4.ストラテジック・パートナーズ・インベストメントほか

(東京高等裁判所平成29年4月26日判決,東京地方裁判所平成28年2月18日判決,東京地方裁判所平成27年2月4日ほか)

【争点①】インターネット取引における説明義務違反
 本件は,外務員による出資の勧誘は行われておらず,原告らが,自身で被告らのブログ,コラム,メルマガでなどを通じてベトナム未公開株ファンドのことを知り,その後一般的な説明会に参加したり,投資の内容を説明するDVDを購入したりした上で,自身でインターネットから出資の申込を行ったという事案であった。
 そこで,①被告らからのブログ,コラム,メルマガ,説明会等における話は,ファンドの一般的な話をしただけであり勧誘行為とはえない,②インターネットでの申込に際しては,顧客が自由に閲覧できるリスク説明の書面を交付(電子交付を含む。)をもってリスクの確認が行われる体制が採られている場合,これによって説明義務も果たしているとの主張が被告らからなされた。
 これに対して,東京地判平成28年2月18日は,①については,本件における説明会,DVD,コラム,メルマガなどの性質,内容に鑑みれば,被告らの行為は勧誘行為の一部にあたるとした。
 特に,被告らのコラムやブログといった不特定多数の者に向けられた一般的なインターネット上の発言についても,「ベトナムの未公開株式の有望性・希少性を謳うものであり,本件説明会の開催を告知し参加申し込みを募る被告○○ブログと相まって,本件説明会ひいては本件ファンドを申し込む誘因として,本件ファンドの勧誘方法の一部となっていたということができる」と判示している。
 また,②については,被告ら3名は,「本来,本件説明会に出席した出資希望者に対しては,重要事項説明書やリスク確認書等を示して,本件ファンドに付随するリスクについて十分理解できるように説明すべきであったし,本件説明会に参加しないで本件DVD等を購入・視聴する者に対しても,本件DVD等を視聴する際に本件ファンドに付随するリスクについて十分に理解できる手段や,出資希望者がかかるリスクを正しく認識しているか否かを出資前に確認する手段を講ずるべきであった。しかるに,現実には上記のような手段が採られていたとは認められないから,被告3名の勧誘行為には,説明義務違反の違法があるというべきである」と判示している。
 また,同判決は,「一般的に,インターネットを利用した非対面取引は,対面取引に比べて安価な手数料や顧客の利便性を重視した取引であること,顧客としても担当者の勧誘,助言,指導等を介在させることなく,自己の情報収集,調査及び分析等に基づいて自己の責任と判断で取引を行いたいという意向を有していることが通常であると考えられることからすると,顧客に対するリスク等の説明としては,顧客が自由に閲覧できるリスクの説明書面を交付(電子交付を含む。)した上で,これについて理解したことを書面又はウェブ上の入力で確認するという手法は,一定の合理性を有するというべきである」とした上で,「しかしながら,本件では,上記のような契約締結前の募集勧誘方法によって,原告らをしてベトナム未公開株のリターン面に強く意識が向いた状態とさせた反面,そのリスクについては意識が向きにくい状態に陥らせたまま,インターネットを利用した申込方法に限定して本件ファンドを販売しているので,先行する勧誘行為に基づき,被告3名は,原告らに対し,本件ファンドに出資するか否かの適切な判断を行うのに必要となる情報を提供し,その理解度を確認すべき信義則上の説明義務を負っていたというべきものである」と判示している。
 さらに,本件では,説明会,DVD,コラム,メルマガといった媒体の発言をもって,断定的判断の提供の違法も認めた。
 インターネット取引が問題となる事案では,外務員からの直接の働きかけはなく,顧客が自由に閲覧できるリスク説明の書面を交付(電子交付を含む。)をもってリスクの確認が行われる体制が採られている場合,説明義務は尽くされているとも考えうるが,本判決は,被告らが原告らを本件ファンドのリターンばかりに目がいってしまう状態にしていたという点に着目して,そのような場合,申込の際にリスクをインターネット上で告知したのみでは足りないとした点で意義がある。

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(東京地判平成28年2月18日,確定)

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(東京地判平成27年2月4日,東京高判平成27年8月27日で維持)

