続行決定

 債権執行においてちょっと珍しいことがありました。

 判決を得たので,預金債権を執行したところ,残念ながら税務署の滞納処分による差押えが先行していました。

 民事執行と滞納処分の調整を図る法律として,「滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律」が定められており,滞納処分による差押が先行している場合,その差押が解除された後でなければ民事執行に基づく取立てをすることが出来ません(滞調法20条の5)。

 裁判所からは取下げを検討するように促され,これは回収が難しくなったと思いましたが,条文を確認したところ,滞調法20条の8は,続行決定を定めた滞調法8条を準用していましたので,滞調法8条3号(相当期間内に公売その他滞納処分による売却がされないとき。)に基づく債権執行続行決定申請書を起案し裁判所に提出しました。

 なお,続行決定がされると,先行の滞納処分は,後行の民事執行の後にしたものとみなされることになります(滞調法20条の8第1項,10条1項)。

 申請に対して裁判所書記官から「続行決定は不動産執行の場合しか認められいないので取り下げてください。」との電話連絡がありました。そこで,上記の条文を指摘すると,「しかし,そんなことをやった例はありません。」というので,「前例の有無は関係ありません。条文に基づいて再度検討をお願いします。」と要請したところ,しばらくして,「検討の結果,続行決定の申請を受理します。つきましては追加の予納郵券を納付してください。」との連絡がありました。

 続行決定の申請があると,裁判所は続行することについて,徴収職員等に意見を求めなければならないとされていますので(滞調法20条の8,9条2項),おそらくその手続きを行ったものと考えられます。

 予納郵券を追加した11日後,税務署が滞納処分による債権差押を解除したとの通知が突然舞い込み,預金債権を全額回収することが出来ました(税務署が債権差押を解除した詳細はわかりません。)。
 
 税務署による滞納処分が先行していても直ぐにあきらめずに,法的手続きを粘り強く履行した結果,意外に良い結果がもたらされることになりました。