預金債権の差押えにおける取扱支店の特定の要否(6)

(続き)
(6)このように考えてくると,銀行を第三債務者として取扱支店を限定(特定)せずにする預金債権差押命令の申立は一般的に許容されるべきものであるし,この種の申立に円滑に対応するために望ましい検索事項として挙げられることが多かったという「生年月日」,「読み仮名」を「住所」・「氏名」に加えて一義的に特定している場合にはなおさらである。
 さらに,予め債権者において債権者が債務名義を有すること及び預金債権差押命令申立のために必要もしくは有用であるとし,回答がなされない場合には取扱支店を限定(特定)しないでする預金差押命令の申立をする旨記載して債務者の預金口座の存否及び取扱支店等について弁護士法23条の2に基づく照会がなされたにもかかわらず,第三債務者があえて強制執行手続を不能にするに等しい債務者の同意などを求めることによって事実上これに違法に回答しないことから取扱支店が限定(特定)されていないような場合には,「特定」を要求する趣旨である「公平」の観点に今一度立ち返って考えれば,差押債権の特定に欠けるというべきではない。
3 近時の裁判例とその評価
 静岡地下田支決平成22年8月26日が我が国で初めて全店無限定列挙方式を許容したのを皮切りに,同旨決定例が地裁レベルで散見されるようになり(静岡地下田支決平成22年8月26日消費者法ニュース86号289頁・金法1913号6頁・被害回復199頁,水戸地龍ヶ崎支決平成22年9月28日金法1913号7頁・被害回復222頁。差押債権目録の「複数の店舗に預金債権があるときは,支店番号の若い順序による。」との記載によって差押債権を特定するものである。神戸地姫路支決平成22年10月12日金法1913号8頁・被害研究228頁は,信用金庫及び農業共同組合を第三債務者とし,差押債権目録に店舗一覧表を付して,「複数の店舗に預金債権があるときは,別紙○○信用金庫店舗一覧表の店番の若い順序による。」との記載によって差押債権を特定するものである。),平成23年に入ると,高裁レベルでも同旨判断が相次いで示されるようになった(東京高決平成23年1月11日金法1918号109頁・金商1363号37頁,東京高決平成23年1月12日金法1918号118頁・金商1363号44頁(いずれも東京高裁第20民事部),東京高決平成23年3月30日金商1365号40頁・金法1922号92頁(東京高裁第12民事部),東京高決平成23年4月14日金法1926号112頁(東京高裁第19民事部),広島高決平成23年5月31日判例集未搭載,東京高決平成23年6月21日金法1926号112頁(東京高裁第15民事部),東京高決平成23年6月22日金法1926号112頁(東京高裁第22民事部),大阪高決平成23年7月1日判例集未搭載,東京高決平成23年7月20日判例集未搭載(東京高裁第4民事部)ほか。)。(続く)(荒井哲朗)

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