投資詐欺商法被害の回復のためには,請求の名宛人を多くするということが有用です。違法な商法に関与した者については,その関与が不法行為責任を構成するものである限り,損害賠償請求の名宛人とすることが十分に検討されるべきです。そうでなければ,正しい被害回復は一層困難になるでしょう。
そのような観点から当法律事務所の弁護士が担当した事件における近時の興味深い裁判例を紹介します。
・東京地判平成22年12月22日セレクト38巻288頁・消費者法ニュース87号203頁は,電話レンタルのための免許証写し提供者の責任を肯定したものです。同判決は,未公開株商法に利用されたプリペイド式のレンタル携帯電話の契約名義人(同人は知人に渡した運転免許証の写しが悪用されたと主張していました。)について,運転免許証の写しを渡すことによって,その受領者が携帯電話レンタル契約の締結をすることができ,ひいては未公開株の販売勧誘を容易にさせたということができるから,運転免許証の写しを渡すこと自体が,未公開株販売の幇助にあたるとして,共同不法行為責任を負わせたものです。近時の詐欺商法は,氏名不詳者が他人名義で詐欺商法に必要な道具(預金口座,電話番号,バーチャルオフィス)を用意して実行することが通例であり,実行行為者の責任を問うことは必ずしも容易でないところ,これら詐欺商法に必要な道具を提供した者に対して「幇助」責任を認めた点に本判決の意義があります。
・東京地判平成24年1月25日先物取引裁判例集64巻422頁・消費者法ニュース92号290頁は,携帯電話レンタル業者の責任を肯定したものです。同判決は,劇場型詐欺商法(未公開株商法)に使用された携帯電話のレンタル業者について,「レンタル携帯電話を犯罪行為に利用しようとする者は,レンタル事業者に対して提示する運転免許証等の公的証明書を偽造することは容易に想定されるのであるから,携帯電話のレンタル事業者は,借受希望者から,本人確認のために運転免許証等の公的証明書が提示された場合には,それが偽造されたものであるか否かを慎重に調査すべき高度の注意義務を課せられていると解するのが相当である」との規範を示し,免許証記載の住所が存在しないものであったり免許の取得年月日に矛盾する記載があったなどの本件事情の下では,本人確認義務に看過し得ない過失があり,詐欺行為を過失により幇助したものであるとして損害賠償を命じました。判示は現在の状況及び携帯電話不正利用防止法の改正の趣旨などを踏まえた説得的なものであり,昨今のこの種詐欺商法にレンタル電話が用いられている状況に正しく警鐘を鳴らすものといえます。これを機に,社会的相当性にそもそも乏しいものとも思われる(携帯)電話のレンタルという業態について,より適切な規制が及ぼされ,少なくとも,本人確認が適正・厳格になされるようになることが期待されるところです。
・東京地判平成24年8月10日判例時報2174号73頁は,事業実体のない会社を設立して同会社名義の預金口座を開設し,被害者からの振込先口座等を確保していた者に対し,劇場型詐欺商法における共同不法行為責任を認めたものです。近時の劇場型詐欺商法は,電話勧誘グループ,口座準備グループ,現金出金グループ,連絡調整グループ等に分かれ,それぞれのグループが各役割に特化して詐欺商法に関与するという形態をとり,全体として組織的に詐欺商法を実行しています。直接詐欺行為を行う電話勧誘グループは,偽造免許証等を利用してIP電話をレンタルし,匿名化を図ったうえで詐欺行為を行っていることから,実行行為者を特定し損害賠償を求めることは容易ではありません。他方,詐欺商法を行っている会社は登記自体は存在するもののバーチャルオフィスを利用するなど実体がなく,登記されている代表取締役も名目的代表取締役であることが多いのが実情です。そこで,名目的な代表取締役を手配して,実体のない会社を設立した者に対して損害賠償請求をしたのです。本判決は,会社設立及び口座開設行為は,本件組織的詐欺商法における重要な役割であるとしたうえで,これを行っていた被告について詳細な事実認定をして組織的な劇場型詐欺商法の共同不法行為責任を認容しています。
(なお,上記裁判例は「主な担当裁判例」のページに掲記しています)