11.真匡会

(東京地方裁判所平成27年3月27日判決)

 医療ないし医療法人に対する高齢者の高い信頼を利用して広く被害を多発させ,刑事事件にも発展した医療法人社団真匡会の医療機関債販売事案について,真匡会の代表理事長らの責任を認め,過失相殺を否定して損害賠償を命じたもの。

 判決の主要部分は以下のとおり。

 「医療法人においては,理事長が医療法人を代表し,その業務を総理するとされ(医療法46条の4),真匡会の定款においても,理事長のみが真匡会を代表するとされている。理事長は,原則として,医師又は歯科医師でなければならないから(同法46条の3),真匡会にとって,医師である被告脇坂が理事長であることは,医療機関債の発行のために重要な事柄であり,被告今井が文書等の内容を事後的であっても被告脇坂に確認したり,被告脇坂に対し,東京都の担当者に医療機関債の発行を以前から知っていた旨述べるように指示したのも,理事長である被告脇坂が医療機関債の発行を了解していなければ,医療機関債の発行の維持,継続が困難だと考えたからであると解される。
 被告脇坂は,被告小泉及び被告今井の言動に不信感を持っていたのに,東京都等から真匡会の医療機関債の発行に問題があると指摘された後も,真匡会による医療機関債の発行を中止するなどの措置をとることも,理事長を辞任することもなく,被告今井らの説明を鵜呑みにし,東京都の立入検査等に立ち会って被告今井らの指示どおりに行動し,理事長被告脇坂名義での文書が提出されることを是認するなどして,医療機関債の継続的な発行を容易にした。また,被告脇坂は,真匡会の事業計画,財務状況等並びに具体的な医療機関債の発行内容及び方法,医療機関債により集められた金銭の使途等について,客観的資料を確認することを怠るとともに,東京都による医療機関債の新規発行の中止勧告後も,事後的に医療機関債の発行を中止した旨報告を受けただけであり,具体的にどのような対策を講じたのか,その対策が真匡会内部で徹底されているのか等について,確認もしなかった。
 以上によれば,被告脇坂は,内容を確認せずに東京都等に真匡会名義の文書を提出し,被告今井らの指示どおりに行動すること等により,真匡会が違法な医療機関債の発行を継続するために相当の役割を果たしたということができる。そして,被告脇坂は,上記の医療機関債の発行が違法であることを知りつつ,これに加担したとまではいえないが,真匡会の代表者としてその業務について善管注意義務を負っていたにもかかわらず,平成23年7月25日に真匡会による医療機関債の発行を知り,東京都等から医療機関債の発行に係る基本的な文書の提出を求められ,同年8月23日に立入検査を受け,同年9月9日に不利益処分の予告を受けた後も,医療機関債の発行は適法であるとの被告今井らの説明を軽信し,医療機関債の発行中止などの措置等を行わなかった点で過失があり,本件医療機関債の発行及び勧誘について,他の被告らと共同不法行為責任を負う。」
 (本件詐欺商法を阻止することは不可能であった,因果関係がないとの主張に対して)「被告脇坂は,平成23年7月25日に医療機関債の発行を知り,東京都から医療機関債の発行に係る基本的な文書の提出を求められた時点又は遅くとも東京都による同年9月9日の不利益処分の予告の時点で,その適法性に疑問を持ち,理事長として医療機関債の発行の停止に向けた具体的な行動を取るべきであった。そして,理事長である被告脇坂自らが東京都等に対し医療機関債の不正発行を申告すれば,東京都の調査ばかりでなく警察による捜査等が行われ,その後の医療機関債の発行がされなかった可能性が十分にあること,原告は,真匡会名義の預金口座に本件医療機関債の購入代金を送金していたところ,被告脇坂は,理事長としてこの口座取引を凍結することもできたことからすると,被告脇坂の上記主張を採用することはできない。」
 (過失相殺について)「本件医療機関債の発行及び勧誘は,高齢の女性である原告に対する悪質な詐欺行為であり,被告脇坂は,それに故意に加担したとまでは認められないものの,同人には,東京都による調査や立入検査を受け,不利益処分の予告を受けながらも,その適法性に疑問も持たず,適切な措置を講じなかったという過失があり,その注意義務違反の程度は,原告不注意の程度と比べて著しく重いから,過失相殺をするのは相当でない。」

