近時,弁護士にも仕事がないなどということがあるといわれることがある。その程度は若干誇張されている感がないではないが,無分別に人数ばかりが増加した結果であろうか,充実した弁護士としての仕事を経験することができなくなっているという話を聞く頻度は増えており,いずれにせよ,嘆かわしいことである。専門家は,自分を必要としてくれる人・事象があってこそ,専門家としての矜恃を形成・保持し得,真の専門家に育っていくのだと思うが,若い弁護士がそうでない状況におかれるのは,本当に,不幸なことである。
しかし,幸いにして(金融商品取引被害者の相談が減少しないということはそれ自体は良くないことであるが)弊所に寄せられる相談・依頼は減少の傾向にはなく,むしろ増加の一途を辿っている感がある。難事件(いろいろな意味で簡単な事件というのはないが,やはり難事件というものは厳然として存在する)も相当数ある結果,処理の限界を超えつつある。所属弁護士は皆,熱意にあふれ,努力を厭わずに弁護士という職人仕事に没頭しており,そこにはおそらく時に心地よい高揚感があるのだろうが,仕事の性質上,ストレスは尋常ではなく,件数が多いと,それはいや増し,健全でない。熟慮する機会が少なくなれば,弁護士の仕事の質も低下することにもなろう。
そこで,この度,弁護士を緊急に募集することとしたい。弊所のHPを概観していただくだけで,手がけている手続が多様であることをご理解いただけると思う。先駆的(であると思っている)な試みも多くあり,知的好奇心の旺盛な先生方の興味は尽きることがないだろう。弁護士として,なかなかにおもしろい仕事ができるのではないかと思う。法律事務所としておそらく東京地裁本庁から徒歩で最も近く,出入りする度に惚れ惚れする,公園の中に建つ煉瓦造の歴史的建造物の中に事務所があり,法廷から帰ると事務職員が団地妻の集まりのような賑やかさを以て迎えてくれる。その喧噪から(逃れたければ)逃れることのできる,セパレイトされた弁護士執務ブースも各人に用意されている。5名の所属弁護士は,いずれも気の良い人々であり,質問や相談には自らの忙しさを圧して応じてくれる(場合もある)。
できれば弊所・弊職のことをよくご存じの先生に参加していただきたいし,法曹としての相応の経験を有している先生が望ましくはある(そのような先生の場合には単なる勤務弁護士待遇とはしない)。しかし,あまり経験がなくても,弁護士という職業に対する強い熱意(持続的に努力をすることを支えるべき精神的支柱。多くの場合,それは法曹を志したときの揺るぎない「初心」だろう。)を具体的にお持ちであれば,歓迎したい。
ところで,従前から弁護士の参加の受け入れには消極的ではなかったが,いわゆる特定事務所(債務整理手続を安易な事務と考えて杜撰な大量処理をしているもの)に入ってしまった弁護士が転籍を希望してくる,「場違い筋」が相当数おられた。これらの弁護士とは価値観を共有することはなかなかに難しいものと思われるから,いわゆる特定事務所の先生方は応募を遠慮していただきたい。
ということで,複数の先生の採用・参加の受け入れをしようと思います。ご応募をお待ちしております(応募の方法はHPなどに記載してあります)。