1 悪質な劇場型投資詐欺商法の増加傾向・犯行態様の変化(悪質化・大胆化)
悪質な詐欺商法のうち,特殊詐欺と呼ばれる,いわゆる「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」は様々に形態を変えながら,一向に減少の傾向を見せません。特に利殖取引に藉口し,あるいはこれに端を発するものは,被害金額も高額にのぼることが多く,凄惨な被害を多数生じさせています。預金口座の凍結が比較的迅速になされるようになってきていることや,業者の構成員が被害者の前に自らの姿を現すことへの抵抗感を希薄化させていることなどから,「現金交付型」の被害が急激に増加しています。自らの姿を被害者の前に現すことを躊躇しなくなった大胆な加害行為者は,高齢者ら被害者の生活により深く入り込んでくることになります。年金担保ローンを組ませて年金収入を途絶えさせたり,居住用不動産を売却・担保に供させるなどして,被害者となった高齢者の生活を決定的に破壊してしまうほどの被害を与えるという事案もしばしば見られるようになり,犯行態様は悪質化の一途を辿っています。
2 劇場型投資詐欺被害の類型
悪質な投資詐欺商法の代名詞であり,現在様々な派生的商法を生み出す源となっているのは,未公開株商法でした。未公開株商法とは,非上場株式を上場間近であるなどとして客観的価値から著しく乖離する高い価格で売りつける商法です。この商法には,未公開株商法のブローカーの販売部隊群に,振り込め詐欺を行っていた者らが参入し,「劇場型」被害と呼ばれる,多数人が関係者として登場する類型が圧倒的多数となっています。高値で買い取るなどと言う買取仮装業者が登場する「買取仮装型」や,以前に遭っていた詐欺被害の回復ができると称する「被害回復型」など,その手口の流行の変遷にはめまぐるしいものがあります。売りつけられるモノも数年前までは株券が圧倒的多数でしたが,(おおよその出現の順序に従って紹介すると)社債券,社員権,イラクディナールなどの我が国でほとんど流通のない通貨,リゾート会員権,老人ホームの利用権,水源地の持ち分(らしいモノ),医療機関債,海外の不動産(の持分らしきもの),カラオケ著作権など,多様になっています。振込先口座の凍結を嫌って,現金を手渡しで交付させる「現金交付型」被害も顕著な増加傾向にあり,レターパックなどで現金を送付させるという手口も急増しています。
3 未公開株商法等の違法性,役員・従業員らの責任
未公開株商法の違法性の本質は,無価値のものをあたかも価値のあるものとして,また,今後その価値がより一層上がるものとして販売するところにありますが,未公開株商法においては「対価の不均衡」は推定されるべき事柄であり,仮にそうでないというのであればそれは業者が反証するべき事柄でしょう。東京地判平成19年11月30日判例時報1999号142頁は,旧証券取引法およびグリーンシート銘柄規制の趣旨をより詳細に指摘したうえで,「(未公開株商法業者の)代表取締役又は取締役として同社の営業に関与していたと認められる被告らとしては,本件未公開株の販売価格が正当なものであったことを積極的に立証しない限り,本件取引当時における本件未公開株の正当な価格は,もともとその代金額を大きく下回るものであり,その販売価格は,顧客がそれを正当な価格であると誤信することを前提とした詐欺商法によるものであったことが推認されるというべきである」と判示しています。
