マンション投資被害

1 投資用マンション被害事案の増加傾向

 投資用マンションを購入すれば,家賃収入を得ることができ,ローンを組んでも持ち出しをすることはない(あるいはほとんどない)などとして投資用マンションの購入を勧誘される被害が近時顕著な増加傾向にあり,強引・強迫的な態様(なかには暴力行為を伴うものも見られます)で契約を迫る例が多く見られるようになっています。

2 マンション投資被害事案の近時の特徴

 マンション投資被害事案では,通常の不動産価格よりも高い価格で購入させられたり,虚偽の家賃保証を告げられたり,収益予測において重要な要因があえて省かれていたり,絶対にもうかると告げるなどしたり,契約の目的を告げず,あるいは偽って接触をしてきたり,長時間の拘束や暴力的言辞・脅迫を行ったり,クーリングオフを様々な態様で妨害したりと,その手口は極めて悪質なものが多く見られます。最近の傾向として,いわゆるデート商法的な手口を用いる例も多くみられます。

 このようなマンション投資商法と提携している銀行も,このような違法な勧誘がなされていることを知りつつあえて与信していることが窺われるものも少なくなく,頭金なしで,複数のマンションを立て続けに購入させられる例などでは,ローンを組む銀行も概ね想像が付くという状況にあります。

3 訴訟提起前に被害回復を達することが多いのが特徴

 マンション投資被害事件の事件解決までの流れとして,他の投資詐欺商法被害の場合とは異なり,まずは交渉から開始することがほとんどだということが挙げられます。交渉対象としては,不動産販売業者(その他に仲介業者がいる場合には当該仲介業者も含まれます),デート商法の場合には当該相手方,事例によっては融資先の銀行などが考えられます。事案により異なりますが,まずは不動産の売買に際して直接窓口となった販売業者又は仲介業者との間で交渉を開始することが適切と思われることが通常です。
 デート商法の場合,被害に遭ったことを認識した時点では既に勧誘した相手方と連絡が取れなくなっているなど,勧誘した相手方と販売業者らとの間の意思疎通を裏付ける証拠に乏しい場合も少なくありませんが,未公開株商法の勧誘業者・販売業者の関係と同種の関連性が指摘できる場合や,少なくとも不動産販売業者の過失を指摘できるケースも多くあるように感じられます。

 被害者は毎月一定以上の金額のローン負担を強いられているため,係争の長期化は可能な限り避けたいという要請もあるでしょう。また,業者側も,時間の経過によってマンションの価格が下落すればするほど賠償額も大きくなっていきますから(係争金額,損害額は,(ローンを考慮した)購入させられた金額と実際のマンションの価格の差です。),早期に解決したいという姿勢を見せる業者が多いというのが現状です。銀行との関係を悪化させたくないという要請も働いているものと見受けられます。ですので,交渉により事件が解決する(買い戻しをさせる)例がほとんどですが,業者がこれに応じない場合など,対応によっては,被害の拡大を避けるためにも,訴訟提起による被害回復を検討しなければなりません。
 一応マンションを購入しており所有権も登記されており,毎月のローンさえ支払っていれば被害が現実化しないような錯覚にとらわれがちである被害類型ですが,早期に適切な法律相談を受け,速やかに被害回復手続に着手することが大切だと感じられます。

4 当法律事務所における近時の被害回復例

 当法律事務所も積極的にこの種被害の救済を担当しています。

被害回復例としては,
デート商法で異性から勧誘されて投資用マンションを購入したが,途中で相手方から騙されていたことに気づき,当法律事務所に法律相談があり,弁護士がデート商法的手口の違法性にも着目して不動産販売業者と交渉を開始し,訴え提起前に不動産販売業者が物件の買戻しに応じた事例

投資用マンションを購入する際,不動産販売業者から競合他社との金利差額を負担する旨の覚書をもらい,差額を負担してもらっていたが,途中で不動産販売業者が覚書が偽造であるなどとして差額負担を拒否したため,当法律事務所に法律相談があり,弁護士が関係資料を検討したところ,覚書には覚書の記載に違反した場合には不動産を買い取る旨の記載がなされていたため,この点を中心的な主張として不動産販売業者と交渉を開始し,訴え提起前に不動産販売業者が物件の買戻しに応じた事例
などがあります。