私が弁護士を始めて,2か月ほどが経過しました。 短い期間ではありますが,様々な出来事があり,先輩弁護士達の熱心な指導の下,多くの経験を積むことができています。この記事ではそれらの中から,ひとつ心に残った経験を紹介したいと思います。
それが,「初めての解決」です。
事案としては,よくある投資まがい詐欺被害ですが,被害金の交付方法が銀行振込ではなく,現金手渡しであったため,相手方を特定する情報に乏しく,また口座凍結といった被害回復に向けた準備手段が実施できず,被害回復は容易でないと予想されていました。
しかし,受任後直ちに23条照会等もろもろの調査を行うとともに,相手方がいると思われる場所に損害賠償請求する旨の通知書を送付したところ,相手方から私に電話がかかってきました。そこで,交渉を進めていくと,相手方はこちらの様子を探りつつも,違約金や手数料等諸々を控除した額なら払っても良いなどと言ってきたのです。これを資金回収の好機と捉えた私達は,すぐさま訴状起案に着手しました。訴訟を提起することで,相手方にプレッシャーを与える効果を期待したからです。仮に和解が決裂しても,訴え提起は早ければ早いほど相手方に財産隠しの余裕を与えません。
そうして,大急ぎで訴訟の準備を終えたところ,再び相手方から電話があったので,この際,明日にでも訴えを提起する旨を伝えました。すると,続く交渉は有利に進めることができ,相手方に違約金などの主張を取り下げさせ,被害額の大部分を直ちに返金させることに成功しました。
はっきり言ってしまうと,この解決は運が良かったという面が強いことは否定できません。しかし,調査をすぐに始めなければ,通知書をすぐに作成し送らなければ,実際に訴状をすぐに書かなければ,こちらの言葉に説得力を持たせ,交渉を優位に進めることはできなかったでしょう。最後にものをいうのは運かもしれませんが,解決に向けて全力で行動することこそがその運を引き寄せたのではないかと,私は感じました。
このときに感じた行動の必要性は,初めての事件解決という思い出とともに胸に刻み,今後の指標の一つにしたいと思っています。