新人らしく、しばらくは初めてシリーズで……というつもりだったのですが,月日が経つのは早いもので,「初めての仮差押」を投稿する前に,気づけば5件(来週には6件目)の仮差押命令申立をしていました。5件は5件ともそれぞれの難しさのある事案だったのですが,結果的には全て発令にこぎ着けることができました。
そんな5件の記念すべき1回目,初めての仮差押で思ったことは,思考の瞬発力と,それを支える事前準備の重要性でした。それらは弁護士業務では広く必要なことで,ごく当たり前のことなのですが,仮差押は改めてその重要性を実感する場所だったのです。
仮差押の手続は,裁判所によってやや運用が異なるのですが,東京では必ず裁判官との面接をします。面接では,何事もなく,積むべき担保が言い渡されることもあるのですが,難しさのある事案だと,裁判官がどんどん疑問を呈してきます。通常の裁判では「次回までに反論を準備します。」といって1か月考えてから答えれば良いのですが,面接ではその場で反論しなければなりません。それが非常に難しい。しかも,判断権者である裁判官を直接説得しなければなりません。
また,当然予想されるような争点であれば,こちらも準備をしていくので反論もしやすいのですが,裁判官の中にも色々いるので,こちらが想定していなかった疑問を呈してくることもあります。
初めての面接がそうでした。多くの裁判例で認められていることだったので,裁判官もそこは突っ込まないだろう,と思っていたところを見事に突っ込まれました。その場で裁判例で認められてきた理由を考え,冷静に反論すべきだったのですが,準備していなかったところだったため一瞬思考がフリーズしてしまったのです。そこですかさず隣にいたボス弁が自分の代わりに反論をし,裁判官の説得をはじめました。よくよくボス弁と裁判官の話を聞いていると,やはりこちらの主張が正しく,裁判官にすぐさま反論できなかった自分のふがいなさを感じました。
結局その仮差押命令は主張を補充することで無事に発令されたのですが,自分は面接では役に立たず,初めての仮差押は悔しさの残るものとなってしまいました。そのため,仮差押に当たっては,裁判官の反応を複数想定した十分な事前準備をするようにし,裁判官をその場で説得するための思考の瞬発力を磨こうと,決意しました。
その後の4件の仮差押も,結果は発令成功といえ,紆余曲折を経ており,適切な面接対応ができたかというと,反省すべき点が残ります。ただ,初回と同じ轍は踏まなかったことと,実際に発令されてきたことから,今は仮差押が楽しくなってきています。短い時間で主張と証拠を揃えて,裁判官を直接,しかもその場で説得する,それは裁判のやりがいが凝縮されたような時間ではないでしょうか。
人間楽しいことの方が上達も早いですから,この調子で経験を積んでいきたいと思っています。