本日,自分が担当していた事件で,無事解決がされた事件があるので,報告したいと思います。
事案は,日経225オプション取引において東日本大震災を契機として多額の損失が生じた事件です。
1 概要
取引:日経225オプション取引
特徴:東日本大震災を契機とした多額の損失に関する事件
原告:3人
・原告A:以前から自宅に出入りしていた外務員Xの勧誘で,平成4年ころから株式,投資信託等投資経験あり
・原告B,C:原告Aの紹介で,外務員Xを知り,同人を通じ,同じころから株式,投資信託等投資経験あり
被告:D社,E社(金融商品仲介業者,外務員Xが勤務する会社)
F証券会社外(D社の所属金融商品取引業者)
G証券会社(E社の所属金融商品取引業者)
2 事案
本件は,D社,E社という金融商品仲介業者の外務員の勧誘により損害を被ったとして,それら業者に加えて,その所属金融商品取引業者であるF証券会社,G証券会社らに対して損害賠償請求を行った事件でした。
①第1次取引
原告Aは外務員Xから,それまでの証券取引で被った損害を取り戻す取引があると言われ,日経225オプション取引をF証券会社で開始させられる。取引内容は(プット,コールを問わず)売り一辺倒。当初は順調に利益が出ていたので,原告Aが原告B,Cに 紹介し,外務員Xを通じて原告B,Cも日経225オプション取引を開始する(取引内容は,原告Aと同様)。
しかし,東日本大震災により,原告A,B,Cは交付金全額(数千万円単位)の損失を被るとともに,原告Aは約1600万円,原告Bは約500万円の差損が生じた。
②和解契約
その後,外務員Xから別会社のオプション取引で取り返すことを繰り返し提案され,それを信じ,原告A,Bは,差損金についてF証券会社から債権譲渡を受けた同社の関連会社と,分割払いの和解契約を締結し,支払を開始する。
③第2次取引
一方で,原告Aは,外務員Xを通じて,今度はG証券会社で日経225オプション取引を開始するが,今回の取引内容は,外務員Xが売り取引の勧誘を認められていなかったことから買い一辺倒。それにより,さらに多額の損失が生じじた。
そして,原告Aらは,和解契約に基づく支払も困難となり,当事務所へ再度相談し,受任。
3 和解内容
原告A:第1次取引:7割認容,第2次取引:6割認容
原告B:第1次取引:8割認容
原告C:第1次取引:8割認容
ベースでの和解となりました。
4 訴訟の経過
当事者3人,4つの取引,東日本大震災を契機とした多額の損失,和解契約の成否(意思表示(契約の合意)に問題はあったか)等,争点が盛りだくさんの事件でした。
本件は,原告A,B,Cの取引経験が豊富であること,第1次取引は東日本大震災を直接の原因とする多額の損失であること,和解契約に意思表示(契約の合意)に問題はないと思われること,第2次取引に関しては直前に第1取引の経験があることなどから,原告側には不利な事情も多い事件でした。
しかしながら,原告らの取引経験の質,売り一辺倒という取引内容の危険性(同取引への適合性),和解契約締結に至る経緯,第2次取引を始めるに至った経緯(外務員Xの勧誘態様,認識)等の主張を繰り返す中で,裁判所の理解を得るに至り,ほぼ当方の主張を入れる形での和解ということになりました。
尋問においては,録音テープによる弾劾が奏功するなど,立証活動でも色々と工夫をした事件でした(弾劾証拠の詳しい説明は見次先生の過去のブログを!)。
5 その他
583系電車(臨時「あおもり」号) 陣場-白沢
この電車は,高度経済成長期に開発された,583系という名の「昼夜兼行列車」。
「昼夜兼行列車」とは,昼は座席の特急列車として長距離を走り,夜はその座席が寝台のベットの変身し,寝台列車として再び長距離を走る。
例えば,昼は特急「はつかり」として上野?青森間を走り,夜は寝台特急「はくつる」として,青森-上野間を走るといった具合に。
まさに,高度経済成長期の日本のモーレツ社員が,時間を無駄にしない(させない)ために,国鉄開発陣が当時の技術の粋を結集して作ったギミック満載な車両なのです。
そして,「高度経済成長期」も「モーレツ社員」も死語になってしまった現在も,わずか1編成ですが,奇跡的に時代の荒波を乗り越えて残り,今も臨時列車として走り続けています。
今回紹介した事件も,この列車の如く「昼夜兼行」,そんな気迫で取り組んだのが良かったのかもしれませんね。