2.イージーモダンワークス

(東京地方裁判所平成22年6月28日判決)

 いわゆる「小菅一派」が販売行為をしていたという主張がされた銘柄の株式発行会社及びその役員らについて,株式公開準備室の設置や同名義の銀行口座を開設などから共謀があったものと認定し,取締役の辞任登記後に生じた損害についても責任を負うものとして共同不法行為責任を認めた事例

 本判決は,訴外鷲尾との共謀について,「当面上場する予定のない被告会社において,上場に向けた部門である株式公開準備室を設置したり,ましてや,株式公開準備室名義の銀行口座を開設したり,印鑑を作成する必要はないのに,被告越後はこれらに承認を与え,実際に承認に基づき開設された株式公開準備室口座は亡○と被告会社との間の本件取引に利用されているほか,被告越後において,当面上場の予定がないのに被告会社の株式が上場間近であるとして販売されていることを認識していながら,訴外鷲尾に株式の販売状況について説明を求める等したものの,それ以上格別の対策をとっていないことなどからすると,被告越後は,少なくとも,訴外鷲尾が当面上場の予定もない被告会社の株式を上場予定と告げて販売することを認めていたものといわざるを得ず,当面上場予定のない被告会社の株式を,近日中に上場予定であると偽って,不特定多数の者に販売する(一般的にこのような場合,近日中に上場されることによる価値を価格に反映させて販売するので,株式を実際の価値より高額で販売することになる。)ことについて共謀があったと認めるのが相当である。」と判示したうえ,
 取締役らの責任について,「なお,被告浦田は,亡○と被告会社との間の本件取引開始の約5か月前に同社の取締役を辞任しているものであるが,上記認定のとおり,本件不法行為の未公開株式販売スキームの構築に関与し,営業所としての実体がない東京営業所に赴任して積極的に未公開株式の売却に関わり,辞任の際にその後の被害の拡大防止について見るべき措置をとっていないことなどにかんがみると,取締役辞任後まだ日が浅く本件取引時点において共謀関係が消滅したとはいえない本件について責任は免れない。また,被告眞鍋についても,本件取引開始前に被告会社の取締役を辞任しているが,その時期は本件取引開始時期のわずか3か月前であり,被告会社の取締役として本件不法行為の未公開株式販売スキームに共謀して加わっていた以上,辞任の際にその後の被害の拡大防止について格別措置を講じたとの事実が認められない本件について責任は免れない。」と判示している。

 近時被害の顕現化が急増している「株式会社SII」(小菅・鷲尾・木村一派)による被害群に関する熟した裁判例であり,同組織が関与していると考えられる銘柄の被害事案(イー・マーケティング,ユーエスセキュリティー,ブレイネ,イー・ステージなど)についても参考になると思われる。
 また,登記簿上の退任時期によって直ちに責任が画されることは適切でなく,刑事法上の「共犯関係の離脱」などの考え方を用いて因果関係の断絶があるか否かを考えるのが適切である。本判決はこの点についても議論を活発化させることとなることが期待される。

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(業者側控訴,和解)
⇒判例時報2088号97頁
⇒証券取引被害判例セレクト38巻253頁

