対ソフトバンク訴訟第1審判決等報告(3)

(続く)
としながら,
8 調査嘱託に回答するべき義務は嘱託先が裁判所に対して負う一般公法上の義務であり,当該調査嘱託を申し立てた訴訟当事者に対して負うものではないから,嘱託先が当該調査嘱託に回答しない行為について,当該調査嘱託を申し立てた訴訟当事者に対する不法行為が成立する余地はない。
9 本件調査嘱託に対してソフトバンクが回答することによる利益は,原告にとっては反射的利益に過ぎないのであって,ソフトバンクが回答しないことは原告の権利又は法律関係について危険や不安が現に存在するとはいえない。大判昭和8年6月20日は,中間確認の訴えを提起する利益は,訴訟物に対し前提の関係をなすところのある権利につき,訴訟中争いを生じさえすれば認められるというものであるが,ソフトバンクが本件調査嘱託に回答すべき一般公法上の義務を負うか否かの判断と,ソフトバンクが回答を拒絶した行為について原告に対する不法行為が成立するか否かの判断は無関係あるから,上記大判を前提にしても中間確認の訴えの利益は認められない。
として,確認請求を却下,金銭請求を棄却した。
1ないし7でソフトバンクが23条照会に応じない理由として挙げる主張を全部排斥しており,中身的には中々良い線にいっているものと思う。実務の運用にも影響を与えるだろう。
 しかし,原判決の主文に顕れた結論のままでは,残念ながら運用の抜本的変化は期待できない。そもそもソフトバンクは,裁判所が必要性・相当性を認めて発した調査嘱託に応じない組織なのである。主文によってその運用の誤りが指摘されなければ,結局,何も変わらないだろう。その意味でも,今回の判決はやはり,是認することができない。
(続く)