数年前からは自社株式を発行するという形態が蔓延しましたが,これらについても,売買対象とされた株式がグリーンシート銘柄ではなく正当な価格に関する情報を得にくい未公開株式であること,同銘柄を積極的に購入する動機を生じるような事情はうかがわれないこと,結果として客観的価値評価が困難な未公開株式をその情報を入手する能力のない原告に対してその価値を大きく上回る価格で譲渡されていることから,会社側で販売が正当なものであったことを立証しない限り,取引時における株式の正当な価値を下回るものであり,その販売価格は顧客がこれを正当と誤信することを前提とした詐欺商法によるものであることが推認されるとして,発行会社及び役員らに対して,不法行為及び会社法上の責任を認めるのが裁判例の大勢です(東京地判平成23年1月27日証券取引被害判例セレクト(セレクト)39巻105頁・消費者法ニュース87号208頁,東京地判平成23年2月3日セレクト39巻116頁,東京地判平成23年2月16日セレクト39巻132頁・消費者法ニュース88号318頁,ほか。)。詳細な事実認定をして発行会社の関与を認定し,組織的に勧誘・販売が行われていたとして,発行会社及び役員らに対して,不法行為及び会社法上の責任を認めた裁判例として東京地判平成23年2月9日セレクト39巻124頁,調査嘱託の結果や関係証拠を比較的詳細に摘示し未公開株商法への関与を否定していた発行会社及びその取締役らの関与を認定して損害賠償を命じた東京地判平成23年2月24日先物取引裁判例集64巻391頁・消費者法ニュース88号320頁なども参考になるでしょう。
劇場型社債販売商法については,東京地判平成23年12月21日先物取引裁判例集65巻261頁が,社債発行会社の責任の成否,役員らの監視監督の可能性,役員の辞任登記の真偽などこの種事例に多く見られる争点について説得的な判示をしています。
その余の商法についても,「無価値性」ということから,違法性を基礎付けることは比較的容易でしょう。むしろ困難なのは単に販売業者に勝訴することではなく,より広い相手に責任追及をして現実の被害回復に結びつけることです。
(なお,上記裁判例は「主な担当裁判例」のページに掲記しています)
数年前からは自社株式を発行するという形態が蔓延しましたが,これらについても,売買対象とされた株式がグリーンシート銘柄ではなく正当な価格に関する情報を得にくい未公開株式であること,同銘柄を積極的に購入する動機を生じるような事情はうかがわれないこと,結果として客観的価値評価が困難な未公開株式をその情報を入手する能力のない原告に対してその価値を大きく上回る価格で譲渡されていることから,会社側で販売が正当なものであったことを立証しない限り,取引時における株式の正当な価値を下回るものであり,その販売価格は顧客がこれを正当と誤信することを前提とした詐欺商法によるものであることが推認されるとして,発行会社及び役員らに対して,不法行為及び会社法上の責任を認めるのが裁判例の大勢です(東京地判平成23年1月27日証券取引被害判例セレクト(セレクト)39巻105頁・消費者法ニュース87号208頁,東京地判平成23年2月3日セレクト39巻116頁,東京地判平成23年2月16日セレクト39巻132頁・消費者法ニュース88号318頁,ほか。)。詳細な事実認定をして発行会社の関与を認定し,組織的に勧誘・販売が行われていたとして,発行会社及び役員らに対して,不法行為及び会社法上の責任を認めた裁判例として東京地判平成23年2月9日セレクト39巻124頁,調査嘱託の結果や関係証拠を比較的詳細に摘示し未公開株商法への関与を否定していた発行会社及びその取締役らの関与を認定して損害賠償を命じた東京地判平成23年2月24日先物取引裁判例集64巻391頁・消費者法ニュース88号320頁なども参考になるでしょう。
劇場型社債販売商法については,東京地判平成23年12月21日先物取引裁判例集65巻261頁が,社債発行会社の責任の成否,役員らの監視監督の可能性,役員の辞任登記の真偽などこの種事例に多く見られる争点について説得的な判示をしています。
その余の商法についても,「無価値性」ということから,違法性を基礎付けることは比較的容易でしょう。むしろ困難なのは単に販売業者に勝訴することではなく,より広い相手に責任追及をして現実の被害回復に結びつけることです。
(なお,上記裁判例は「主な担当裁判例」のページに掲記しています)
誰を信じればいいのか分からない ?劇場型社債詐欺商法の蔓延?