1.日興グランダム
(東京地方裁判所平成19年11月30日判決)
未公開株商法の違法性について説得的に判示するもの 2.イージーモダンワークス
(東京地方裁判所平成22年6月28日判決)
未公開株商法における株式発行組織の責任等について 3.カンボジア開発合同会社(旧TAKE合同会社),HUMAN KNOWLEDGE(旧HK INVESTMENT),パイオニアワールド
(東京地方裁判所平成24年1月25日判決)
詐欺商法に使用された携帯電話のレンタル業者の責任を認めたもの 4.エスジーエス
(東京地方裁判所平成23年12月21日判決)
劇場型社債商法について様々な論点について説得的な判示がある 5.サクラサイト業者の収納代行業者
(東京地判平成29年5月10日)
サクラサイト詐欺商法に収納代行業者として関与した業者らに共同不法行為責任が認められた事例 6.口座開設関与者の責任
(東京地方裁判所平成28年3月23日)
詐欺商法(ロト6詐欺)に用いられた銀行口座を開設するにあたって内職のために必要であると言われて本人確認資料等を送付し,届いた郵便物を転送するという「内職」をしていた者ら(その他の関与態様の者もある)に対し,口座開設の幇助をしている認識がなくとも,自らの行為が何らかの違法行為に使われている可能性が高いことを容易に知り得たとして損害賠償を命じた事例 7.尚未,ロングテイル
(東京高等裁判所平成28年4月20日判決)
結婚紹介サイトで知り合った女性から出資,社債・株式取得名目で金銭を交付させられた事案でデート商法としての違法性が認定された事例 8.エス・アンド・エスエンジニアリング
(東京高等裁判所平成24年10月25日判決,東京地方裁判所平成24年3月2日判決)
杜撰な1審判決を破棄したもの 9.未来ねっと
(東京地方裁判所立川支部平成24年3月22日判決)
未公開株商法において第三者の詐欺という法律構成を採用したもの 10.ミニッツカンパニー
(東京高等裁判所平成25年4月24日判決)
資金移転組織間の共同不法行為責任を肯定したもの 11.大雪山合同会社
(東京地方裁判所平成24年8月10日判決)
首謀者である会社設立行為者の責任 12.真匡会
(東京地方裁判所平成27年3月27日判決)
医療ないし医療法人に対する高齢者の高い信頼を利用して広く被害を多発させ,刑事事件にも発展した医療法人社団真匡会の医療機関債販売事案について,真匡会の代表理事長らの責任を認め,過失相殺を否定して損害賠償を命じたもの 13.ELストリーム
(東京地方裁判所平成25年11月26日判決)
未公開株式の発行会社の役員の責任を詳細な事実認定を基礎に肯定したもの 14.マリン技研
(東京地方裁判所平成24年11月15日判決)
請求が認められることが必ずしも容易ではなかった少し古い時期の未公開株発行会社の責任に関するもの 15.アグリ・ヴァンティアン
(1事件:東京地方裁判所平成26年10月16日判決,2事件:東京地方裁判所平成28年3月15日判決)
一応の実業らしきものは行われている業者が自社の未公開株を販売した事案について株式の評価額の算定が不合理であるなどとして名目的であると主張した役員らの損害賠償責任を肯定した事例 16.長浜バイオラボラトリー(DNAセキュリティー研究所)
(東京地方裁判所平成24年12月25日判決)
自社株販売型の未公開株商法について発行会社の関与を認定したもの。配当を損害から控除していない 17.エコスパートナー
(東京地方裁判所平成25年3月25日判決)
未公開株商法における資金移転行為関与者の責任 18.ダイア・アイ・コム
(東京地方裁判所平成25年3月25日判決)
未公開株商法について役員の辞任している旨の主張を排斥したもの 19.H4O
(東京高等裁判所平成24年2月29日判決,東京地方裁判所平成23年2月9日判決)
自社株販売型の未公開株商法について詳細な事実認定をして発行会社関係者の責任を肯定している 20.ランサーテクノロジー
(東京地方裁判所平成22年12月22日判決,東京高等裁判所平成23年6月8日判決)
未公開株商法に必要な道具(未公開株式,携帯電話)の提供に関与した者について,「幇助」責任を認めたもの 21.DNAソリューションほか
(東京地方裁判所平成23年1月27日判決)
