5.あおぞら,海翔物産

(東京高等裁判所平成28年4月13日判決,東京地方裁判所平成27年9月18日判決)

 現在,我が国においてCO2排出権取引商法を行っている業者は,そのほとんどがAX Markets Limitedを通じてICE(インターコンチネンタル取引所)における「ECXーEUA」(欧州気候取引所 EU域内排出権)を行う,と称するものであるところ,本判決は,そのような取り次ぎができないのに取り次ぎをするとして勧誘等をしたこと自体が詐欺に当たると判断したものであり,広く被害救済に援用されうるものであると思われる。
 判決の概要は,次のとおりである。
 「ICEは,米国に本拠地を置くインターネットベースのエネルギー商品取引所であり,平成22年に英国のECXを買収して傘下に収めている。AX社は,本件各取引当時,英国のFCA(フィナンシャル・コンダクト・オーソリティ)を監督当局として,金融サービス業務を行うことが認められており,ICEの上場商品を取次ぎ,顧客資産を管理する資格を保持していたが,ICEの会員カテゴリーの中に入っていないため,先物取引等は,ICEの清算会員を通じてでなければ行えない。」
 「1審被告らは,あおぞらがAX社に対し自己玉も加えて売り買い同枚数とした注文をし,AX社は,同注文をICEに取り次いでいると主張しているが,本件あおぞら取引が指数先物取引であるなら,あおぞらがAX社に対して現物又は先物のECXーEUAの売り買いの注文をするというのは無意味なことであるし,その注文がAX社を通じてECXにおいて取引されたことを認める証拠は存在しない。1審被告らは,AX社は,ICEにおける原油取引の取次ぎをした実績があり,ICEで取引をすることができるものであるとも主張しているが,AX社にICEの清算会員を通じてでなければAX社が先物取引等を行いえないとの上記認定が左右されるものではない。
 そうすると,本件あおぞら取引の実態は,ECXーEUAの価格を指標とした相対取引としての差金決済取引であったのに,あおぞら従業員らは,1審原告に対し,あおぞら取引ガイドに基づく「CO2排出権取引」の説明,勧誘等をし,1審原告をして,ECX?EUAそれ自体の売買取引が行われるものと誤信させた上,本件あおぞら取引を行わせたものであり,本件あおぞら取引はあおぞら従業員らの詐欺によるものであると認められる。」
 「1審被告海翔らは,1審原告がCO2排出権取引の主体となり,1審被告海翔が1審原告の委託を受けてAX社に取り次ぎ,最終的に取引市場であるECXに取り次がれるというものであると主張している。
 しかし,本件海翔取引において,1審原告の注文が英国のECXに取り次がれていたのであれば,ECXないしそれに代わる機関に所定のユーロ建てによる取引保証金が預託されていたはずであるのに,1審原告が1審被告海翔に交付したのは本件海翔取引に係る一定額の円建てによる委託保証金のみであり,これがECXないしそれに代わる機関に預託されたことを認めるに足りる証拠が存在せず,かえって,海翔取引ガイド及び海翔契約書上では,為替レートが用いられるのは反対売買による決済時のみであって,円建ての委託保証金がECXにおける取引に用いられることは予定されていないものとうかがわれること,ECXに注文を取り次いだというAX社に対して注文主が1審原告である旨が告知されたことを示す証拠が存在しないこと,AX社は,ICEの清算会員を通じるのでなければICEにおける先物取引等を行うことができず,また,AX社がICEの清算会員に本件海翔取引を委託したことを認めるに足りる証拠が存在しないことから,1審原告の注文がECXに取り次がれていたとは認められない。
 そうすると,本件海翔取引の実態は,ECXーEUAの価格を指標とした相対取引としての差金決済取引であったのに,1審被告○は,1審原告に対し,海翔取引ガイドに基づく「CO2排出権取引」の説明,勧誘等をし,1審原告をして,ECXーEUAそれ自体の売買取引が行われるものと誤信させた上,本件海翔取引を行わせたものであり,本件海翔取引は1審被告○の詐欺によるものであると認められる。」
 なお,海翔物産の取締役について,「(取締役であるというのみでは故意重過失があったということはできない)し,海翔はもっぱら「CO2排出権取引」をしていることまでを認めるに足りる証拠は存在せず,取締役らの担当職務が「CO2排出権取引」であったとは直ちに認められない。」としているが,1審で海翔に対する請求が棄却となっているところを逆転させたところからの(妙な)バランス感覚?とでもいうもののなせるところではないかとも感じられ,この点は1,2審を通じて争点にもなっていなかったのであるし,海翔物産がほとんどもっぱらCO2商法を行っているということは弁論の全趣旨からも当たり前に見て取れるものであった上,こういう判断をするのであればこの点を審理して判断するべきではなかったかとの疑問は払拭し得ない。
 ただ,冒頭に記したように,現在の我が国におけるCO2排出権商法の被害回復全体に与える影響は極めて大きいものであり,参照価値の高いものであると考えられる。

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(控訴審判決,業者の控訴棄却,被害者の控訴逆転認容,確定)
⇒消費者法ニュース108号357頁
⇒先物取引裁判例集75巻286頁

