劇場型社債商法に関する裁判例の報告

 昨年末12月21日に判決の言渡しがあった。社債販売商法について,発行会社の役員らの責任を問うものであるが,多くの参考になると思われる判示がある。
 まず,そもそも発行会社が責任を負うのかという争点があった。発行会社は,社債は勝手に発行されたもので,印鑑も会社のものではないと主張していた。
 この点は,東京地判平成23年6月22日が,「上記のような訴外組合らによる被告会社の社債発行に係る詐欺行為が成功するためには,実在する被告会社についての会社案内や社債販売の案内を交付するなどして原告を含む詐欺の相手方を信用させることが必要であり,そこに記載された被告会社の住所,電話番号,代表取締役の氏名等は実在するものでなくてはならず,本件においても実在のものとされたから,詐欺の相手方が,被告会社に問い合わせ等を行ったときには,被告会社が訴外組合らが提供した会社案内や社債販売の案内と平仄のあった応答を行うことが不可欠であり,そうすると,訴外組合らが詐欺の相手方に行う欺罔内容について,少なくとも,被告○(代表者)ないし被告会社が,その必要な範囲で認識を共通にしていなければならず,本件においても,そうしていたであろうことは容易に推認されるところである。」として,情を知りながら詐欺行為に加担したものと推認せざるを得ない,と判示して会社及び代表者の損害賠償責任を肯定し,確定していた。

 残った部分の主要な争点の第1は,監視監督の可能性の問題であった。
 この点,判決(東京地判平成23年12月21日)は,
 「被告らは,仮に訴外○社が社債販売に加担していたとしても,それは代表取締役である訴外○が内密に行っていたものであって,被告らがこれを監視監督して是正することはできなかった旨主張するが,上記認定のように,訴外組合らから勧誘を受けて訴外○社の会社案内や社債販売の案内を交付された原告ら詐欺の相手方が,訴外○社に対して,問い合わせ等を行ってきた場合には,これら案内の内容と平仄の合った応答を行わねばならないから,訴外○は,代表取締役として,同社内の一定範囲の役員ないし従業員に対して,その旨を指示していたことが推認され,そうすると,訴外○が社内に内密にしていたというものではなく,訴外○社の取締役及び監査役としては,これを監視監督することが可能な状況であったというべきである。」

 また,第2の争点として,役員の辞任の有無があった。
 平成22年2月3日に役員らに対しても損害賠償を請求する旨の内容証明が到達していたが,その後である平成22年3月19日に取締役が軒並み辞任した(しかし辞任は不法行為の時の前である平成21年11月2日)ということになっている登記がされていた。これは,遡っての登記が許される以上,違法を厭わなければ容易に考えつく責任回避の方法である。
 この点について,判決は,
 「上記各被告についての役員辞任の登記手続は,原告が役員に対する損害賠償請求を行う旨の通知を行った後であり,この事実経過からみて,訴外○(代表者)が役員への就任を依頼した各被告に対する損害賠償請求を免れようとして,役員辞任の登記手続を行ったものと推認され,そのためには,上記認定の社債販売名下の詐欺行為が行われる前の時点で役員を辞任しておく必要があるから,訴外○(代表者)は,辞任の日を遡らせて登記手続を行ったものと推認される。また,そう考えることが,平成22年1月に原告に交付された訴外会社(発行会社)の会社案内に各被告が役員として明記されていたこととも符合する。」
 被告役員らの各陳述は利害関係を考慮すれば直ちに信用することができず,うち一人の供述は,「これをつぶさに見ると,平成21年11月ころ,訴外○(代表者)から,既に被告○を取締役から解任したと事後の説明を受け,このとき,解任の登記を了した登記簿を見せられたと述べており,この供述自体,この時点では未だ登記手続は行われていない点,解任ではなく辞任の登記である点で,客観的事実に反する部分があり,やはり信用することができない。」
 「さらに,仮に平成21年11月2日に辞職していたのであれば,4か月半にわたって登記手続が行われないままとなっていたということになるが,そのような放置が自然であると思えるような事情も全くうかがえない。」と判示した。

 上記各争点は多くの事例でみられるところ,本判決の判示は説得的であり,参考になるものと思われる。
 昨年の12月26日には一斉告訴の件で警察庁に要請に赴き,警察庁も積極的に検挙に向けて頑張っていることがうかがわれたが,被害の根絶は,個別の被害回復手続の充実によって(も)達成しうるものであるというのが私の確信である。本件のような民事判決は,その大きな足がかりとなり,全国の被害救済実務を強く前進させるだろう。

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