6.DYK consulting株式会社

(東京地方裁判所平成29年12月25日判決)

 本件は,適格機関投資家等特例業者としての届出をしていた業者(以下,「A社」という。)が,株式,不動産,商品(先物取引),為替(外国為替証拠金取引)に分散投資することにより,出資金に対する月2パーセント乃至2.5パーセントの配当金を支払う一方で元本欠損のリスクを低減するなどというファンド(以下,「本件ファンド」という。)を企画・組成し,A社の代表取締役B及び同人と継続的な交流をもっていたDが,Dが設立したC社及びその従業員らとともに本件ファンドへの出資勧誘を目的としたセミナーを頻繁に開催するなどしてファンドへの出資金名目での集金活動を繰り広げ,当弁護団依頼者らをはじめとした一般投資家らに多額の金員を出捐させ,損害を被らせたという商法(以下,「本件商法」という。)の被害事案である。本件商法の被害総額は10億円を超えると言われており,うち当弁護団に依頼した被害者らの被害総額はおよそ3億4000万円であり,右損害額及び弁護士費用相当額を請求金額とした。判決では,右請求金額から(一部原告を除き)ファンドへの「配当金」名目での金員を控除した金額及び弁護士費用について,当弁護団の請求を認容した。
 判決では,まず本件ファンドについて,上記のとおり4つの投資対象への分散投資によりリスクを低減するなどと喧伝しておきながら,実際には上記分散投資を行っていなかったこと,また,月2.5パーセントもの配当金の支払いを恒常的に可能とする資金の流れが見当たらないこと等といった事実を認定した上,このような本件ファンドを組成した首謀者B及び販売担当のC社の代表取締役であったDについて,「破綻することが明らかな本件ファンドを,分散投資を行うなどという虚偽の事実を述べ,高利率の配当金の支払いが可能であるかのように装って募集した」などとして,故意の不法行為責任を認めた。投資対象あるいは投資先の数及びその内容は,ファンドにおける資金運用に関する重要な事柄であり,このような事柄につき虚偽を告げる行為は投資家の投資判断にとって重要な事実を欺くものにほかならないから,上記判示は極めて正当である。また,判決は,本件ファンドの企画・組成を担当する会社及び当該ファンドの販売を担当する会社という形式的な区別に捉われることなく,BとDの継続的な人間関係の存在,販売開始時のファンドの内容の確認作業の杜撰さ,不自然に高利率の営業手数料を受領していたこと等の事実関係を正解した上でDの故意の不法行為責任を認めており,極めて正当な判示である。
 なお,判決は,A社及びD社については法人固有の不法行為責任を認め,B及びDに対してはそれぞれ会社法350条に基づく責任も認めた。
 また,判決は,本件ファンドの販売会社としての役割を担ったC社の従業員とされていた者ら及びC社から本件ファンドの出資金名目で金員を出捐させる営業行為に関する業務委託を受けていたとされていた者らについても,「本件ファンドの運用先や運用状況に関する説明内容に虚偽がないかを十分に調査確認する義務を負っていた・・・にも関わらず・・パンフレットや運用報告書の記載内容の正確性について,何ら根拠にあたることなく,調査確認を行わずにその出資勧誘に協力していたものである。」などと認定し,過失による不法行為責任を認めた。当該判示は,過去に敢行された同様の利殖詐欺商法の被害事案に関する判示を踏襲するものであり,事案の内容を正解した妥当なものである。
 なお,本件においては,Dは,「年5パーセントの配当金の支払い及び元本の償還が確実である」であるなどと申し向け,原告らの一部をして,本件ファンドのみならず,C社の社債の購入資金名目で金員を出捐させ,社債元本相当額の損害を被らせていた。これについても,判決は,「C社は,本件ファンドの販売代理店となった以降,A社から受領するコミッション料に依存した経営が行われていたのであるから,Dは,本件ファンド等が破綻すればC社の事業自体も継続不能となることを十分認識し得たにもかかわらず,本件ファンドへの出資者が配当金を受領し,Dの言を信じている状態を利用して,年5パーセントの配当金の支払い及び元本の償還が確実であると申し向けて本件社債を購入させたものであり,本件社債の配当・償還がされなくなったことにつき,少なくとも過失があるということができる。」として,Dの過失による不法行為責任を認めた。

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(確定)

