10.詐欺的取引と裁判管轄(移送の可否)

(東京高等裁判所平成23年6月1日決定)

 東京地裁に提起した,東京に支店を置いていた詐欺的商法業者に対する損害賠償請求について,業者らが営業を廃止して関係者は現在は福岡にいるなどとして福岡地裁に移送することを求めたところ,原決定は電話勧誘などは不法行為の準備行為にすぎないから東京地裁には土地管轄がなく,衡平の観点からも福岡地裁で審理するのが相当であるとして事件を福岡地裁に移送するとの決定をした。
 これに対して即時抗告審は,約款記載の専属的管轄合意を認めず,電話での勧誘を含む一連の行為が不法行為を構成することがありうるから東京支店所在地は不法行為地である,犯罪的な取引行為によって独居老人に多大な損害を与えた可能性があることは管轄裁判所を決定する上でも斟酌されるべきであり,当事者の衡平の観点からも事件を東京地裁から福岡地裁に移送する必要はないとして原決定を取消して業者らの移送申立を却下した。
 東京で高齢者に対して詐欺商法を行ったが現在は引き払って福岡にいるから裁判をするなら福岡に来いというような申立を退けるべきことは,衡平の観点から当たり前のことである。

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(即時抗告審決定。原決定取消,確定)
⇒金融・商事判例金判SUPPLEMENTVol.33
⇒先物取引裁判例集63巻161頁
⇒消費者法ニュース89号172頁
⇒金融法務事情1947号121頁

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(原決定。被害者即時抗告)
⇒⇒先物取引裁判例集63巻151頁

1.弁護士会照会に対する報告義務
(東京高等裁判所平成22年9月29日判決ほか)
2.ソフトバンクモバイルの調査嘱託に対する回答拒否事件
(東京地方裁判所平成24年5月22日判決,東京高等裁判所平成24年10月24日判決)
3.保険証券番号不特定執行
(東京高等裁判所平成22年9月8日決定)
4.仮装離婚と財産分与の虚偽表示による無効・債権者代位による不動産移転登記抹消登記手続請求
(東京地方裁判所平成25年9月2日判決,東京高等裁判所平成26年3月18日判決)
詐欺的業者の首謀者が妻との離婚を仮装して財産分与をした事案について,離婚及び財産分与は通謀虚偽表示により無効であるとして債権者代位により居宅不動産の所有権移転登記抹消登記手続請求を認容した事例 5.預金にかかる第三者異議訴訟
(東京高等裁判所令和元年11月20日判決,東京地方裁判所令和元年6月26日判決)
第三者異議訴訟において預金が名義人に帰属すると判断された事例 6.判決確定後の被告の住所判明と更正決定
(東京地方裁判所令和元年11月28日決定)
判決確定後に被告の住所が判明した場合にこれを併記した更正決定例 7.訴えの提起における当事者の特定・住所地の記載されていない債務名義の強制執行の方法等
(東京高等裁判所平成21年12月25日判決ほか)
8.詐欺商法業者の代理人弁護士の預かり金に対する強制執行を認めた事例
(東京地判平成29年7月25日,東京高判平成30年2月21日)
9.金融商品取引業者と取引履歴の開示
(東京地方裁判所平成20年9月12日決定ほか)
10.詐欺的取引と裁判管轄(移送の可否)
(東京高等裁判所平成23年6月1日決定)
11.支店不特定執行
(東京高等裁判所平成23年3月30日決定ほか)
12.支店不特定執行(2)
(東京高等裁判所平成26年6月3日決定)
13.預金債権の時間的包括的執行
(奈良地方裁判所平成21年3月5日決定)
14.詐害行為取消訴訟
(山形地方裁判所平成19年3月9日判決)