その他ファンドまがい・マルチまがい商法等

 近時の投資詐欺商法は,まさに百花繚乱の感がありますが,大まかには,証拠金取引商法,劇場型商法,ファンド(まがい)商法,に分けられます。ここでは,ファンド商法を取り上げます。
 ファンド商法とは,いわゆるファンドへの出資金名目で金を騙取する商法であり,数百億円以上の莫大な規模の被害を生じさせる商法も相当数に上ります。不動産ファンド,健康食品,疑似通貨などに藉口するものが見られましたが,近時は,FX取引の自動売買ソフト,英国のスポーツブックなどを云々し,海外の法人を送金先などとして絡ませて莫大な被害を生じさせるものと,ただ高配当を喧伝して資金を集めて第三者に「貸付」などと称して移転して流出させてしまう比較的小規模の被害群の多発という2極化が顕著です。

 この種商法には,複数の関係者が関与するのが通例であり,訴訟追行と和解交渉を平行して行っていくのが通例です。また,一気に被害が顕現化すること,勧誘態様に個別性が小さいこともあって,集団訴訟として被害回復が図られることが多いという傾向にもあります。
 これら商法の被害回復にあたって参照される価値が高いと思われるいくつかの裁判例を紹介しておきます。
 東京高判平成23年12月7日判例タイムズ1380号138頁は,「本件各ファンドは,預け資産の流れもリスクの具体的な内容も明らかではない金融商品まがいの商品であったと断ぜざるを得」ず,「不適格商品」であるとし,その販売行為に違法性を見る構成を採用しています。このような構成は珍しいものですが,本件のような事案には実態に即した説得的な構成であると考えられます。また,なぜに「金融商品まがい取引」といえるのかについても判示されており,このような構成が採られる場合の基礎となる事実認定にも参考になるところがあります。
 ファンド商法の中間代理店であった者らの責任について,被告らがした,自分も被害者であって現に出資している,賠償責任を負うとしても自己が得た利益の限度に限られるべきであるとの主張を排斥したものとして,東京地判平成24年4月23日先物取引裁判例集66巻344頁があります。
 近時良く見られる,適当な高配当を喧伝し,分散投資をするなどと言っておきながら,結局特定の運用先に運用させており,それが失敗した(運用委託先の再委託先個人が持ち逃げをした)などとして資金の返還をしないという事案について,業者らがした,運用先が分散投資をしていると言っているのを信用した,一定期間現実に高配当を受領し続けこれを投資家にも配当していた,などとの主張を排斥したものとして東京地判平成24年7月9日消費者法ニュース94号202頁,自己の組成するファンドが,真実は複数の運用先がないのにこれがある安全なものである旨宣伝し,かつ,実態の不明なスキームであるのにこれを秘し,ファンドへの出資により恒常的に高配当を得ることができるかのように宣伝して出資者から金員を集めたのは,出資金を詐取したものといわざるを得ないと判示したものとして東京地判平成24年9月14日先物取引裁判例集66巻408頁があります。