詐害行為取消訴訟及び債権者代位訴訟

 今日は,詐害行為取消訴訟及び債権者代位訴訟という訴訟についてのお話しをしたいと思います。

 請求の名宛人(名宛人にしようとしている者(「A」とします))が,被害による苦情や裁判が殺到した直後に配偶者(「B」とします)と離婚し,不動産を財産分与していた場合で,当該財産分与が財産隠しだと判断できる事情がある場合,当該財産分与(譲渡)を取り消す,もしくは無効として,移転登記の抹消を求める訴訟(これを詐害行為取消訴訟,債権者代位訴訟といいます)を行うことがあります。
 なかなか専門的で要件なども複雑な訴訟なのですが,主な争点は,行われた離婚に伴う財産分与は実体を伴ったものであったといえるのか,翻っていえば,離婚は財産隠しのための仮装であったのではないかという点になります。
 被害による苦情や裁判が殺到した直後に首尾よく離婚事由が発生するかという観点からすると,離婚は仮装といえそうですが,実際の裁判ではそうは単純にはいかず,その立証はなかなか難しいのです。

 自分もこのような裁判を担当しており,上記立証に思考を巡らせていました。

 この裁判,結論として,行われた財産分与は実体を伴ったものではなく,離婚は財産隠しのための仮装であったという方向での和解案が裁判官から示され終結をしたので,何とか上記立証に成功したと思っています。
 ローンの支払い口座の特定(当該事案では離婚後もAでした),BからA名義の口座へのお金の流れの有無,Aの住民票,現地調査等,様々な立証を行いましたが,意外にも,決定打になったのは,ある渡航歴でした。
 B(元妻)は,Aとの離婚には十分に理由があり,離婚後は顔も見たくないし,会ってもいない,生理的に受け付けないと強く主張していました。
 しかし,弁護士会照会を利用し,AとBの海外の渡航歴を照会すると,なんと,離婚後AとB揃って同じ日に同じ空港から海外へ飛び立ち,同じ日に同じ空港に帰還しているということが判明したのです!
 この渡航歴を満を持して証拠として提出し,この点を,尋問でBにぶつけると,確かに一緒に行ったが現地でずっと別行動で,ほとんど話もしなかったなどと供述しましたが,苦しい弁解ですね。

 そんな上手くいはめったにないと思われるかもしれませんが,驚く事なかれ,この手法,当事務所の太田先生が,別の訴訟で行ったら,離婚後一緒に海外渡航していたとうことがあったということを聞いて行ったもの,なんと,2回連続成功した手法なのです。

 また,裁判官の人柄も素晴らしく,自分の中で印象に残る裁判の一つになりました。

 この詐害行為取消訴訟に関しては,興味深いが裁判例があります(先程紹介した太田先生の事件の裁判例です)。
 それは東京高判平成26年3月18日で,同裁判例は,詐欺的業者の首謀者が妻との離婚を仮装して財産分与をした事案について,離婚及び財産分与は通謀虚偽表示により無効であるとして債権者代位により居宅不動産の所有権移転登記抹消登記手続請求を認容しました。

 これはなかなか興味深い裁判例で,判例及び通説的理解に従えば,離婚は離婚届を提出する意思があれば足り,真実離婚する意思がなくてもよいとされ,仮装離婚であっても離婚としては有効,離婚として有効である以上財産分与も有効であり,財産分与として不相当に過大な部分についてのみ詐害行為取消の対象となるに過ぎないと考えられています。

 しかしながら,同裁判例は,離婚が仮装のものであることを詳細な理由を付して認定して離婚及び財産分与を無効としており,財産隠匿のための仮装離婚が明らかな場合には通説的理解とは異なる解釈が許されることを示唆するものといえ,大変興味深いです。

 興味をもたれた方は,当事務所のHPに裁判例が掲載されていますので,参考にして下さい。

 次回は,「僕の北斗星最終日」について,書いてみたいと思います。

DSC_7051