5.リソー教育

(東京地方裁判所平成29年3月28日判決,東京高等裁判所平成29年9月25日判決)

 リソー教育は,平成21年2月期から平成26年2月期第2四半期までの約5年半にわたり有価証券報告書等の虚偽記載をしていたものであるところ,平成25年12月16日の大引け後,同社が第三者委員会の設置及び期末の配当が未定である旨発表し,平成26年2月10日,当該第三者委員会の調査結果の公表とともに過去5年間にわたる虚偽記載等の事実を公表した(なお同日が金融商品取引法21条の2第2項(現第3項)にいう「公表日」であることは争いがない。)。

 本判決は,①平成25年12月16日以前に同社株式を取得した原告らについて,原告らの損害は「平成25年12月16日付け第三者委員会設置のお知らせの発表によって,当該発表に対する市場の反応ひいてはそれに応じた株価の変動に反映され,処分時において現実化したということができる」として12月16日の終値から処分価格の差額を損害として金融商品取引法21条の2第1項に基づく損害賠償を認めた。他方で,②第三者委員会設置の発表後虚偽記載の公表前に被告株式を取得した原告については,「株価の動向が虚偽記載による影響を受けている可能性があることを認識できた」として,相当因果関係なしとして同条項に基づく損害賠償を認めず,2項推定も同様の理由により損害賠償を認めなかった。

 本判決は,平成25年12月16日付第三者委員会の設置等のお知らせに重きを置きすぎ,「公表日」以前の取得であるにもかかわらず,上記②の範囲の原告につき2項推定に基づく請求を認めなかった点で株主保護に欠ける点があるが,公表日前の株価下落でも損害との因果関係を認めた点,過失相殺,損益相殺を認めなかった点に参照価値がある。

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(双方控訴)
⇒金融・商事判例1517号23頁
⇒金融法務事情2070号74頁
⇒消費者法ニュース112号309頁
⇒証券判例セレクト53巻1頁

判決PDFAdobe_PDF_Icon1.svg(控訴棄却,業者側上告不受理により確定)
⇒金融・商事判例1530号12頁
⇒証券取引被害判例セレクト54巻1頁

1.レセプト債
(東京地判令和4年3月31日判決、東京高等裁判所令和5年11月8日判決)
「レセプト債」の証券化スキームにおいてSPC管理を受託していた会計事務所等の共同不法行為責任を認めた事例
2.大和証券
(東京地方裁判所令和4年3月15日判決)
大手証券会社である大和証券が、当時50代の主婦に対して、主婦が保有する有価証券を担保に合計9640万円の貸付けを行い(証券担保ローン)、当該証券担保ローンの借入金を原資として、仕組み債や投資信託など46銘柄の売買を繰り返し行わせた結果、全ての金融資産が失われた事案について、大和証券に対する損害賠償請求が一部認容された事例
3.静銀ティーエム証券
(東京地方裁判所平成23年2月28日判決)
銀行系証券会社によるノックイン型投資信託勧誘事案
4.アトランティック・ファイナンシャル・コーポレーション
(東京地方裁判所平成20年7月16日判決)
ロスカット・ルールに関する重要な初判断
5.リソー教育
(東京地方裁判所平成29年3月28日判決,東京高等裁判所平成29年9月25日判決)
有価証券報告書等の虚偽記載等により生じた株価下落につき,株式会社リソー教育に対し,金融商品取引法21条の2第1項に基づき,第三者委員会設置の発表前に株式を取得した株主らについて,第三者委員会設置発表前終値から処分価格の差額を損害としてその賠償を認めた事案
6.アルファエフエックス
(東京地方裁判所平成22年4月19日判決)
区分管理を怠った業者の役員らの責任に関する判決
7.アーバンコーポレイション役員ら
(東京地方裁判所平成24年6月22日)
アーバンコーポレイション事件の対役員らの判決
8.アーバンコーポレイション査定異議訴訟
(最高裁判所平成24年12月21日判決)
アーバンコーポレイション事件の対会社の判決群
9.野村證券
(東京地方裁判所平成25年7月19日判決)
仕組債の時価評価についての説明義務違反など 10.幸せwin,大橋ひかる,マネースクウェアジャパン
(東京地方裁判所平成20年10月16日判決)
情報商材業者や,これを利用して集客していた業者の違法性を肯定したもの 11.KOYO証券
(東京地方裁判所平成28年5月23日判決)
株価指数証拠金取引(くりっく株365)について説明義務違反,過当売買の勧誘等の違法性を認め,過失相殺を否定して損害賠償請求を全部認容した事例 12.SMBCフレンド証券
(東京地方裁判所平成17年7月22日判決)
日経225先物オプション取引被害事案