自社株販売型の未公開株商法の発行会社関係者の責任についてのリーディングケース 22.田村
(東京地方裁判所平成24年1月16日判決)
未公開株の発行会社関係者の責任 23.アドメイン
(東京地方裁判所平成22年2月9日判決)
未公開株の発行会社関係者の責任について,販売行為者の行為が具体的には判明しない事案で説得的な判時をして責任を認めたもの 24.イーマーケティング
(東京地方裁判所平成23年11月30日判決)
未公開株発行会社関係者らの責任について比較的詳細な検討をしている 25.ヒューマンユニテック,ランサーテクノロジー
(東京地方裁判所平成23年2月24日判決)
未公開株商法への関与を否定していた発行会社及びその取締役らについて,調査嘱託の結果や関係証拠を比較的詳細に摘示してその関与を認定したもの 26.アルメデコム・インデックス投資事業有限責任組合
(東京地方裁判所平成23年2月23日判決)
買取仮装型社債まがい商法の社債発行会社関係者の責任 27.ランサーテクノロジー
(東京地方裁判所平成23年3月3日判決)
自社株販売型の未公開株商法の発行会社関係者の責任 28.七海ホールディングス
(東京地方裁判所平成23年2月3日判決)
自社株販売型の未公開株商法の発行会社関係者の責任 29.DNAソリューション
(東京地方裁判所平成23年2月16日判決)
自社株販売型の未公開株商法の発行会社関係者の責任 30.アドバントレード
(東京地方裁判所平成20年4月11日判決,東京高等裁判所平成20年7月31日判決)
未公開株商法の名目的代表取締役の責任。弁護士費用についての認定のあり方に疑問を呈してした控訴審の判決 31.コンチネンタル・ウェイ,フロンティア,コンチネンタル・エム・ケー・マネージメント(東京地方裁判所平成19年12月13日判決) 未公開株商法を公序良俗に反する取引であると判示している 32.日興グランダム
(東京地方裁判所平成20年6月20日判決,東京高等裁判所平成21年1月21日判決)
未公開株販売業者らの責任。原告(被害者)は業者の従業員であった 33.イージーモダンワークス
(東京地方裁判所平成21年3月18日判決)
自社株販売型の未公開株商法の発行会社関係者の責任。換価価値がないとして損益相殺を否定している 34.イー・マーケティング
(東京地方裁判所平成21年7月15日判決)
自社株販売型の未公開株商法の発行会社関係者の責任 35.新日本バイオシステムズ
(東京地方裁判所平成22年7月2日判決)
未公開株商法業者の名目的取締役について会社の実情を知らないこと自体に重過失があるとしたもの 36.植物燃料投資事業組合,エスポインベストメント
(東京地方裁判所平成22年10月29日判決)
未公開株の販売会社に株式を投資事業組合員を通じて譲渡した会社について幇助責任を認めたもの 37.マーケットトラスティ
(東京高等裁判所平成22年8月4日判決,東京地方裁判所平成22年3月26日判決)
匿名組合契約商法業者の取締役らの責任。役員責任と弁護士費用相当損害金の請求の可否 38.エイワンジャパン
(東京地方裁判所平成20年7月11日判決)
未公開株商法の名目的代表取締役の責任 39.コンチネンタル・ウェイ
(東京地方裁判所平成19年8月24日判決)
未公開株商法について名目的取締役であるとの主張を排斥したもの 40.サクセスジャパン
(東京地方裁判所平成19年5月28日判決)
投資事業組合の形態を採用して未公開株商法を行っていた業者らの責任 41.アドバントレード
(東京地方裁判所平成19年5月22日判決,東京高等裁判所平成19年11月28日判決)
未公開株の発行会社らの責任 42.さくらキャピタル
(東京地方裁判所平成19年1月31日判決)
未公開株商法業者の取締役の義務を尽くした旨の主張を排斥したもの 43.サクセスジャパン
(東京地方裁判所平成18年12月26日判決)
投資事業組合の形態を採用して未公開株商法を行っていた業者らの責任 44.ウィンザージャパン
(東京地方裁判所平成18年9月21日判決)
未公開株商法に関する初期の判決 45.アルゴインベストメント
(東京地方裁判所平成20年6月20日判決)
投資事業有限責任組合の形態を採用して未公開株商法を行っていた業者らの責任