平成22年1月,一人暮らしの女性のところにSという会社の社債の購入を勧誘するパンフレットが送られてきた。1口10万円で,年12パーセントの利息が付くという。彼女は関心を持たずに放置していたが,あちこちからSの社債を買いたいという電話がかかってくるようになった。1口30万円で買いたいという。金融庁や国民生活センターを連想させる名称を名乗って被害調査をしているという電話もかかってくる。パンフレットが送られてきていないかと聞くので社名を告げると,「Sなら大丈夫だ,当局としても優良企業だと考えている,あそこの社債を買えるなんて奥さんは運が良い,本官も職業上の制約がなければ是非とも欲しいところだ」などというのである。ばかばかしい話だが毎日毎日同じような電話がかかってくると,「ひょっとしたら」という思いも頭をもたげてくる。
うっかりその気になって100口買ってしまったところ,「買取屋」は,120口でなければ買い取れないなどという。さらに200万円を出して120口にして「買取屋」に電話をすると,150口分でないと買い取れないといい出し,話が違うじゃないかと問い詰めたり,もうお金はないとすがりつくと,「あんたのせいで150口も買いたいという大口顧客との契約が潰れてしまう,どうしてくれるんだ」などと怒り出す始末である。
途方に暮れていると,「NPO法人」から被害救済をするから金を出せという電話がかかってくるようになり,挙げ句には法律事務所を名乗る者からも金を払えなどという電話がかかってくる。そのうちSや「買取屋」には電話も繋がらない状態になる。
こういう,「次々社債等販売商法」,「劇場型社債等販売商法」とも呼ぶべき「振り込め詐欺」の亜流のようなものが急激に増えている。こんなものは「投資」の名に値しない詐欺商法であるが,「投資」と「詐欺商法」の区別は誰でもいつでも簡単にできるというものではない。「詐欺には引っかからない」と自負していた人が老後の生活資金を奪われてしまったという相談が,毎日のようによせられている。
うっかりその気になって100口買ってしまったところ,「買取屋」は,120口でなければ買い取れないなどという。さらに200万円を出して120口にして「買取屋」に電話をすると,150口分でないと買い取れないといい出し,話が違うじゃないかと問い詰めたり,もうお金はないとすがりつくと,「あんたのせいで150口も買いたいという大口顧客との契約が潰れてしまう,どうしてくれるんだ」などと怒り出す始末である。
途方に暮れていると,「NPO法人」から被害救済をするから金を出せという電話がかかってくるようになり,挙げ句には法律事務所を名乗る者からも金を払えなどという電話がかかってくる。そのうちSや「買取屋」には電話も繋がらない状態になる。
こういう,「次々社債等販売商法」,「劇場型社債等販売商法」とも呼ぶべき「振り込め詐欺」の亜流のようなものが急激に増えている。こんなものは「投資」の名に値しない詐欺商法であるが,「投資」と「詐欺商法」の区別は誰でもいつでも簡単にできるというものではない。「詐欺には引っかからない」と自負していた人が老後の生活資金を奪われてしまったという相談が,毎日のようによせられている。
4 現実の被害回復のための投資詐欺商法加功者への責任追及
投資詐欺商法被害の回復のためには,請求の名宛人を多くするということが有用です。違法な商法に関与した者については,その関与が不法行為責任を構成するものである限り,損害賠償請求の名宛人とすることが十分に検討されるべきです。そうでなければ,正しい被害回復は一層困難になるでしょう。
そのような観点から当法律事務所の弁護士が担当した事件における近時の興味深い裁判例を紹介します。