 なお,同様の判断は,東京地判平成28年3月25日においても示されている。

【争点②】その他の説明義務違反(不利益事実の不告知)
 また,本件では,複数のベトナム未公開株ファンドが組成され販売されており,そのうち一つは信託会社(上場会社)から販売された。その後,同会社から販売されたファンドは破綻し信託財産管理人が選任され,その調査で,実際にベトナムの未公開株は購入されていたこと,そのうち一部の会社は上場していたことが明らかとなった(全くの架空取引ではなかった)。
 一方で,原告の手元にあった関係資料と信託財産管理人の調査結果を突き合わせていくと,①資金の流れについての虚偽事実の告知,②約3億円の資金の使途が明らかではないこと,③株式購入代金として使用された金額は,出資金として集めた金額の1/5に過ぎないことなどが判明した。
 この点について,東京地判平成28年9月27日は,上記①乃至③について,株式購入代金として使用された金額が出資金として集めた金額の1/5であったとしても,株式の上場による値上がり益等により本件ファンドが利益を上げる可能性が十分あった,そもそも出資金の全額ないしそれに近い金額がベトナム国内の未公開株式の購入代金に充てられることは当初から予定されていないなどとして(そのような認定は全く不自然,不可解というほかない),原告らの請求を棄却した。
 これに対して,東京高判平成29年4月26日は,上記①乃至③について,一審の判断を明確に修正した上で,被控訴人ら(一審被告ら)は,「投資家にとって極めて関心が高いと考えられる実際の未公開株式購入額やこれに直接影響する高額の仲介手数料の存在及びその額について何ら説明がなされなかったのである」から説明義務は尽くされていなかったとして,同人らの行為に違法性を認めた。また,勧誘資料等の客観的資料を踏まえても,出資金の2割程度に過ぎない株式では利益を生じる可能性は極めて低いといわざるを得ないとした。
 上記③の株式購入代金として使用された金額が出資金の1/5に過ぎないという事情からは,本件ファンドは損益を出資者に適切に帰属する前提を欠いているといえ,およそ正常な金融商品であるともいえないようなものであったが,裁判体によっては,このような事案でも違法性を否定することがあるのである。高裁は,最初から,1審は当然取り消すことを明言してくれ,心強かった。

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(東京地判平成28年9月27日,1審判決,請求棄却,被害者ら控訴)

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(東京高判平成29年4月26日,控訴審判決,被害者ら逆転勝訴)

