対ソフトバンク訴訟第1審判決等報告(7)

 いえいえ浅井先生,私も視聴しております,そのドラマ。おもしろいもん。
 さて。
(続き)
3 本件で被害者が求めているのは,通常の確認の訴えに対する応答ではなく,中間確認の訴えに対する応答である。
 中間確認の訴えについては,大判昭和8年6月20日民集12巻1597頁が,「訴訟の前提問題である法律関係に争いがあるときには,中間確認の訴えは,何ら特別の煩累を他人に及ぼさないから,当該前提問題である法律関係について争いがあればそれのみで中間確認の訴えの利益は備わり,他に権利保護の利益などの確認の利益を要しない」旨判示しているところである。今回の判決は,上記判例にも反するものである。
4 ところで今回の判決が訴えを却下できるとする理由とするところは,「被告が本件調査嘱託に対して回答すべき一般公法上の義務を負うか否かの判断と,被告が本件調査嘱託に対する回答を拒絶した行為について原告に対する不法行為が成立するかの判断とは無関係で,訴訟物に対し前提の関係をなすところのある権利に争いが生じていると評価することはできない」というところにある。すなわち,いわゆる「先決性」を否定するのである。しかしながら,このような考え方は,通説的理解にも反し,是認できない。
 すなわち,中間確認の確認の利益にいう「先決性」については,1.抽象的先決性説,2.具体的先決性説,3.論理的先後関係基準説があるとされるが(?を挙げる文献は少数ではある。1,3によれば本件における確認の利益が肯定され,2による場合には否定されることになる),1抽象的先決性説(ここでいう先決性とは,現実にその判断が本訴請求の結果を左右する場合である必要はなく,理論上先決関係にあれば,すなわち,現実の訴訟で先決的法律関係となる可能性があれば足りる)が通説である(中野貞一郎・松浦馨「新民事訴訟法講義第2版補訂版」515頁は,具体的先決関係説によるとすると中間確認の訴えの適否が本訴についての裁判所の判断にあまりに依存し適当でないとし,抽象的法律関係説を支持するべきであるとする。秋山幹男・伊藤眞・加藤新太郎・高田裕成・福田剛久・山本和彦「コンメンタール民事訴訟法?」208頁は抽象的先決性説が通説であるとし,これによるべきであるとする。他に,谷口安平・井上治典「新・判例コンメンタール民事訴訟法4」三省堂208頁,菊井維大・村松俊夫「全訂民事訴訟法?」192頁,岩松三郎・兼子一編・倉田卓次「法律実務講座民訴編2巻」188頁が同説を取っている)。
 裁判所の恣意的な判断過程によって中間確認の訴えを事実上骨抜きにしてしまえることが不当であることは上記中野ほか講義も指摘するところである。すなわち,本訴請求をどこかの論点で排斥しさえすれば中間確認の訴えはすべからく不適法であるということになりかねない。例えば,利息請求の訴えで元本債権の存否について中間確認の訴えが提起された場合,利息の約定がないという理由で本訴請求が棄却されることもあるだろうけれども,元本債権の存在が「先決性」を欠くということになるとはおよそ解されないところ,通説によらないときにはこの場合にも先決性を欠くということになってしまい,明らかに不当である。
 従って,通説によるべきであり,大判に照らせば,本件中間確認における訴えの利益が欠けると考える余地はない。
(続く)