・東京地判平成22年12月22日セレクト38巻288頁・消費者法ニュース87号203頁は,電話レンタルのための免許証写し提供者の責任を肯定したものです。同判決は,未公開株商法に利用されたプリペイド式のレンタル携帯電話の契約名義人(同人は知人に渡した運転免許証の写しが悪用されたと主張していました。)について,運転免許証の写しを渡すことによって,その受領者が携帯電話レンタル契約の締結をすることができ,ひいては未公開株の販売勧誘を容易にさせたということができるから,運転免許証の写しを渡すこと自体が,未公開株販売の幇助にあたるとして,共同不法行為責任を負わせたものです。近時の詐欺商法は,氏名不詳者が他人名義で詐欺商法に必要な道具(預金口座,電話番号,バーチャルオフィス)を用意して実行することが通例であり,実行行為者の責任を問うことは必ずしも容易でないところ,これら詐欺商法に必要な道具を提供した者に対して「幇助」責任を認めた点に本判決の意義があります。
・東京地判平成24年1月25日先物取引裁判例集64巻422頁・消費者法ニュース92号290頁は,携帯電話レンタル業者の責任を肯定したものです。同判決は,劇場型詐欺商法(未公開株商法)に使用された携帯電話のレンタル業者について,「レンタル携帯電話を犯罪行為に利用しようとする者は,レンタル事業者に対して提示する運転免許証等の公的証明書を偽造することは容易に想定されるのであるから,携帯電話のレンタル事業者は,借受希望者から,本人確認のために運転免許証等の公的証明書が提示された場合には,それが偽造されたものであるか否かを慎重に調査すべき高度の注意義務を課せられていると解するのが相当である」との規範を示し,免許証記載の住所が存在しないものであったり免許の取得年月日に矛盾する記載があったなどの本件事情の下では,本人確認義務に看過し得ない過失があり,詐欺行為を過失により幇助したものであるとして損害賠償を命じました。判示は現在の状況及び携帯電話不正利用防止法の改正の趣旨などを踏まえた説得的なものであり,昨今のこの種詐欺商法にレンタル電話が用いられている状況に正しく警鐘を鳴らすものといえます。これを機に,社会的相当性にそもそも乏しいものとも思われる(携帯)電話のレンタルという業態について,より適切な規制が及ぼされ,少なくとも,本人確認が適正・厳格になされるようになることが期待されるところです。
・東京地判平成24年8月10日判例時報2174号73頁は,事業実体のない会社を設立して同会社名義の預金口座を開設し,被害者からの振込先口座等を確保していた者に対し,劇場型詐欺商法における共同不法行為責任を認めたものです。近時の劇場型詐欺商法は,電話勧誘グループ,口座準備グループ,現金出金グループ,連絡調整グループ等に分かれ,それぞれのグループが各役割に特化して詐欺商法に関与するという形態をとり,全体として組織的に詐欺商法を実行しています。直接詐欺行為を行う電話勧誘グループは,偽造免許証等を利用してIP電話をレンタルし,匿名化を図ったうえで詐欺行為を行っていることから,実行行為者を特定し損害賠償を求めることは容易ではありません。他方,詐欺商法を行っている会社は登記自体は存在するもののバーチャルオフィスを利用するなど実体がなく,登記されている代表取締役も名目的代表取締役であることが多いのが実情です。そこで,名目的な代表取締役を手配して,実体のない会社を設立した者に対して損害賠償請求をしたのです。本判決は,会社設立及び口座開設行為は,本件組織的詐欺商法における重要な役割であるとしたうえで,これを行っていた被告について詳細な事実認定をして組織的な劇場型詐欺商法の共同不法行為責任を認容しています。
(なお,上記裁判例は「主な担当裁判例」のページに掲記しています)
