲイン
(東京地方裁判所平成25年1月24日判決)
ファンドまがい商法の判断枠組みを踏襲し,真実はそうでないのに,「ファンド・オブ・ファンズ」を喧伝する行為についての違法性評価を固めるもの