個人再生と「住宅」

最近,弊所では個人再生の依頼が続きました。

個人再生とは,民事再生の一類型であり,大きな債務を負うことになった債務者の経済的更正のための手段です。

個人再生は,債務を大幅に減額した上で,3年(~5)年の分割払いに変更することが可能であり,また,大きな特徴として,住宅を手放さずに済む可能性があります(もちろん要件を満たせば,ですが)。そこが破産との大きな違いです(ただし,破産でもリースバック等の手段があります。)。

このあたりの,個人再生とはどういうものか・破産とは何が違うのか等の詳細については,他にインターネット上にいくらでも解説ページがあるでしょうから,割愛します。

当記事では,私が担当した個人再生で少し珍しい議論があったのでその案件をご紹介したいと思います。

今回私が担当した案件は,普通のサラリーマンだったのですが,ちょっとした不注意で多額の債務を負わされることになった方の経済的更正でした。破産も視野に入れるべき事案でしたが,当事者の意見を汲み給与所得者等再生を選択しました。

給与所得者等再生とは,個人再生のひとつですが,一般的には個人再生といったら給与所得者等再生ではなく,もう一つの個人再生である小規模個人再生が使われます。

というのも,支払うことになる債務がほとんどの場合は給与所得者等再生の方が大きくなってしまうからです。しかし,その分,給与所得者等再生は再生債権者の反対があっても再生計画が認可されるというメリットがあります。今回の案件では,最も金額の大きい債権者が強硬な態度をとっており,再生計画に反対をしてくることが目に見えていたこと等の理由で,給与所得者等再生を試みることになりました。この辺りも詳しい解説が他にあるでしょうから,この辺にしておきます。

さて,小規模個人再生にせよ,給与所得者等再生にせよ,住宅を守るため,住宅資金特別条項という制度を利用することができます。

住宅資金特別条項は,民事再生法196条以下に定められています。これは,「住宅」に該当する建物の建設や購入等に必要な資金の貸し付けに係る分割払いの定めのある再生債権であって,主たる債務者に対する求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているもの(かみ砕くと,住宅・敷地に抵当権が設定された住宅ローン)について,特別扱いをするためのものです。

これを使うと他の債務は減額しつつ,住宅ローンだけ減額せずに従来通り,またはリスケジュールをして支払っていくことなどが可能になります。

本件では,この「住宅」への該当性が問題になりました。

住宅とは,民事再生法上,「個人である再生債務者が所有し,自己の居住の用に供する建物であって,その床面積の二分の一以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されるものをいう。ただし,当該建物が二以上ある場合には,これらの建物のうち,再生債務者が主として居住の用に供する一の建物に限る。」と定義されています。例えば店舗兼住宅として使っている建物の場合,住宅専用部分の床面積が2分の1以上であれば住宅となります。

今回の案件は,普通の住宅用のマンションを保有しているだけだったので,特に該当性に問題はないはずでした…。しかし,この物件には,マンションの一室だけではなく,マンションの地下に倉庫が付いており,その倉庫もマンションの部屋とは別に所有権登記がされており,依頼者は部屋だけではなく倉庫も持っていたのです。

この部屋と倉庫は登記上は別々の建物になっているのですが,この場合,マンションの部屋と倉庫は別々の建物であり,民事再生法上の「住宅」は部屋の方だけなのでしょうか?

実態としては,この部屋と倉庫は物理的には同一建物ですし,分けて転売することなどができない規約になっており,完全に一体として利用されることが予定されたものです。

私にはこれを別々に考え,住宅資金特別条項における「住宅」にあたるのは部屋の方だけである,と処理することに違和感がありました。

そこで,民事再生の申立てにおいて,これらは一体として住宅であると主張することにしました。

すると,再生委員の先生と協議をすることになったのですが,再生委員の先生もこのようなケースは初めてだったらしく,すぐには結論が出ませんでした。協議にあたって,再生委員の先生から「区分所有建物であれば,債務者が居住していない部分は対象とはならない。」と記載された書籍を示され,それを踏まえて理屈を考えるなどしました。

そして,最終的には,先ほど挙げたような住宅として一体と見るべき事情を証拠とともに上申したところ,再生委員の先生も納得してくれ,再生委員の先生から民事再生開始相当の意見が裁判所に提出され,無事開始決定が出ました。

このような「住宅」の処理が必要になるケースなどまぁ基本的にはないのでしょうが,良い経験になりました。

弁護士業務には考えさせられる問題が色々なところに潜んでおり,我々はいつだって様々なアンテナを張り巡らせながら事件を処理しています。

再生について考えている方は,お気軽にご相談下さい。

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