9.支店不特定執行(2)

(東京高等裁判所平成26年6月3日決定)

 預金執行における支店特定(及び将来債権の執行)に関する複数の最決をはじめとするいわゆる否定説の論拠は,第三債務者の負担が過大になるのではないかという懸念があるというに尽き,それゆえ,「差押の効果が送達の時点で生ずることにそぐわない事態とならない」ことを求めるものである(つまり,差押債権を他の債権から識別するための「負担」ではなく,差押命令送達時からの「時間」的接着性にのみ着目している。)。この観点からすれば,全支店列挙方式ではなく,預金額最大店舗方式を基礎とする方が,第三債務者の負担が軽減されるものと思われるから,これを基礎とし,さらに,差押債権(預金額最大店舗)の検索・特定を終了させなければならない時間を,差押命令送達時から相当期間与えうるような手当をすることとして,「時間」的接着性を解消する手当をしたものとすることとした。
 結果,差押債権(の柱書き)を,「債務者が第三債務者に対して本命令送達の日の7日後(本命令の送達がされた次の週の同一曜日。同日が休業日であるときにはその翌日。)の午前10時に有する下記預金債権のうち,下記に記載する順序に従い,頭書金額に満つるまで」とし,順序付けの1項を,「複数の店舗に預金債権があるときは,本差押命令送達の時点で預金債権額合計の最も大きな店舗の預金・・・(以下,通例に倣う)」(なお,7日後としたのは,最も混乱が少ないと考えたからである)とすることとした。これにより,上記「時間的接着性」から生じうる金融機関の負担は解消されることになると思われるからである。
 本決定例は,必ずしも問題の所在(及び最決の射程)を正解していないのではないかと思われるが,公刊物では執行抗告状が省略されているので,執行抗告状が添付された決定例を掲示することとして,議論の素材を提供することとしたい。

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⇒金融法務事情2014号113頁
⇒判例タイムズ1410号88頁

1.弁護士会照会に対する報告義務
(東京高等裁判所平成22年9月29日判決ほか)
2.ソフトバンクモバイルの調査嘱託に対する回答拒否事件
(東京地方裁判所平成24年5月22日判決,東京高等裁判所平成24年10月24日判決)
3.保険証券番号不特定執行
(東京高等裁判所平成22年9月8日決定)
4.仮装離婚と財産分与の虚偽表示による無効・債権者代位による不動産移転登記抹消登記手続請求
(東京地方裁判所平成25年9月2日判決,東京高等裁判所平成26年3月18日判決)
詐欺的業者の首謀者が妻との離婚を仮装して財産分与をした事案について,離婚及び財産分与は通謀虚偽表示により無効であるとして債権者代位により居宅不動産の所有権移転登記抹消登記手続請求を認容した事例 5.訴えの提起における当事者の特定・住所地の記載されていない債務名義の強制執行の方法等
(東京高等裁判所平成21年12月25日判決ほか)
6.金融商品取引業者と取引履歴の開示
(東京地方裁判所平成20年9月12日決定ほか)
7.詐欺的取引と裁判管轄(移送の可否)
(東京高等裁判所平成23年6月1日決定)
8.支店不特定執行
(東京高等裁判所平成23年3月30日決定ほか)
9.支店不特定執行(2)
(東京高等裁判所平成26年6月3日決定)
10.預金債権の時間的包括的執行
(奈良地方裁判所平成21年3月5日決定)
11.詐害行為取消訴訟
(山形地方裁判所平成19年3月9日判決)