新聞報道によると,北海道警がアリバイ会社を摘発したようである。
アリバイ会社の業務は,勤務先を知られたくない職種などに就いていることを知られることを回避するために,いわば「健全な」会社に勤務している旨を経済的利害対立のない親族などに装う限度では許容されうる可能性はあるだろう。
しかし,現在多く跋扈しているこの種業者は,これにとどまらず,本来審査が通らない者に虚偽の給与明細,源泉徴収票,課税証明書,在籍証明書などを交付して,クレジット,消費者金融,住宅ローン,不動産賃借などの契約を締結させるものであり,悪質な場合には,このように経済的状況に関して虚偽の記載をした書類を審査に供して得た借入金等を分配するよう求める業者もあるようである。
これは,詐欺罪(の共犯)に該当する極めて悪質な行為である(なお,刑法にいう「偽造」は作成名義の冒用をいい,作成名義人が虚偽の文書を作成することを指さないから,私文書偽造罪などの構成要件には該当しない。)。
今回は地方税法違反容疑であることもあって徴税実務との関係が云々されることもあるようだが,問題の本質は,経済状況に関する虚偽文書が広く出回り,適正な与信が著しく害されることになるというところにあり,また,このような重大な弊害をもたらす業態が規制なく存在しているというところにある。
電話レンタル業者,バーチャルオフィス業者など,個人の身元を隠し,あるいは偽るために用いられる業態について,どの限度まで社会的相当性のある業務として許されうるのかを速やかに検討し,それを超える業務については厳しく禁じ,業務の適性を担保する許認可制度を導入することが適切であろうと思われる。(荒井哲朗)