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(1審判決,一部認容,一部棄却,双方敗訴部分について控訴)
⇒消費者法ニュース108号352頁
⇒先物取引裁判例集75巻261頁

1.K・モンスター
(東京高等裁判所平成20年10月30日判決)
この種取引の取引自体の違法性に関して最も援用されることが多い判決
2.ロイヤルトラストインターナショナル
(東京地方裁判所平成25年12月12日判決)
金地金取引分割払取引業者らに損害賠償を命じるもの
3.オルネフ
(東京地方裁判所平成22年11月4日判決)
凄惨な被害に対する,裁判所の優しさのうかがわれる判決
4.ウエスト・リッチジャパン
(東京地方裁判所平成28年12月26日)
CO2排出権取引商法に藉口した詐欺商法について,個別の勧誘担当者のみではなく,業者の営業担当従業員全員に対して,違法行為を助長又は幇助したものとして損害賠償を命じた事例
5.あおぞら,海翔物産
(東京高等裁判所平成28年4月13日判決,東京地方裁判所平成27年9月18日判決)
CO2排出権取引をAX Markets Limited社を通じて取り次ぐと称していたこと自体が詐欺に当たるとして損害賠償請求を認容した事例
6.プロフトラスト
(東京高等裁判所平成24年4月26日判決,東京地方裁判所平成22年6月10日判決)
この種商法を行う業者の構成員が個別の関与にかかわらず責任を負うとしたもの
7.アドニス
(東京地方裁判所平成26年7月18日判決)
金地金売買契約について,詳細な検討を加えて公序良俗に違反すると判示したもの
8.ウエスト・リッチジャパン
(東京地方裁判所平成26年12月4日判決)
CO2排出権取引商法を公序良俗に反すると断じたもの。損益相殺の否定,被害者との個別具体的な接触のない構成員の責任,不法原因給付の主張の排斥,和解契約の否定など見るべきところも多い
9.フロンティア・エッジ
(東京地方裁判所平成25年3月19日判決)
この種商法の仕組み自体の違法性について説得的な判示をしている
10.日本デリックス
(東京高等裁判所平成25年4月11日判決)
CO2排出権取引商法に関するもの 11.ネクストライフ
(東京地方裁判所平成26年10月21日判決)
CO2排出権取引商法に関するもの 12.ARAIアセットほか
(東京地方裁判所平成25年11月20日判決)
他社移籍後の取引の拡大についての責任,首謀的構成員の責任,破産・免責を受けた代表者の責任 13.オルネフ
(東京地方裁判所平成22年8月25日判決,東京高等裁判所平成23年1月20日判決)
被害者が亡くなっている場合の適合性原則違反の主張立証に参考になる 14.プロフィット・コム
(東京地方裁判所平成23年11月22日判決)
商品CFD取引の違法性を端的に指摘するもの 15.テクノ(東京地方裁判所平成24年1月18日判決) 商品CFD取引の違法性を端的に指摘するもの。違法性の評価を誤っていたとしても責任は左右されないと判示している 16.K&Kパートナーズ
(東京地方裁判所平成21年10月1日判決)
CFD取引の違法性を端的に指摘するもの 17.ファーストエージェント
(東京地方裁判所平成21年5月25日判決)
スポット貴金属取引の違法性を端的に指摘するもの。取引益金の請求ができないことが明示されている部分がこの種商法の違法性をより強固に基礎付けうることとなった 18.ファーストエージェント
(東京高等裁判所平成20年3月27日判決,東京地方裁判所平成19年10月25日判決)
ロコロンドン貴金属商法についての初期の判決。業者からは判決にかかわらず損害の全部の賠償を受けた 19.あさひアセットマネジメント
(東京地方裁判所平成21年3月25日判決)
貴金属スポット保証金取引の違法性を端的に指摘するもの。違法性阻却事由がないこと,取引が正当なものだと信じていたと主張した勧誘担当者の責任,過失相殺の明示的な否定に見るべきところがある 20.あさひアセットマネジメント
(東京地方裁判所平成21年4月10日判決)
16と同旨 21.K・モンスター
(東京地方裁判所平成21年3月16日判決,東京地方裁判所平成21年6月29日判決,東京高等裁判所平成21年7月15日判決)
ロコ・ロンドン貴金属取引の違法性を端的に指摘するもの。業者の従業員がキャッシュカードを預かって勝手に金を引き出していたことが認定されている 22.ファーストライン(旧商号ジョイコーポレイション)
(東京地方裁判所平成26年11月13日判決)
口座開設後に辞任した役員らの責任を認めたもの 23.プロフトラスト
(東京地方裁判所平成21年10月5日判決)
ロコ・ロンドン貴金属取引の違法性を端的に指摘するもの。スワップポイントを損害から控除していない 24.プロフィットコム
(東京地方裁判所平成21年12月16日判決)
ロコ・ロンドン貴金属取引の違法性を端的に指摘するもの。先物取引の経験がある被害者について明示的に過失相殺を否定している 25.川研ファクター
(東京地方裁判所平成18年12月27日判決)
ニッパチ商法に関するもの。この種商法の違法性を端的に指摘する裁判例は珍しい