1.東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディング
(海外ファンド,金融商品まがい取引としての違法性)(東京高等裁判所平成23年12月7日判決)
「金融商品まがい取引」として違法性を導いたリーディングケース
2.東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディング(海外ファンド)
(東京地方裁判所平成20年9月12日決定)
私募ファンド業者に対する意表を突いた被害回復手続
3.JPB,日本プライベートバンキングコンサルタンツ
(海外ファンド,金融商品取引業者の取締役の監視監督責任のあり方)(東京高裁平成22年12月8日判決,東京地方裁判所平成22年5月28日判決)
この種業者の(名目的)取締役の責任について説得的に判示している
4.ストラテジック・パートナーズ・インベストメントほか
(東京高等裁判所平成29年4月26日判決,東京地方裁判所平成28年2月18日判決,東京地方裁判所平成27年2月4日ほか)
インターネットにより契約の申込みをさせていたファンド商法において,説明義務違反の違法性が認められた事例
5.ファンドシステム・インコーポレイテッド
(FX自動運用,従業員の過失による幇助責任)(東京高等裁判所平成23年12月7日判決)
「過失による幇助」による損害賠償を命じたもの
6.東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディング,New Asia Asset Management,Mongol Asset Management(海外ファンド)
(東京地方裁判所平成24年4月24日判決)
海外ファンドについて商品自体の「不適正」さを指摘したもの
7.アイ・エス・テクノロジーほか(121ファンド関係)
(1事件:東京地方裁判所平成25年11月13日判決,東京高等裁判所平成26年7月10日判決,2事件:東京高等裁判所平成26年9月17日判決,東京地方裁判所平成25年11月28日判決)
表に出てこなかった上位関与者及び収納代行業者の責任を認めたもの
8.レクセム証券(旧商号:121証券)
(東京高等裁判所平成27年1月14日判決)
121ファンド商法について一定の関係を有していた証券会社の責任を認めたもの 9.Quess Paraya,エターナルファンド
(東京地方裁判所平成27年3月26日判決)
「セレブな雰囲気」を用いて勧誘するファンド商法について,投資を行う者に適正な損益を帰属させることを目標として組成され管理されていたものということはできず,金融商品として不適正なものであったとして首謀者以下関係者に損害賠償を命じたもの 10.バーチャルオフィス契約・電話利用契約に関する本人確認書類提供者の責任
(東京高等裁判所平成28年1月27日)
詐欺商法において用いられたバーチャルオフィス・電話利用権の契約に関する本人確認書類提供者の責任を認めた事例 11.携帯電話貸与者(一般個人)
(東京地方裁判所平成26年12月25日判決)
携帯電話レンタル業者ではない一般人が貸与した携帯電話が詐欺商法に用いられた事案において貸与者に過失による幇助の責任を認めた事例 12.L・B投資事業有限責任組合関係
(東京地方裁判所平成26年2月26日判決)
投資事業有限責任組合の形態を採用して未公開株商法を行っていた業者らの責任 13.ユニオン・キャピタル,ファンネル投資顧問
(東京地方裁判所平成28年7月8日)
「本件ファンドは,そもそも,顧客の資金を運用し,顧客に適正に損益を帰属させることを目的として組成されたものとはいえない」として損害賠償請求を認容した事例 14.有限会社リンク(121ファンド関係)
(東京地方裁判所平成24年4月23日判決)
中間代理店の過失を取引の荒唐無稽さから導いたもの 15.パブリックライジングジャパン(ファンド商法)
(東京地方裁判所平成24年7月9日判決)
ファンドまがい商法被害事案において参考になる 16.パブリックライジングジャパン(ファンド商法)
(東京地方裁判所平成24年9月14日判決)
ファンドまがい商法被害事案において参考になる 17.合同会社フィールテックインベストメント4号,一般社団法人米国IT企業投資協議会(投資事業組合商法)
(東京地方裁判所平成25年2月1日判決)
投資の実態を明らかにしないことがどのような意味を持つかを正しく指摘している 18.よいルームネットワーク(探偵業者)
(東京地方裁判所平成24年11月30日判決,東京高等裁判所平成25年4月17日判決)
探偵業者による被害事案 19.恵新
(東京地方裁判所平成26年1月28日判決)
過失による幇助という法律構成を用いている 20.スペース・ワン関係
(東京高等裁判所平成26年7月11日判決,東京地方裁判所平成25年3月22日判決)
ファンド商法勧誘者,加功者の責任(「勧誘」の評価) 21.あいであ・らいふ
(東京地方裁判所平成22年9月27日判決)
リスク説明がされていたか否かについて,書面の表示・記載の内容を具体的・実質的に検討して判断したもの 22.アイ・ベスト
(東京地方裁判所平成23年5月27日判決)
「不動産ファンド」まがい商品の勧誘者について会社の説明を鵜呑みにして勧誘したとしても責任を免れないとしたもの 23.サンラ・ワールド(海外ファンド)
(東京高等裁判所平成23年5月26日判決)
広く被害を生んだサンラ・ワールドの商法に関するもの。これ以外は全て全額を支払うとの訴訟上の和解が成立している 24.東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディング(海外ファンド)
(東京地方裁判所平成23年5月31日判決)
私募ファンド商法被害事案 25.KCFホールディングズ,中央電算(フェリーマルチ商法)
(東京地方裁判所平成24年8月28日判決)
フェリーマルチ被害事案 26.住まいと保険と資産管理
(東京地方裁判所平成24年9月26日判決)
FPグループの海外投資勧誘 27.エイ,Truth Company(121ファンド関係)
(東京地方裁判所平成25年1月21日判決)
121ファンド商法の主要な代理店であった業者らの責任 28.エスペイ(121ファンド関係)
(東京高等裁判所平成24年12月20日判決,東京地方裁判所平成24年6月22日判決)
過失相殺をした1審の判決を取り消した控訴審判決 29.ハヤシファンドマネジメント,トップゲイン
(東京地方裁判所平成25年1月24日判決)
ファンドまがい商法の判断枠組みを踏襲し,真実はそうでないのに,「ファンド・オブ・ファンズ」を喧伝する行為についての違法性評価を固めるもの