1.東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディング
(海外ファンド,金融商品まがい取引としての違法性)(東京高等裁判所平成23年12月7日判決)
「金融商品まがい取引」として違法性を導いたリーディングケース
2.東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディング(海外ファンド)
(東京地方裁判所平成20年9月12日決定)
私募ファンド業者に対する意表を突いた被害回復手続
3.JPB,日本プライベートバンキングコンサルタンツ
(海外ファンド,金融商品取引業者の取締役の監視監督責任のあり方)(東京高裁平成22年12月8日判決,東京地方裁判所平成22年5月28日判決)
この種業者の(名目的)取締役の責任について説得的に判示している
4.ストラテジック・パートナーズ・インベストメントほか
(東京高等裁判所平成29年4月26日判決,東京地方裁判所平成28年2月18日判決,東京地方裁判所平成27年2月4日ほか)
インターネットにより契約の申込みをさせていたファンド商法において,説明義務違反の違法性が認められた事例
5.ファンドシステム・インコーポレイテッド
(FX自動運用,従業員の過失による幇助責任)(東京高等裁判所平成23年12月7日判決)
「過失による幇助」による損害賠償を命じたもの
6.DYK consulting株式会社
(東京地方裁判所平成29年12月25日判決)
セミナーを開催して詐欺的ファンドを広める商法について関係者の損害賠償責任を肯定した事例
7.東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディング,New Asia Asset Management,Mongol Asset Management(海外ファンド)
(東京地方裁判所平成24年4月24日判決)
海外ファンドについて商品自体の「不適正」さを指摘したもの
8.アイ・エス・テクノロジーほか(121ファンド関係)
(1事件:東京地方裁判所平成25年11月13日判決,東京高等裁判所平成26年7月10日判決,2事件:東京高等裁判所平成26年9月17日判決,東京地方裁判所平成25年11月28日判決)
表に出てこなかった上位関与者及び収納代行業者の責任を認めたもの
9.レクセム証券(旧商号:121証券)
(東京高等裁判所平成27年1月14日判決)
121ファンド商法について一定の関係を有していた証券会社の責任を認めたもの 10.Quess Paraya,エターナルファンド
(東京地方裁判所平成27年3月26日判決)
「セレブな雰囲気」を用いて勧誘するファンド商法について,投資を行う者に適正な損益を帰属させることを目標として組成され管理されていたものということはできず,金融商品として不適正なものであったとして首謀者以下関係者に損害賠償を命じたもの 11.バーチャルオフィス契約・電話利用契約に関する本人確認書類提供者の責任
(東京高等裁判所平成28年1月27日)
詐欺商法において用いられたバーチャルオフィス・電話利用権の契約に関する本人確認書類提供者の責任を認めた事例 12.勝部ファンド
(東京地判平成29年10月25日,東京地判平成29年11月30日)
連鎖(マルチ)取引類似の方法で勧誘された投資まがい商法の,直接の勧誘者ではない上位者の不法行為責任を正面から肯定したもの 13.携帯電話貸与者(一般個人)
(東京地方裁判所平成26年12月25日判決)
携帯電話レンタル業者ではない一般人が貸与した携帯電話が詐欺商法に用いられた事案において貸与者に過失による幇助の責任を認めた事例 14.L・B投資事業有限責任組合関係
(東京地方裁判所平成26年2月26日判決)
投資事業有限責任組合の形態を採用して未公開株商法を行っていた業者らの責任 15.ユニオン・キャピタル,ファンネル投資顧問
(東京地方裁判所平成28年7月8日)
「本件ファンドは,そもそも,顧客の資金を運用し,顧客に適正に損益を帰属させることを目的として組成されたものとはいえない」として損害賠償請求を認容した事例 16.有限会社リンク(121ファンド関係)
(東京地方裁判所平成24年4月23日判決)
中間代理店の過失を取引の荒唐無稽さから導いたもの 17.パブリックライジングジャパン(ファンド商法)
(東京地方裁判所平成24年7月9日判決)
ファンドまがい商法被害事案において参考になる 18.パブリックライジングジャパン(ファンド商法)
(東京地方裁判所平成24年9月14日判決)
ファンドまがい商法被害事案において参考になる 19.合同会社フィールテックインベストメント4号,一般社団法人米国IT企業投資協議会(投資事業組合商法)
(東京地方裁判所平成25年2月1日判決)
投資の実態を明らかにしないことがどのような意味を持つかを正しく指摘している 20.よいルームネットワーク(探偵業者)
(東京地方裁判所平成24年11月30日判決,東京高等裁判所平成25年4月17日判決)
探偵業者による被害事案 21.恵新
(東京地方裁判所平成26年1月28日判決)
過失による幇助という法律構成を用いている 22.スペース・ワン関係
(東京高等裁判所平成26年7月11日判決,東京地方裁判所平成25年3月22日判決)
ファンド商法勧誘者,加功者の責任(「勧誘」の評価) 23.あいであ・らいふ
(東京地方裁判所平成22年9月27日判決)
リスク説明がされていたか否かについて,書面の表示・記載の内容を具体的・実質的に検討して判断したもの 24.アイ・ベスト
(東京地方裁判所平成23年5月27日判決)
「不動産ファンド」まがい商品の勧誘者について会社の説明を鵜呑みにして勧誘したとしても責任を免れないとしたもの 25.サンラ・ワールド(海外ファンド)
(東京高等裁判所平成23年5月26日判決)
広く被害を生んだサンラ・ワールドの商法に関するもの。これ以外は全て全額を支払うとの訴訟上の和解が成立している 26.東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディング(海外ファンド)
(東京地方裁判所平成23年5月31日判決)
私募ファンド商法被害事案 27.KCFホールディングズ,中央電算(フェリーマルチ商法)
(東京地方裁判所平成24年8月28日判決)
フェリーマルチ被害事案 28.住まいと保険と資産管理
(東京地方裁判所平成24年9月26日判決)
FPグループの海外投資勧誘 29.エイ,Truth Company(121ファンド関係)
(東京地方裁判所平成25年1月21日判決)
121ファンド商法の主要な代理店であった業者らの責任 30.エスペイ(121ファンド関係)
(東京高等裁判所平成24年12月20日判決,東京地方裁判所平成24年6月22日判決)
過失相殺をした1審の判決を取り消した控訴審判決 31.ハヤシファンドマネジメント,トップゲイン
(東京地方裁判所平成25年1月24日判決)
ファンドまがい商法の判断枠組みを踏襲し,真実はそうでないのに,「ファンド・オブ・ファンズ」を喧伝する行為についての違法性評価を固めるもの