(続き)
次いで,中間確認の訴えの利益について検討する。
1 今回の判決は,回答義務があることの確認を求める中間確認の訴えをも却下した。しかしながら,確認の訴え(中間確認の訴えではなく)についても妥当することであるが,この場面で問題となっているのは,調査嘱託に係る嘱託先から裁判所になされた回答によって自らの権利をまっとうするという利益が,不法行為法上の保護を受けるべき法的利益であるか否かということではなく,「原告の法律的地位に対して被告によって加えられている不安・危険を除去するに適切か」という,いわば一段低いレベルの利益であること(利益が「侵害」されているか否かではなく,「不安が除去されるか」を検討すべき場面であるということ)には正しい理解が及ぼされなければならない(最大判平成17年9月14日判時1908号36頁・判タ1191号143頁の反対意見の中には,選挙権の確認を認め,金銭請求は棄却するべきであるとするものがあるのは,これを前提にしているものと解される。)。
2 この種の確認の訴え(中間確認の訴えではなく)についての確認の利益について,栗田隆関西大学教授は,次のとおりの検討を経て,これを肯定すべきであると論じておられる(弁護士法23条の2に即したものであるが,議論はパラレルに考えることができる。)。
「一般に,確認の利益は,(a)即時確定の利益(即時確定の必要性),(b)確認対象の適切性,(c)訴訟形式の適切性の3点から検討される。確認対象の適切性は,原告の権利や法的地位について生じた危険や不安を除去する方法として原告・被告間で原告が提示する請求(確認請求)について判決することが有効・適切であることが必要であることを意味する。今問題にしている確認請求が認容されると,照会先が自主的に弁護士会に報告することが期待できるのであるから,請求認容判決により,原告の法的地位は向上する。したがって,確認請求の適切性は肯定されるべきである。先例[8](注:大阪地判昭和62年7月20日)は,損害賠償の訴えを提起すべきであるとするが,損害賠償請求が認容されるためには,報告の義務の存在以外の要件の充足も問題となり,報告義務の存在を確定させたい原告の需要に合致しない。確認請求認容判決が確定しても,被告が任意に報告するとは限らず,原告の利益の保護手段としては弱いことは確かであるが,確認の訴えは,もともと,判決が確定すれば,紛争当事者が判決(したがって判決により確定された権利関係)を尊重することにより紛争が解決されることを前提にしている。報告義務の存否が現に争われているのであるから,即時確定の利益があることは言うまでもない。給付の訴えを提起するためには,被告が弁護士会に報告することを被告に請求する権利を原告が有していることを主張しなければならず,その請求権を否定するのであるから,給付の訴えは権利保護形式として適切ではない。被告が弁護士会に報告義務を負っていること(弁護士会が被告に対して報告請求権を有すること)が確認されれば,原告(注:被告とあるのは原告の誤りであると思われる。)の法的地位は改善されるのであるから,確認判決を得れば足り,その利益を有する。どのような場合に照会先は報告義務を負うかについてのルールを判例を通して徐々に形成することが,社会的に必要とされているのである。照会先が弁護士会に対して報告義務を負っていることを照会先と依頼者との間で確認することについて,確認の利益を認めることを妨げる社会的事情があるとも思われない。」。けだし,正論である。
なお,私が同教授に対し中間確認の訴えの場合について問うてみたところ,それには気がつかなかったが,確認の利益はより緩やかに解されるべきものであるから,当然に認められることになると思う,とのことであった。
(続く)