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(業者側控訴,和解)
⇒消費者法ニュース105号247頁
⇒先物取引裁判例集73巻111頁

1.日興グランダム
(東京地方裁判所平成19年11月30日判決)
未公開株商法の違法性について説得的に判示するもの 2.イージーモダンワークス
(東京地方裁判所平成22年6月28日判決)
未公開株商法における株式発行組織の責任等について 3.カンボジア開発合同会社(旧TAKE合同会社),HUMAN KNOWLEDGE(旧HK INVESTMENT),パイオニアワールド
(東京地方裁判所平成24年1月25日判決)
詐欺商法に使用された携帯電話のレンタル業者の責任を認めたもの 4.エスジーエス
(東京地方裁判所平成23年12月21日判決)
劇場型社債商法について様々な論点について説得的な判示がある 5.口座開設関与者の責任
(東京地方裁判所平成28年3月23日)
詐欺商法(ロト6詐欺)に用いられた銀行口座を開設するにあたって内職のために必要であると言われて本人確認資料等を送付し,届いた郵便物を転送するという「内職」をしていた者ら(その他の関与態様の者もある)に対し,口座開設の幇助をしている認識がなくとも,自らの行為が何らかの違法行為に使われている可能性が高いことを容易に知り得たとして損害賠償を命じた事例 6.尚未,ロングテイル
(東京高等裁判所平成28年4月20日判決)
結婚紹介サイトで知り合った女性から出資,社債・株式取得名目で金銭を交付させられた事案でデート商法としての違法性が認定された事例 7.エス・アンド・エスエンジニアリング
(東京高等裁判所平成24年10月25日判決,東京地方裁判所平成24年3月2日判決)
杜撰な1審判決を破棄したもの 8.未来ねっと
(東京地方裁判所立川支部平成24年3月22日判決)
未公開株商法において第三者の詐欺という法律構成を採用したもの 9.ミニッツカンパニー
(東京高等裁判所平成25年4月24日判決)
資金移転組織間の共同不法行為責任を肯定したもの 10.大雪山合同会社
(東京地方裁判所平成24年8月10日判決)
首謀者である会社設立行為者の責任 11.真匡会
(東京地方裁判所平成27年3月27日判決)
医療ないし医療法人に対する高齢者の高い信頼を利用して広く被害を多発させ,刑事事件にも発展した医療法人社団真匡会の医療機関債販売事案について,真匡会の代表理事長らの責任を認め,過失相殺を否定して損害賠償を命じたもの 12.ELストリーム
(東京地方裁判所平成25年11月26日判決)
未公開株式の発行会社の役員の責任を詳細な事実認定を基礎に肯定したもの 13.マリン技研
(東京地方裁判所平成24年11月15日判決)
請求が認められることが必ずしも容易ではなかった少し古い時期の未公開株発行会社の責任に関するもの 14.アグリ・ヴァンティアン
(1事件:東京地方裁判所平成26年10月16日判決,2事件:東京地方裁判所平成28年3月15日判決)
一応の実業らしきものは行われている業者が自社の未公開株を販売した事案について株式の評価額の算定が不合理であるなどとして名目的であると主張した役員らの損害賠償責任を肯定した事例 15.長浜バイオラボラトリー(DNAセキュリティー研究所)
(東京地方裁判所平成24年12月25日判決)
自社株販売型の未公開株商法について発行会社の関与を認定したもの。配当を損害から控除していない 16.エコスパートナー
(東京地方裁判所平成25年3月25日判決)
未公開株商法における資金移転行為関与者の責任 17.ダイア・アイ・コム
(東京地方裁判所平成25年3月25日判決)
未公開株商法について役員の辞任している旨の主張を排斥したもの 18.H4O
(東京高等裁判所平成24年2月29日判決,東京地方裁判所平成23年2月9日判決)
自社株販売型の未公開株商法について詳細な事実認定をして発行会社関係者の責任を肯定している 19.ランサーテクノロジー
(東京地方裁判所平成22年12月22日判決,東京高等裁判所平成23年6月8日判決)
未公開株商法に必要な道具(未公開株式,携帯電話)の提供に関与した者について,「幇助」責任を認めたもの 20.DNAソリューションほか
