タマネギ列車を撮る〈第6回〉

「タマネギ列車を撮る」の連載も回を重ねること6回。
今回がいよいよ最終回。

世間は,寒い冬を越え,桜の季節も終わったのに,まだ紅葉の時期の話をしています。
季節感ゼロの話ですが,大団円へ向けて,話を昨年の10月,北海道の山奥,常紋峠へと戻します…。

(3月20日の続き)

野生の鹿をやり過ごし,熊の糞にも負けず,前進前進。
早朝から常紋の山を彷徨してたどり着いた絶景の撮影地,「常紋峠の146キロポスト!」。

そして,146キロポストに辿り着いて,待つこと1時間半。
その時…,
それまでの静寂は破られ,山の麓から「ゴゥーーー」という轟音が聞こえ始めました…。

「タマネギ列車だ!!」,「とうとう来た!」

自分の中で緊張が走ります。

でも,音が聞こえ始めても,主役はなかなか現れません。
タマネギ列車は重い荷物を従え,ゆっくりゆっくり登ってきているのです。
改めてこの山道は難所なのだなと思いました。
そこから10数分が経過した頃でしょうか。

「ゴゴゴゥゥゥーー!」

それまでの轟音は,大地を切り裂くような轟音へと変わりました。

「いよいよだ!」

そしてその轟音と共に,赤い車体が,羊腸の険路の一番奥からとうとう顔を出しました。

キ,キ,キタ━(゚∀゚)━!

カメラの前に立ち,臨戦態勢。
主役は,ゆっくりゆっくり,一歩一歩,その歩みを確かめるように山道を登ってきます。
その姿は、主役の登場に相応しい威風堂々たるものです。

「慌てるな,後ろの機関車が画面に入るまで引きつけろ」,
「先頭の機関車が最後のカーブを曲がり始めたところで,シャッターを切れ…」
と自分に言い聞かせながら,もはや辺りの全ての音を打ち消すまでに大きくなった轟音とともに,ゆったりと山道を登ってくるタマネギ列車を待ちます。

そして,先頭の機関車が最後のカーブを曲がり始めた瞬間,シャッターを押す!!!
(自分が決めていたポイントよりちょっと早かったー!)

タマネギ列車に向けて,「パシャ,パシャ,パシャ,…」。

誰もいない山々にカメラの連射音だけがこだまする,端から見ると,それは異様な光景(笑)。
でも当の本人は真剣そのものです。
列車は轟音をとどろかせながら自分の前を通り過ぎ,さらに山奥へと進んでいきました。
列車が過ぎ去れば,また静寂が山を包みます。
自分は,そのど迫力に,しばし余韻に浸っていました。

そして,一体どんな写真が撮れたのか…,それはカメラの画面を見て初めて知りました。

その時の作品が,こちらになります。

20130416-dsc03572-2_______________.jpg
タマネギ列車(8071レ) 生田原・常紋(信)間

前(プル)と後ろ(プッシュ)に機関車がついていますね。
前(プル)が引っ張って,後ろが押して(プッシュ),連続S字カーブの険路を,くねくねと大きな車体を揺らしながら,一歩一歩登っていきます。

先頭の機関車の赤字に白帯が原色の印(※原色の説明は「タマネギ列車を撮る〈第3回〉を参照),最も価値が高いと言われる機関車です。
(えっ,それだけ!という声が聞こえてきそうですね(笑))

以前お話しした、東京弁護士会が発行している機関誌「LIBRA」4月号にも同じ写真が掲載されています。
良ければご覧になって下さい。
www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2013_04/h2.pdf
www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2013_04/p37.pdf

昔夢見ていたけどいつしか忘れてしまっていたものが,ある日の新聞記事でその続きが突然動きだし,十数年の時を経て叶った,そんな瞬間でした。
長く生きているとこんなこともあるもんですね(笑)。

タマネギ列車は今日も,旬の味覚を満載して,常紋の山々を越え,皆さんの食卓に甘くておいしいタマネギを運んでいることでしょう。

おしまい。

しかし…

この話には実は更に続きが…。
その話は,「番外編」とでもして,機会がありましたら,いつかお話しすることにしましょう。

では,またお会いできる日まで。

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