被告の最後の住所地が記載されていない債務名義による強制執行(4)

(続き)
 新たに住所地が判明した者に対する新たな訴えの提起による方法は,債務名義に記載された者と強制執行の名宛人としようとする者が同一であるという前提に立てば,前の債務名義の既判力等に抵触することともなり(民事訴訟法114条1項),重ねて給付判決を得ようとするものであって給付の訴えを提起する訴えの利益をも欠くのではないかとも考えられるが,確定した給付判決があっても例外的に必要性が認められれば訴えの利益は否定されず(例えば時効中断のためなど),執行文付与の訴えが可能である場合であっても,給付の訴えの審理内容は執行文付与の訴えと変りがなく,執行文付与の訴えができるときに給付の訴えが提起されても,実質的には執行文付与の訴えが提起されたのと変わりないから,給付の訴えの利益があると考えるべきである(大判昭和8年6月15日民集12巻1498頁,新堂幸司「新民事訴訟法第三版」246頁,兼子一ほか「条解民事訴訟法」734頁,中野貞一郎ほか「新民事訴訟法講義第2版」133頁)ところ,本件のように必ずしも執行文付与の訴えが認められるか否かが確実でない場合にはなおさら,訴えの利益を認める要請は一層強い。
 以上検討したところによれば,今回検討の対象としてきたような場合には執行文付与の訴えと,新たな給付の訴えが認められるべきものであると考えられる。
 そして,請求者にとっても(印紙代の負担等は措くとして)いずれの請求が認容されても目的を達することができるところ,裁判所の判断の選択肢をより多くするのが適切であるから,これら請求を併合して訴えを提起するのが適切なのではないかと考えられる。今後の実務の集積,議論の発展が期待される。(荒井哲朗)

 追記:なお,この点については平成23年11月21日に東京地裁で興味深い判決を得ている。

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