・東京地判平成22年12月22日セレクト38巻288頁・消費者法ニュース87号203頁は,電話レンタルのための免許証写し提供者の責任を肯定したものです。同判決は,未公開株商法に利用されたプリペイド式のレンタル携帯電話の契約名義人(同人は知人に渡した運転免許証の写しが悪用されたと主張していました。)について,運転免許証の写しを渡すことによって,その受領者が携帯電話レンタル契約の締結をすることができ,ひいては未公開株の販売勧誘を容易にさせたということができるから,運転免許証の写しを渡すこと自体が,未公開株販売の幇助にあたるとして,共同不法行為責任を負わせたものです。近時の詐欺商法は,氏名不詳者が他人名義で詐欺商法に必要な道具(預金口座,電話番号,バーチャルオフィス)を用意して実行することが通例であり,実行行為者の責任を問うことは必ずしも容易でないところ,これら詐欺商法に必要な道具を提供した者に対して「幇助」責任を認めた点に本判決の意義があります。
・東京地判平成24年1月25日先物取引裁判例集64巻422頁・消費者法ニュース92号290頁は,携帯電話レンタル業者の責任を肯定したものです。同判決は,劇場型詐欺商法(未公開株商法)に使用された携帯電話のレンタル業者について,「レンタル携帯電話を犯罪行為に利用しようとする者は,レンタル事業者に対して提示する運転免許証等の公的証明書を偽造することは容易に想定されるのであるから,携帯電話のレンタル事業者は,借受希望者から,本人確認のために運転免許証等の公的証明書が提示された場合には,それが偽造されたものであるか否かを慎重に調査すべき高度の注意義務を課せられていると解するのが相当である」との規範を示し,免許証記載の住所が存在しないものであったり免許の取得年月日に矛盾する記載があったなどの本件事情の下では,本人確認義務に看過し得ない過失があり,詐欺行為を過失により幇助したものであるとして損害賠償を命じました。判示は現在の状況及び携帯電話不正利用防止法の改正の趣旨などを踏まえた説得的なものであり,昨今のこの種詐欺商法にレンタル電話が用いられている状況に正しく警鐘を鳴らすものといえます。これを機に,社会的相当性にそもそも乏しいものとも思われる(携帯)電話のレンタルという業態について,より適切な規制が及ぼされ,少なくとも,本人確認が適正・厳格になされるようになることが期待されるところです。
・東京地判平成24年8月10日判例時報2174号73頁は,事業実体のない会社を設立して同会社名義の預金口座を開設し,被害者からの振込先口座等を確保していた者に対し,劇場型詐欺商法における共同不法行為責任を認めたものです。近時の劇場型詐欺商法は,電話勧誘グループ,口座準備グループ,現金出金グループ,連絡調整グループ等に分かれ,それぞれのグループが各役割に特化して詐欺商法に関与するという形態をとり,全体として組織的に詐欺商法を実行しています。直接詐欺行為を行う電話勧誘グループは,偽造免許証等を利用してIP電話をレンタルし,匿名化を図ったうえで詐欺行為を行っていることから,実行行為者を特定し損害賠償を求めることは容易ではありません。他方,詐欺商法を行っている会社は登記自体は存在するもののバーチャルオフィスを利用するなど実体がなく,登記されている代表取締役も名目的代表取締役であることが多いのが実情です。そこで,名目的な代表取締役を手配して,実体のない会社を設立した者に対して損害賠償請求をしたのです。本判決は,会社設立及び口座開設行為は,本件組織的詐欺商法における重要な役割であるとしたうえで,これを行っていた被告について詳細な事実認定をして組織的な劇場型詐欺商法の共同不法行為責任を認容しています。
(なお,上記裁判例は「主な担当裁判例」のページに掲記しています)
高齢者の社会問題への「意識」を嗤う ?エコ関連投資被害?
