「金・白金地金売買契約」と称する取引についての判決

 平成25年12月12日付東京地裁判決。
 貴金属地金分割払い取引(代金を300回(25年)の分割払とする「金・白金地金売買契約」と称する,近時急増している詐欺的商法に関するもの。このような取引の仕組み自体が違法であるとして損害賠償請求を全部認容している。
 判示内容は以下のとおり。
 「商品先物取引法6条1項は,何人も,商品について先物取引に類似する取引をするための施設を開設してはならないと定め,商品市場類似施設の開設の禁止について定めている。そして,商品先物取引法2条3項は,この法律において「先物取引」とは,商品取引所の定める基準及び方法に従って,商品市場において行われる次に掲げる取引をいう,と定め,2条3項1号において,その取引につき,「当事者が将来の一定の時期において商品及びその対価の授受を約する売買取引であって,当該売買の目的物となっている商品の転売又は買戻しをしたときは差金の授受によって決済することができる取引」を定めている。前記争いのない事実によれば,本件取引は,商品先物取引法2条3項1号の規定に照らし,当事者が,将来の一定の時期(契約の25年後)において,商品(金又は白金)及びその対価(代金の一部である300回目の分割支払金)の授受を約する売買取引であって,当該売買の目的物となっている商品の買戻し(中途解約は,買戻しにあたる。)をしたときは差金の授受によって決済することができる取引にあたるといえる。したがって,被告会社が,別紙1のとおりのパンフレットを作成して広く顧客を勧誘している「ロイヤルセービング」と称する金・白金地金売買取引(本件取引も同じである。)は,当事者が将来の一定の時期において商品及びその対価の授受を約する売買取引であって,当該売買取引の目的物となっている商品の買戻しをしたときは差金の授受によって決済することができる取引にあたるから,商品先物取引法2条3項1号に定める取引と同一の性質を有する取引であり,商品先物取引法6条1項にいう「先物取引に類似する取引」にあたる。したがって,被告会社が,会社組織を設けて「ロイヤルセービング」と称する金・白金地金売買契約を勧誘していることは,商品先物取引法6条1項に反して,商品について先物取引に類似する取引をするための施設を開設していることになり,公の秩序に反する違法行為である。
 そして,25年後の決済時又は中途解約時における金価格は,契約時には確定できない偶然の事情により定まるものであるから,被告会社が,商品先物取引法6条1項に違反して商品市場類似施設を開設し,取引を勧誘して,契約時に分割支払金として代金の一部を受領し,かつ代金の10%相当の契約手数料を受領することは,何ら正当な理由もなく賭博行為を勧誘しているにすぎず,刑法186条2項に反して賭博場を開張して利益を図っているものと認められる。したがって,このような違法な商品市場類似施設における取引であり,かつ違法な賭博にもあたる本件取引を勧誘して原告に契約を締結させた被告会社の行為は,民法709条の不法行為としての違法性を有する。
 被告会社は会社の組織的な行為として,被告○は被告会社の代表取締役として,いずれも故意に上記の不法行為を行ったものであるから,民法709条により,本件取引をしたことによって原告が被った損害を賠償すべき義務がある。」
 被告○は,本件取引が契約金額の1割にも相当する手数料を徴求した上で金・白金の売買代金を25年間300回もの分割払いとし,25年後の金又は白金の引渡しを約するという極めて異常な取引であり,一方で,金又は白金の先物取引が正規の取引所でされていることは新聞でもわかる常識であることからすれば,被告会社の従業員として本件取引を原告に勧誘するにつき,本件取引が違法な商品市場類似施設における取引であり,賭博としての違法性をも有する不法行為にあたることを認識することができたと認められる。

 この種商法の仕組み自体の違法性を端的に説示する初判断であり,同種商法による被害会回復のために極めて有意な判決であると考えるので,紹介する(判決はHPにUP)。