豊田商事の残党の逮捕

 先日東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディングの関係者らが逮捕されたが,私も同社の事件を相当数取り扱ってきた。関連裁判例は当事務所のHPにもいくつか掲示してある。
 旧商号時代の「オービット。キャピタル・マネジメント」時代には,入院先の高齢者に押しかけて訴え取下げを迫り,弁護士を解任させるという手段(俗に,はしごを外す,と言う悪質業者の手法である。)にも遭遇したことがある。
 これについては時事通信社発の連載コラムでも紹介したことがある。同コラムは下記のようなものであった。

 「弁護士荒井哲朗を解任する」。平成17年1月下旬の朝、事務所に送信されてきたFAXを見て、慄然とした。FAXには次の日に判決の言渡しが予定されている投資被害事件の依頼者の署名があった。同じころ、裁判所には訴え取下書が提出されていた。
 彼女は上場企業の役員の妻女である。資金的余裕もあり、若いころから株式投資やマンション経営などいろいろな投資をしていた。80才になるころ、海外通貨先物オプション取引の勧誘があった。金融先物取引業の許可を得ている業者だったし、学生時代にサッカーで活躍したことを話す若い外務員の熱心さに好感を持った。ドル相場さえ見ていればそんなに大きなリスクはないという。彼女は勧誘に応じることにした。わずか6か月で全財産を預託し、最後に訪問してきた男から「これだけしか残らなかった」と言って2万9250円を渡されたとき、彼女には何が起こったのか分からなかった。
 1年強の訴訟を経て、業者の違法行為が明らかにされていった。これに危機感を強めた業者は、入院中の彼女に押しかけて弁護士を解任し、訴えを取下げさせるという暴挙に出た。訴えの取下げは軽々しく無効にすることはできない訴訟行為だから、法律が形式的に適用されればどうしようもない。私は、予定をキャンセルして即日入院中の彼女に会いに行った。うつろな表情をして、「助けて下さい」と小さな声で繰り返す。形容しがたい悲しみに囚われた。老いは、その負の部分に乗じる者らの存在によって尊厳を奪われるのだと思った。
 裁判所は、訴え取下書の効力を認めることは「著しく正義に反する」として訴え取下げの効果を認めず、損害賠償請求を認容した。裁判所は温かい法秩序の番人である。この判決は駆け出しの弁護士であった私にそう感じさせた。

 また,同社に対しては,取引履歴を報告せよという債務名義の取得,これの間接強制によって被害回復を得るという独創的手法を用いた相手でもあった。
 被害救済をする弁護士の側でも,様々な創意工夫をしないでは,確信的に違法行為を行う者らには適切に対抗できないのである。
 今回の逮捕により,組織的な詐欺商法の事実関係が明らかにされ,高齢者を狙い撃ちにする悲惨な詐欺被害が撲滅される契機となることを願う。

平成24年3月25日付関係記事はこちら。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120325/crm12032518010010-n1.htm

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