「社会的責任投資」という言葉がある。企業の社会的責任の履行状況によって投資を決めることを意味し,古くは教会が反教義的産業に投資しないという姿勢を示したことに始まり,ベトナム戦争時には兵器等関連産業に投資をしないことによって反戦運動に参加する意味合いをもって広まった。途上国の商品を中間マージンのない態様で売買しようというフェアトレード,環境に配慮した消費生活行動をしようという環境配慮型行動と併せて,いわゆる「社会的価値行動」と呼ばれる行動群であり,市民が消費行動を通じて積極的に社会参加をしていこうという「消費者市民社会」における消費者行動の中でも大きな意義を持つものであるなどといわれることがあり,特に北欧諸国では広く社会に浸透しているとされ,我が国においても,市民の社会参加のあり方の一つとして関心が高まっている。
しかし,投資を行うことが社会的責任を果たすことに繋がるというのは,誤った強調のされ方をすることがあるし,社会に貢献したいという健全な欲求を持つ一般市民がその意識故に詐欺的被害に遭うきっかけともなることがある。ここ1,2年の間に,廃プラスチックから油を作り出す事業をしている会社の株式を買わないかとか,酸素供給マシーンをホテルにレンタルする事業をしている会社に投資するファンドに出資しないかとか,二酸化炭素の排出権価格を差金決済指標にして先物取引類似取引をしてみないかとかといった,「環境問題」に関連付けた投資勧誘が急激に増加しているのである。現在もっとも被害の多い詐欺商法は未公開株商法であるが,その対象「銘柄」のほとんどがエコ,環境問題に関連する事業を行っていると称する組織が発行したものになっている。
エコにせよその他の社会的価値にせよ,それが投資の話と結びつくときには,高邁な意識とは無縁の甘い利益の話に墜ちることが往々にしてある。環境問題への意識は投資を通じて示されるのが健全であるとは思われない。一般市民が「投資」という形を取って社会参加・社会貢献をしようとするときには,「社会参加の意識」がリスク判断を曇らせていないかを冷静に考え直してみる必要がある。
しかし,投資を行うことが社会的責任を果たすことに繋がるというのは,誤った強調のされ方をすることがあるし,社会に貢献したいという健全な欲求を持つ一般市民がその意識故に詐欺的被害に遭うきっかけともなることがある。ここ1,2年の間に,廃プラスチックから油を作り出す事業をしている会社の株式を買わないかとか,酸素供給マシーンをホテルにレンタルする事業をしている会社に投資するファンドに出資しないかとか,二酸化炭素の排出権価格を差金決済指標にして先物取引類似取引をしてみないかとかといった,「環境問題」に関連付けた投資勧誘が急激に増加しているのである。現在もっとも被害の多い詐欺商法は未公開株商法であるが,その対象「銘柄」のほとんどがエコ,環境問題に関連する事業を行っていると称する組織が発行したものになっている。
エコにせよその他の社会的価値にせよ,それが投資の話と結びつくときには,高邁な意識とは無縁の甘い利益の話に墜ちることが往々にしてある。環境問題への意識は投資を通じて示されるのが健全であるとは思われない。一般市民が「投資」という形を取って社会参加・社会貢献をしようとするときには,「社会参加の意識」がリスク判断を曇らせていないかを冷静に考え直してみる必要がある。
5 被害回復例
加害者側が任意の賠償をしてくる例など,迅速に解決する例も一定数あるにはありますが(現金交付型などは現場で詐欺商法業者の身柄を確保するなどして短期間のうちに被害回復をなした例もあります),そうならない例が増えつつある感があることは否めません。早期の解決ができない場合には,根気強く詐欺商法業者を追い詰めていくほかありません。
