10.KOYO証券

(東京地方裁判所平成27年5月28日,東京高等裁判所平成27年10月21日)

 本件は,スマートCX取引(損失限定取引)を勧誘されるまで金地金を保有していたほかこれといった投資経験がなく,スマートCX取引も取引開始日とその翌日に合計4枚の金の買い建てをしたのみでそれ以降取引をしていなかった50歳の公務員に対し,業者外務員が目的を告げずに面談を求めて先物取引を勧誘し,わずか30分程度の説明をしただけで先物取引を開始させ,外務員に依存するほかなかった状況に乗じて取引開始から62日のうちに222回,新規建玉の総取引高92億円あまりという多数回,多量の取引を行わせ,8か月間の取引期間中投資可能資金額を拡大させて564回もの多数の取引をさせて約4000万円もの損害を生じさせたという事案である。
 判決は,全体として,不招請勧誘,説明義務違反,新規委託者保護義務違反,適合性原則違反,一任売買,無意味な特定売買などの違法があるとし,違法性の程度は高いとして,過失相殺を否定して損害賠償請求を全部認容した。なお,業者からの,口座照会システムに相当回数ログインして自らの相場観に従って取引をしていたとの主張を,同システムを利用して情報収集していたとしても外務員に依存して取引を行っていたことを覆すには足りないとしている。
 本判決は,簡潔なものではあるが,一体的不法行為構成による以上このような判断は適切なものであると思われる。不招請勧誘の禁止が緩和される直前に不招請勧誘の違法を認めたものとしても意義がある。
 控訴審判決は,不招請勧誘という違法な勧誘を経て,先物取引の仕組みやリスクについて十分に理解しないまま取引が開始され,取引直後から外務員による無意味な反復売買が繰り返され(頻繁に両建ての同時仕切りがされているが,被控訴人が自らの意思でかかる取引をしたとは考え難い),損失が拡大した後も取引を拡大する方向で進めたなどと指摘し,「本件において被控訴人にも落ち度があるとして過失相殺をするのでは,かえって,商品先物取引法に基づく許可を受けた商品先物取引業者である控訴人とその顧客である被控訴人との間の公平を欠くと言うべきである」として過失相殺を否定し,請求を全部認容した1審判決に対する控訴を棄却した。

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(1審判決,業者側控訴)
⇒消費者法ニュース105号290頁
⇒先物取引裁判例集73巻39頁

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(控訴審判決,控訴棄却)
⇒金融・商事判例1481号金判SUPPLEMENTVol.85
⇒消費者法ニュース106号265頁
⇒先物取引裁判例集74巻186頁

1.カネツ商事
(東京地方裁判所平成21年10月6日判決,東京高等裁判所平成22年3月17日判決)
先物取引被害について過失相殺を否定して全部賠償を命じた控訴審判決 2.オービット・キャピタル・マネジメント(東京地方裁判所平成17年2月24日判決)訴訟係属中に被害者から訴え取下書を徴求して提出した業者の行為を正義に反するとして訴えの取下の効果を否定したもの
3.オリオン交易・カネツ商事(東京地方裁判所平成19年1月22日判決) 先物取引被害について客観的取引履歴から説得的に違法性を見いだすもの 4.KOYO証券(東京地方裁判所平成28年5月23日判決) 株価指数証拠金取引(くりっく株365)について説明義務違反,過当売買の勧誘等の違法性を認め,過失相殺を否定して損害賠償請求を全部認容した事例 5.第一商品(東京高等裁判所平成26年7月17日判決) 控訴審から委任を受けた事件について控訴審で逆転一部勝訴したもの 6.カネツ商事,カネツFX証券(東京地方裁判所平成25年8月29日判決) 精神疾患を有していた被害者について損害賠償請求を全部認容したもの 7.コメックス(東京地方裁判所平成22年5月25日判決) 認知障害により取引状況などを再現できない事案において参考になる 8.豊商事
(東京地方裁判所平成29年8月9日判決)
株価指数証拠金取引(くりっく株365。顧客自身がインターネットで注文する形式)と商品先物取引の両方について説明義務違反,断定的判断の提供の違法性を認めた事例 9.第一商品
(東京地方裁判所平成26年3月24日判決,東京高等裁判所平成26年10月8日判決)
顧客が取引口座申込書に,自己の資産や収入と大きく相違する資産及び収入の金額を自らの一存で記載する理由は考えがたいと判示するもの 10.KOYO証券
(東京地方裁判所平成27年5月28日,東京高等裁判所平成27年10月21日)
スマートCX取引を契機とした不招請勧誘により開始された商品先物取引について過失相殺を否定して損害の全部の賠償を命じたもの 11.第一商品
(東京高等裁判所平成25年3月28日判決,東京地方裁判所平成24年11月2日判決)
被害者の病歴を確認するべきであるとする指摘,平行して行わされていたFX取引と合わせて新規委託者保護義務違反を認めているところが有意である 12.第一商品
(東京地方裁判所平成22年10月29日判決,東京高等裁判所平成23年4月27日判決)
金現物取引に端を発する被害。過失相殺を2割にとどめている 13.岡藤商事
(東京地方裁判所平成24年3月1日判決,東京高等裁判所平成24年6月27日判決)
複数の先物取引の経験を有する壮年者について,借入を始めた後の取引について適合性原則違反を認め,取引の全体について客観的履歴から違法性を認めたもの 14.オプションズ(東京地方裁判所平成23年7月15日判決) 海外先物オプション取引被害事案。先物取引の経験を「被害の経験」であると評価して過失相殺に結びつけていない 15.Systematic Trading Solution(Japan)(東京地方裁判所平成20年5月30日判決) 海外先物取引被害事案 16.エー・シー・イー・インターナショナル(東京地方裁判所平成17年10月25日判決) 海外先物オプション取引被害事案。詳細な事実認定を基礎にして業者の体質自体に厳しい非難を向けている 17.小林洋行(東京地方裁判所平成17年12月20日判決) 被害に引き込まれている被害者の状況を正解し,過失相殺を2割にとどめている 18.オリオン交易(東京地方裁判所平成18年3月29日判決) 先物業者の訴訟追行態度に悪質さがにじみ出た事案。過失相殺を否定している 19.C&Pインデックス(東京地方裁判所平成17年3月4日判決) 海外先物オプション取引被害事案。業者の体質に厳しい非難を向けている 20.大起産業
(東京高等裁判所平成18年11月15日判決,東京地方裁判所平成18年6月5日判決)
自己以外の資金を用いて鞘取取引を開始させられた事案 21.バリオン(東京地方裁判所平成23年8月31日判決) 海外先物取引被害事案。管理担当者や初回入金までしか関与していない者に責任を認めている。先物取引の経験を「被害の経験」と位置付けて適合性原則違反を肯定する事情として評価している 22.カネツ商事
(東京地方裁判所平成19年7月23日判決,東京高等裁判所平成20年1月24日判決)
1審は過失相殺を否定したが,控訴審によって過失相殺がされた事例 23.PCSJ(東京地方裁判所平成22年10月26日判決) 海外先物取引被害事案。向かい玉に関する説明義務違反を認めている 24.日本インベストメントプラザ(東京地方裁判所平成21年6月25日判決) 海外先物取引被害事案についてのみ行為の違法性を認めたもの