初めての刑事記録謄写

 今日の話は刑事記録の謄写についてです。

 といっても,刑事弁護のために依頼者が被告人となっている刑事記録を謄写したという話ではありません。
 今回私が初めて行ったのは,同種余罪の被害者等による公判記録の閲覧・謄写です。
 裁判になっている事件の直接の被害者ではないが,被告人のした同種余罪の被害者であり,損害賠償請求権の行使のために記録の閲覧・謄写が必要な場合に可能なものです。
 根拠法は犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第4条です。
 刑事記録には非常に多くの情報が多く含まれています(だからこそ,通常は閲覧が厳しく制限されます。)。
 犯人の本名・住所,犯行グループ組織図,犯行手口を詳細に語った調書等々,警察・検察が強制捜査によって収集した強力な証拠を含む情報です。
 捜査権のない私人はこれらの情報を通常は知り得ませんから,犯人の住所すら分からず訴訟の名宛て人にすることさえ出来ないことがありますし,訴えを提起できても証拠が足りないということもありえます。
 当該制度はそのような問題を解決しうる強力な手段となるわけです。

 利用には同種余罪の刑事事件を見つけることがハードルとなりますが……組織的詐欺事件などでは,犯行グループは商材を変えて繰り返し被害を生みますから,A社の未公開株商法では立件されていなくても,同じ犯行グループによるB社の未公開株商法では立件されている,ということもありますし,意外に詐欺の関与者の名前でネットで検索するだけで公判記録までたどり着くことがあるようです(その関与者の名前を探すのにも色々と技術がいるのですが。)。
 警察から情報を提供される,というケースもあります(今回の私のケースはこれに近いものでした。)。
 そういう場合には是非利用を検討したい制度です。

 ……しかし,残念ながら,この制度は十分に利用されているとは言いがたい状況にあるようです。
 例えば,この制度では検察官を経由して裁判所に謄写申請するのですが,私が最初にある地方検察庁支部にこの謄写の話をした際に,「そういうことは裁判所に言って下さい」というようなことを言われてしまいました。
 根拠法に言及した後はすんなり話を通してくれたので,嫌がらせなどではなく単純に経験がなかったのでしょう。
 また,私の場合遠隔地での謄写だったため,弁護士会の謄写代行サービスを利用したのですが,そこのサービスの申請書類には不動文字で「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第3条に基づき謄写を申請します」というようなことが書かれていました。
 3条は同種余罪被害者ではなく,直接の被害者による謄写の根拠条文です。
 3条を使う人はいても4条を使う人はいないということを表しています。

 ……もちろん,この制度の利用にはコストがかかりますし,徒労に終わる可能性もありますから,何が何でも使えば良いというものではないでしょう。
 しかし,少なくとも私の今回のケースでは,住所不明だった被告の住所が分かりましたし,今まで存在すら明らかでなかった共犯者が浮上してきました。
 刑事事件での言い分が分かったので訴訟の見通しも立てやすくなりましたし,自白調書等の証拠の入手も可能になりました。
 このように成果が出ることが期待できますから,もう少し利用者が増えても良いのではないか,そう思わざるを得ません。

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