店長さん 気をつけて (投資用マンションの話)

最近、投資用マンションの被害の相談がとても増えています。

その中でふと、相談者の方に、店長さん(あるいは営業所等の所長さん)が多いことに気づきました。

営業担当者からすれば、個人名を知らなくとも、お店の電話番号にかけて、「店長さんいますか?」で足りること、出向く際にも、店舗の場所も分かっていること、比較的外に出やすく、勧誘の時間を取ってもらいやすいこと、などが影響しているのかもしれません。

不動産に関する取引については、訪問販売等を規制する法律として一番にピンとくるであろう、特定商取引に関する法律(いわゆる特商法)上の規制はありません。

特商法26条1項8号ロにおいて、宅地建物取引業者(いわゆる宅建業者)が行う宅地建物取引業(宅地・建物の売買・交換やその媒介・代理)については、特商法の適用対象外とされているからです(金商法や旅行業法なども同じ)。宅地建物取引業法(いわゆる宅建業法)上の宅地建物取引業に該当しないような、不動産の管理・賃貸について、訪問・電話勧誘販売等がなされた場合には、これに該当しないため、特商法が適用される余地がありますが、一般的に問題となる投資用マンションの被害の事案では、宅地建物の売買(及びその媒介・代理)のケースがほとんどですから、特商法の適用がないものと考えて良いでしょう。

しかし、宅建業法のほか、消費者契約法の適用はあります。もちろん他の法律も適用があり得ますが、今回は消契法の話を一つ。

消費者契約法は、事後的な紛争にかかる事案では(ようするに弁護士に相談に来られたような段階では)使えない事案が多い法律ではあるのですが、勧誘の段階で断る等の際には効力を発揮する条文が設けられています。

消費者契約法4条3項 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
1 当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。

2 当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。

すなわち、この条文により、勧誘を受けているときに嫌だとか困ったなという気持ちになり、その上で営業担当の方に

自宅や職場から勧誘を受けている際、担当者等に「帰ってほしい」「出て行ってほしい」と伝えたにもかかわらず、出て行ってくれなかった

ファミレスでも、喫茶店でも、職場でも、不動産会社の社内でも、その勧誘を受けている場所から「帰りたい」「出ていきたい」と担当者等に伝えたにもかかわらず、帰らせてくれなかった

というようなことがあったケースで、これにより契約をしてしまった場合には、これを取り消すことができる、ということです。

ただ、契約を取り消したいという場合、このようなことがあったことについては、のちのち、これを契約してしまった側(消契法でいえば「消費者側」)で立証する必要があります。ですので、困ったなということがあったら、可能であればその場で録音・録画を開始するなどの措置をしておくとよいかもしれません。

また、その日は契約せずに済んだけれども、この後の経過によっては契約させられてしまいそうで怖い、というような事態があるようだったら、その業者宛てに、FAXや郵便で、「強引な勧誘を受けて困った。帰りたいと言っているのに帰らせてもらえなかった」などといった趣旨の連絡を、速やかに行っておくと良いと思います。

ポイントは、書面で行うことです。法律上は、書面で行う必要はないのですが、手元に書面の写しが残っていれば、後で争わなければならなくなったとき、とても強い証拠になります(送付年月日を記載することをお忘れなく。)。その写し(コピー)を自分で取っておき、手元に残しておくとよいと思います。