私募ファンド取引について取引履歴等の開示を命じる間接強制決定。極めて珍しい例であると思われる。
高齢者から私募ファンドへの投資金名下に金銭を騙取する業者に対して,取引履歴の開示を求める本案訴訟を提起し,業者が請求を認諾するに至った。しかしその後も任意の開示はなく,直ちに間接強制の申立を行った。執行裁判所には開示書類の趣旨であると強弁するものとして不十分な書類が送付されるなどした。損害の算定について,いわゆる「被害金額」の消滅時効期間との比率で算定するという考え方についての意見を裁判所から求められたのに対して,「裁判所は,一応損害額を考慮に入れつつも,債務の目的や性質その他の事情を考慮して,予測される損害賠償額に拘束されることなくその裁量により債務の履行を確保するため相当と認められる金額の支払を命じうるのであり,かつ,そのような観点から支払を命じる金額を決定するべきであり,本件事案において開示請求権の間接強制のための損害金を開示請求に係る取引金額に直接的に関連させて検討することは適切でない」旨の意見書を提出するなどし,本決定を得た。
結果,被害者1人あたり1日あたり15万円の損害金が認められた。金融商品会社(まがい会社を含む)に対する取引履歴等の開示に関する間接強制決定は今までないのではないかと思われ,1日15万円(3人で45万円)という違約金も正当な理由なく取引の内容や金銭授受の履歴を開示しない業者に対して開示をさせる相当の動機となりうるものと評価する。
判決PDF(業者執行抗告)
⇒証券取引被害判例セレクト32巻154頁
⇒消費者法ニュース77号176頁,同号262頁
判決PDF(執行抗告審決定。抗告棄却,東京高等裁判所平成20年10月2日決定,確定)
⇒証券取引被害判例セレクト32巻157頁
(海外ファンド,金融商品まがい取引としての違法性)(東京高等裁判所平成23年12月7日判決) 「金融商品まがい取引」として違法性を導いたリーディングケース
2.東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディング(海外ファンド)
(東京地方裁判所平成20年9月12日決定) 私募ファンド業者に対する意表を突いた被害回復手続
3.D9
(東京高等裁判所令和5年5月17日判決、東京地方裁判所令和3年11月26日判決) 詐欺的商法をマルチの手法で伝播拡散した者(勧誘者、動画投稿者、上位者等)らの不法行為責任を認めた事例
4.ラッキーバンク
(東京地方裁判所令和4年11月14日判決) ソーシャルレンディングの被害事案において、ファンドの組成・販売を行った第2種金融商品取引業者とその役員の責任を認めた事例
5.CFS
(東京地方裁判所令和2年2月26日判決、東京高等裁判所令和3年7月19日判決) 違法な商法において主謀者以外の商法の伝播に関与した者の責任を肯定した裁判例
6.ゲインスカイ
(東京地方裁判所令和6年10月24日判決) マルチまがい商法の伝播者、上位者の責任を認めた事例
7.夢高塾
(民泊投資セミナー商法関係)(東京地方裁判所令和2年6月15日判決) 民泊投資セミナー商法の違法性と損害の範囲
8.JPB,日本プライベートバンキングコンサルタンツ
(海外ファンド,金融商品取引業者の取締役の監視監督責任のあり方)(東京高裁平成22年12月8日判決,東京地方裁判所平成22年5月28日判決) この種業者の(名目的)取締役の責任について説得的に判示している
9.ストラテジック・パートナーズ・インベストメントほか
(東京高等裁判所平成29年4月26日判決,東京地方裁判所平成28年2月18日判決,東京地方裁判所平成27年2月4日ほか) インターネットにより契約の申込みをさせていたファンド商法において,説明義務違反の違法性が認められた事例
10.ファンドシステム・インコーポレイテッド
(FX自動運用,従業員の過失による幇助責任)(東京高等裁判所平成23年12月7日判決) 「過失による幇助」による損害賠償を命じたもの
11.原野商法に関与した宅地建物取引士の責任
(東京地判平成30年10月25日,東京高判令和元年7月2日) 原野商法に関与した宅地建物取引士の責任を認めた高裁逆転判決
12.DYK consulting株式会社
(東京地方裁判所平成29年12月25日判決) セミナーを開催して詐欺的ファンドを広める商法について関係者の損害賠償責任を肯定した事例
13.東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディング,New Asia Asset Management,Mongol Asset Management(海外ファンド)
(東京地方裁判所平成24年4月24日判決) 海外ファンドについて商品自体の「不適正」さを指摘したもの
14.アイ・エス・テクノロジーほか(121ファンド関係)