(東京地方裁判所平成23年1月27日判決)
自社株販売型の未公開株商法の発行会社関係者の責任についてのリーディングケース 21.田村
(東京地方裁判所平成24年1月16日判決)
未公開株の発行会社関係者の責任 22.アドメイン
(東京地方裁判所平成22年2月9日判決)
未公開株の発行会社関係者の責任について,販売行為者の行為が具体的には判明しない事案で説得的な判時をして責任を認めたもの 23.イーマーケティング
(東京地方裁判所平成23年11月30日判決)
未公開株発行会社関係者らの責任について比較的詳細な検討をしている 24.ヒューマンユニテック,ランサーテクノロジー
(東京地方裁判所平成23年2月24日判決)
未公開株商法への関与を否定していた発行会社及びその取締役らについて,調査嘱託の結果や関係証拠を比較的詳細に摘示してその関与を認定したもの 25.アルメデコム・インデックス投資事業有限責任組合
(東京地方裁判所平成23年2月23日判決)
買取仮装型社債まがい商法の社債発行会社関係者の責任 26.ランサーテクノロジー
(東京地方裁判所平成23年3月3日判決)
自社株販売型の未公開株商法の発行会社関係者の責任 27.七海ホールディングス
(東京地方裁判所平成23年2月3日判決)
自社株販売型の未公開株商法の発行会社関係者の責任 28.DNAソリューション
(東京地方裁判所平成23年2月16日判決)
自社株販売型の未公開株商法の発行会社関係者の責任 29.アドバントレード
(東京地方裁判所平成20年4月11日判決,東京高等裁判所平成20年7月31日判決)
未公開株商法の名目的代表取締役の責任。弁護士費用についての認定のあり方に疑問を呈してした控訴審の判決 30.コンチネンタル・ウェイ,フロンティア,コンチネンタル・エム・ケー・マネージメント(東京地方裁判所平成19年12月13日判決) 未公開株商法を公序良俗に反する取引であると判示している 31.日興グランダム
(東京地方裁判所平成20年6月20日判決,東京高等裁判所平成21年1月21日判決)
未公開株販売業者らの責任。原告(被害者)は業者の従業員であった 32.イージーモダンワークス
(東京地方裁判所平成21年3月18日判決)
自社株販売型の未公開株商法の発行会社関係者の責任。換価価値がないとして損益相殺を否定している 33.イー・マーケティング
(東京地方裁判所平成21年7月15日判決)
自社株販売型の未公開株商法の発行会社関係者の責任 34.新日本バイオシステムズ
(東京地方裁判所平成22年7月2日判決)
未公開株商法業者の名目的取締役について会社の実情を知らないこと自体に重過失があるとしたもの 35.植物燃料投資事業組合,エスポインベストメント
(東京地方裁判所平成22年10月29日判決)
未公開株の販売会社に株式を投資事業組合員を通じて譲渡した会社について幇助責任を認めたもの 36.マーケットトラスティ
(東京高等裁判所平成22年8月4日判決,東京地方裁判所平成22年3月26日判決)
匿名組合契約商法業者の取締役らの責任。役員責任と弁護士費用相当損害金の請求の可否 37.エイワンジャパン
(東京地方裁判所平成20年7月11日判決)
未公開株商法の名目的代表取締役の責任 38.コンチネンタル・ウェイ
(東京地方裁判所平成19年8月24日判決)
未公開株商法について名目的取締役であるとの主張を排斥したもの 39.サクセスジャパン
(東京地方裁判所平成19年5月28日判決)
投資事業組合の形態を採用して未公開株商法を行っていた業者らの責任 40.アドバントレード
(東京地方裁判所平成19年5月22日判決,東京高等裁判所平成19年11月28日判決)
未公開株の発行会社らの責任 41.さくらキャピタル
(東京地方裁判所平成19年1月31日判決)
未公開株商法業者の取締役の義務を尽くした旨の主張を排斥したもの 42.サクセスジャパン
(東京地方裁判所平成18年12月26日判決)
投資事業組合の形態を採用して未公開株商法を行っていた業者らの責任 43.ウィンザージャパン
(東京地方裁判所平成18年9月21日判決)
未公開株商法に関する初期の判決 44.アルゴインベストメント
(東京地方裁判所平成20年6月20日判決)
投資事業有限責任組合の形態を採用して未公開株商法を行っていた業者らの責任