1.特殊詐欺の口座提供者の責任

(東京地方裁判所令和6年9月27日判決)

 SNSからLINEに誘導する投資詐欺被害事案においては、ほとんどの裁判官が口座提供者らに原告が被った損害全部の賠償を命じているのが現状であるが、多くの判決は公示送達による送達を経たり、被告の欠席により終了するなどするいわゆる調書判決によるものとなっており、対席判決はそもそもあまりなされる機会がない。

 本判決は、合議体における対席判決において「自己名義の預金口座の情報を第三者に提供する行為がおよそ通常の商取引からかい離し、犯罪につながりかねないものであることは、社会常識として一般に明らかであるところ、被告は、その主張によっても、副業をして儲けるという安易な誘いに乗って本件口座の提供を行ったものであり、その結果(犯行グループ構成員が)原告から150万円を騙取することを容易にさせているから、(犯行グループ構成員の)不法行為を幇助したものと認められる。そうすると、被告は、(犯行グループ構成員らの)原告に対する詐欺行為について、(犯行グループ構成員ら)及び他の振込先口座の提供者らと共同不法行為責任を負うと認められる。そして、原告は、(犯行グループ構成員ら)の詐欺行為により、振込送金させられた金員の総額の損害を被ったと認められる」と簡潔に示しており、参考になろう。

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1. 特殊詐欺の口座提供者の責任
(東京地方裁判所令和6年9月27日判決)
特殊詐欺事案において、騙取金の送金先口座名義人に対して、犯行全体によって原告に生じた損害の賠償を命じた事例2. 口座提供行為者の責任の範囲
(東京地方裁判所令和6年6月6日判決)
特殊詐欺事案において、騙取金の送金先口座名義人に対して、犯行全体によって原告に生じた損害の賠償を命じた事例 3. 口座提供行為者の責任の範囲
(東京地方裁判所令和4年1月27日判決)
特殊詐欺事案において、騙取金の送金先口座の名義人の損害賠償責任を、口座への送金額に限定せず原告の被害全額について認めた事例 4.ミニッツカンパニー
(東京高等裁判所平成25年4月24日判決)
犯罪資金の連結関係のある口座名義人に犯行全体によって生じた損害の賠償を命じた事例