(1事件:東京地方裁判所平成25年11月13日判決,東京高等裁判所平成26年7月10日判決,2事件:東京高等裁判所平成26年9月17日判決,東京地方裁判所平成25年11月28日判決) 表に出てこなかった上位関与者及び収納代行業者の責任を認めたもの
15.レクセム証券(旧商号:121証券)
(東京高等裁判所平成27年1月14日判決) 121ファンド商法について一定の関係を有していた証券会社の責任を認めたもの 16.Quess Paraya,エターナルファンド
(東京地方裁判所平成27年3月26日判決) 「セレブな雰囲気」を用いて勧誘するファンド商法について,投資を行う者に適正な損益を帰属させることを目標として組成され管理されていたものということはできず,金融商品として不適正なものであったとして首謀者以下関係者に損害賠償を命じたもの 17.バーチャルオフィス契約・電話利用契約に関する本人確認書類提供者の責任
(東京高等裁判所平成28年1月27日) 詐欺商法において用いられたバーチャルオフィス・電話利用権の契約に関する本人確認書類提供者の責任を認めた事例 18.勝部ファンド
(東京地判平成29年10月25日,東京地判平成29年11月30日) 連鎖(マルチ)取引類似の方法で勧誘された投資まがい商法の,直接の勧誘者ではない上位者の不法行為責任を正面から肯定したもの 19.携帯電話貸与者(一般個人)
(東京地方裁判所平成26年12月25日判決) 携帯電話レンタル業者ではない一般人が貸与した携帯電話が詐欺商法に用いられた事案において貸与者に過失による幇助の責任を認めた事例 20.L・B投資事業有限責任組合関係
(東京地方裁判所平成26年2月26日判決) 投資事業有限責任組合の形態を採用して未公開株商法を行っていた業者らの責任 21.ユニオン・キャピタル,ファンネル投資顧問
(東京地方裁判所平成28年7月8日) 「本件ファンドは,そもそも,顧客の資金を運用し,顧客に適正に損益を帰属させることを目的として組成されたものとはいえない」として損害賠償請求を認容した事例 22.有限会社リンク(121ファンド関係)
(東京地方裁判所平成24年4月23日判決) 中間代理店の過失を取引の荒唐無稽さから導いたもの 23.パブリックライジングジャパン(ファンド商法)
(東京地方裁判所平成24年7月9日判決) ファンドまがい商法被害事案において参考になる 24.パブリックライジングジャパン(ファンド商法)
(東京地方裁判所平成24年9月14日判決) ファンドまがい商法被害事案において参考になる 25.合同会社フィールテックインベストメント4号,一般社団法人米国IT企業投資協議会(投資事業組合商法)(東京地方裁判所平成25年2月1日判決) 投資の実態を明らかにしないことがどのような意味を持つかを正しく指摘している 26.よいルームネットワーク(探偵業者)
(東京地方裁判所平成24年11月30日判決,東京高等裁判所平成25年4月17日判決) 探偵業者による被害事案 27.恵新
(東京地方裁判所平成26年1月28日判決) 過失による幇助という法律構成を用いている 28.スペース・ワン関係
(東京高等裁判所平成26年7月11日判決,東京地方裁判所平成25年3月22日判決) ファンド商法勧誘者,加功者の責任(「勧誘」の評価) 29.あいであ・らいふ
(東京地方裁判所平成22年9月27日判決) リスク説明がされていたか否かについて,書面の表示・記載の内容を具体的・実質的に検討して判断したもの 30.アイ・ベスト
(東京地方裁判所平成23年5月27日判決) 「不動産ファンド」まがい商品の勧誘者について会社の説明を鵜呑みにして勧誘したとしても責任を免れないとしたもの 31.サンラ・ワールド(海外ファンド)
(東京高等裁判所平成23年5月26日判決) 広く被害を生んだサンラ・ワールドの商法に関するもの。これ以外は全て全額を支払うとの訴訟上の和解が成立している 32.東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディング(海外ファンド)
(東京地方裁判所平成23年5月31日判決) 私募ファンド商法被害事案 33.KCFホールディングズ,中央電算(フェリーマルチ商法)
(東京地方裁判所平成24年8月28日判決) フェリーマルチ被害事案 34.住まいと保険と資産管理
(東京地方裁判所平成24年9月26日判決) FPグループの海外投資勧誘 35.エイ,Truth Company(121ファンド関係)
(東京地方裁判所平成25年1月21日判決) 121ファンド商法の主要な代理店であった業者らの責任 36.エスペイ(121ファンド関係)
(東京高等裁判所平成24年12月20日判決,東京地方裁判所平成24年6月22日判決) 過失相殺をした1審の判決を取り消した控訴審判決 37.ハヤシファンドマネジメント,トップゲイン
(東京地方裁判所平成25年1月24日判決) ファンドまがい商法の判断枠組みを踏襲し,真実はそうでないのに,「ファンド・オブ・ファンズ」を喧伝する行為についての違法性評価を固めるもの