別に紹介した凍結預金に対して不当執行をした業者について請求異議訴訟によってそのたくらみを阻止することができたが、別の不当執行は配当事件に移行しており、不当執行を行った業者が配当を得ることとなる状況にあり、少しでも違法な利得をはく奪する必要があるものと考えた。
訴訟に至る経緯
原告はSNS型詐欺被害に遭い、送金先口座の一つにA社があり、同社に残金があったことから、仮差押を申立てた。
A社の預金債権に対しては複数の仮差押がなされていたが、原告の仮差押に先んじてスタッシュキャッシュが公正証書に基づき当該預金債権の差押えを申立てて差押命令が発令されたため、原告の仮差押は間に合わず、配当加入遮断効により、原告は配当を受けることができなかった
同配当事件については、スタッシュキャッシュに対して配当異議訴訟が提起されていたが、その帰趨に関わらず、スタッシュキャッシュに配当される部分が相当額残ってしまうことが明らかであった。
そこで、スタッシュキャッシュを債務者として上記供託金払渡請求権を仮差押した上で、スタッシュキャッシュに対し、原告の不法行為債権の侵害を理由とする損害賠償請求訴訟を提起した。
争点
公正証書に基づき預金債権の差し押さえを申し立てる行為が、他の債権者(強制執行手続で競合をしていない債権者)の権利行使を妨げたといえるか。
本件において、被告に債権侵害の故意(害意)があるといえるか、どの程度の認識をしていれば故意(害意)があるといえるか
判決
上記の争点について、「架空の本件貸金債権に基づく本件公正証書を債務名義として強制執行の申し立てをすれば、正当な権利を有する他の債権者の権利行使を妨げることは明らかであるから、被告において、本件差押命令の申し立てをすれば、他の債権者の権利行使を妨げることを認識していたと優に認定することができる」と判示して原告の損害賠償請求を認容した。
(東京地方裁判所令和6年9月27日判決) 特殊詐欺事案において、騙取金の送金先口座名義人に対して、犯行全体によって原告に生じた損害の賠償を命じた事例2. 口座提供行為者の責任の範囲
(東京地方裁判所令和6年6月6日判決) 特殊詐欺事案において、騙取金の送金先口座名義人に対して、犯行全体によって原告に生じた損害の賠償を命じた事例 3. 口座提供行為者の責任の範囲
(東京地方裁判所令和4年1月27日判決) 特殊詐欺事案において、騙取金の送金先口座の名義人の損害賠償責任を、口座への送金額に限定せず原告の被害全額について認めた事例 4.ミニッツカンパニー
(東京高等裁判所平成25年4月24日判決) 犯罪資金の連結関係のある口座名義人に犯行全体によって生じた損害の賠償を命じた事例 5.ロマンス詐欺のマッチングアプリアカウント転売者の責任
(東京地方裁判所令和6年12月20日判決) 特殊詐欺事案(ロマンス詐欺)において、マッチングアプリのアカウントを提供した者に対して、犯行全体によって原告に生じた損害の賠償を命じた事例 6.口座提供行為者の責任
(東京地方裁判所令和7年3月5日判決) 特殊詐欺事案において、紛失したキャッシュカードを悪用されたとの主張を排斥した事例 7.不当執行に対する請求異議訴訟の判決
(福岡地方裁判所令和7年5月13日判決) 凍結口座に対して支払督促を騙取してされた不当執行について債権者代位権に基づいてした請求異議が認容された事例 8.不当執行を行った業者の責任
(東京地方裁判所令和7年12月4日判決) 凍結預金に対して不当執行を行った業者に対する損害賠償請求が認容された事例














