タマネギ列車を撮る〈第1回〉

最近は判決報告等が続いたので、今回は、ちょっとだけ趣味の話をさせて頂こうと思います。

しかも、連載もので!
ブログもとうとうここまできました。

「タマネギ列車」。

そんな列車が走っていることをみなさんはご存じですか?

鉄道に興味を持っている者ならば(もちろん自分も含む),撮り鉄ではなくとも一度は撮ってみたいと夢見る、そんな列車があります。
それが,北海道の石北本線を秋から春にかけて走る「タマネギ列車」。

こう書いても皆さんから訳が分からないという声が聞こえてきそうなので,一つ一つ説明していきましょう。

まずは,石北本線について。

石北本線とは,北海道の旭川と網走を結ぶ最果ての路線,本線とは名ばかりの単線非電化,ディーゼルカーが行きかうローカル線です。
途中の上白滝の駅は,停車する列車が上下一日一本ずつだったり,一駅区間が34.0kmあったりと(上川・上白滝間。これは在来線の中では,日本で二番目に長い。普通列車4626Dはこの一駅区間を1時間8分かけて走る。),まあ,スケールの違うローカル線です。
                           

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上白滝駅 時刻表

   

そんな,石北本線には,常紋峠と呼ばれる峠があります。

常紋峠とは,石北本線の生田原・金華間にある峠,常呂町と紋別郡にまたがることからその名がついています。
石北本線の中でも同区間は,急峻な山々の合間を縫ってレールが敷かれており,線路はカーブの連続で,羊腸の道というにふさわしい道です。
特に生田原の駅を出でからは急勾配となり,線路はS字カーブの連続,石北本線の中でも最大の難所として知られています。
ここを通る列車は,皆,「ゴゥーーー」という気動車独特のエンジンのうなり声をあげて,自転車みたいなスピードで山を登って行きます。

そして、晩秋。

それは常紋の季節となります。山々は赤や黄色に色づき,鉄道で旅する者はみなその絶景に目を奪われます。

そんな常紋峠で,鉄道好きが撮影対象とするのは,「タマネギ列車」と相場は決まっています。

石北本線の東,網走の手前にある北見市は,日本でも有数のタマネギの産地として知られています。

http://www.dekkaido.biz/yama/onion/index.html

タマネギ列車とは,正式名称ではなく,列車番号下り8071レ,上り8074レ,秋から春にかけて北見産のタマネギを旭川まで運ぶ臨時貨物列車の愛称です。
タマネギを満載した貨物はあまりに重く,機関車は一台では常紋の山々を越えることはできません。ゆえに列車の前には引く機関車(プル)を付け,後ろには押す機関車(プッシュ)を従え(名付けて「プッシュプル運転」),常紋の山越えに挑むことになります。

北海道の旬の味覚を満載して,色づく常紋の山々を越える「タマネギ列車」を撮ってみたい…。

かつて何度か常紋の山にトライしたことがあります。

しかし,今と異なりネットなどを使って十分な情報を集めることなどできない時代,地図と磁石を手に,ここだと思った撮影地に深夜から登山。
道中,熊よけのためにラジオのオールナイトニッポンを最大限の音量にして山中を徘徊し,早朝山に立つ…。
しかしながら、線路は山の影で真っ黒,絵にならない列車の写真がいくつか残りました。

後日,北海道の友人に深夜から常紋の山をうろついてきたというと,「よく命があったね」と脅かされたりしました。

常紋の失敗はその後も,心のどこかに残っていました。いつかまた行きたい…。

そんな中,
「機関車の老朽化」,「コスト削減のため,タマネギ列車廃止決定!」,
そんなニュースが目に入りました。

これがラストチャンス。
最後の失敗から10数年を経た,平成24年10月,自身の信念に反し北斗星ではなく飛行機で渡道し(笑),常紋の山に向かいました…。

次回に続く…次回は常紋峠を目指します。