最近の例では,80歳を超えた独居高齢者が7000万円の巨額の未公開株詐欺商法被害に遭った事件で,7000万円全額に加えて,弁護士費用相当損害金及び遅延損害金についても回収できた事例があります。未公開株商法被害事件で7000万円もの巨額の被害が全部回復できたというのは,そうそうないことです。警察との連携,かたくなであった金融機関の協力の取り付け,何らかの情報を得た時に間髪を置かずにした何回もの,対象を変えた仮差押手続,迅速かつ関係者を広く相手方とする訴訟の提起,その主張立証の内容とスピード,そこにおける無意味に頑固な業者側代理人への幾度もの働きかけ,関連事件係属裁判所に対する意見の具申,また別の関連事件への補助参加人としての参加,そこでの従前主張とは全く観点の違う主張の提出による係属裁判所の審理の迅速化などといったことを試み,さらに相手方(黒幕)代理人とのぎりぎりの折衝などが相まって奏功したものと思います。ある場面では運も良かったといえるでしょう。
また,ランサーテクノロジーという,広く未公開株被害を生んだ「銘柄」があり,この種被害の例に漏れず,なかなか実態がつかめず,勝訴判決を得た後もなかなか現実の被害回復を見ないまま日時が経過していました。ところが,およそ1000万円の被害(及び100万円の弁護士費用相当損害金)の全部について近時被害回復を完了することができました。その方法はここで開陳しても仕方がありませんが(現在同じ手続が奏功するとは思われません。),王道の訴訟からトリッキーな手続まで,色々と試みました。尊敬している裁判官と膝をつき合わせて議論し,有益な示唆を得ることもありました。依頼者は高齢の女性でしたが,他に資産がないわけではなく,おっとりとした性格の淑女であり,被害回復にはいわばリラックスして臨むことのできる人でした。そういう事件でも,当たり前であるが,我々は淡々と手続を続けるわけですが,運も味方してくれました。平成21年4月に相談に来られた方ですので,4年弱の年月を費やしたことになります。改めて,被害回復手続の困難さが思い出されますが,様々な工夫を凝らして被害回復を志向し続けることの大切さも改めて感じた事件でした。そうしてはじめて,運もこちらを向くものでしょう。
株式会社クリーンエネルギーという銘柄の社債詐欺事件でも,被害額に弁護士費用相当金・遅延損害金まで加えた額の回収に成功しました。この事件は被害金を口座に振り込ませるタイプだったので,担当弁護士は受任後に即座に振込先口座を凍結するとともに,口座の調査を行うところから始めました。すると,複数の口座に凍結された資金が残っていることが判明したのですが,それには振込先の口座名義人が有する別銀行の口座からの資金移転先についての資金移転元口座などといった,とても一筋縄ではいかない複雑な関係性の口座が多数ありました。そのような口座からの回収はあまり聞かないことであり,担当弁護士にとっても初めての例でした。しかし,時機に応じた各種手続(仮差押,銀行に対する債権者代位権の行使,訴え提起とともにする調査嘱託で行う被告の特定,強制執行対象を限定する和解等,多岐に渡ります。)を波状的に行ったことが,全額回収へとつながりました。ちょうどこの手続を進めている中で,当法律事務所の弁護士が同種の困難な別事件が高等裁判所で逆転勝訴判決(東京高判平成25年4月24日先物取引裁判例集69巻231頁)を得て,その高裁の判断をこの事件でも引用することができたという点も大きく影響したように思います。このように,多数の事件を取り扱っていると,事件同士がノウハウを高めてくれるということが良くあります。こういった良い解決は,次のより良い解決へとつながっていくものですから,被害回復に当たる弁護士には,様々なチャレンジを続けていくことが世の中全体のためにも大切だと思います。
最近の例では,80歳を超えた独居高齢者が7000万円の巨額の未公開株詐欺商法被害に遭った事件で,7000万円全額に加えて,弁護士費用相当損害金及び遅延損害金についても回収できた事例があります。未公開株商法被害事件で7000万円もの巨額の被害が全部回復できたというのは,そうそうないことです。警察との連携,かたくなであった金融機関の協力の取り付け,何らかの情報を得た時に間髪を置かずにした何回もの,対象を変えた仮差押手続,迅速かつ関係者を広く相手方とする訴訟の提起,その主張立証の内容とスピード,そこにおける無意味に頑固な業者側代理人への幾度もの働きかけ,関連事件係属裁判所に対する意見の具申,また別の関連事件への補助参加人としての参加,そこでの従前主張とは全く観点の違う主張の提出による係属裁判所の審理の迅速化などといったことを試み,さらに相手方(黒幕)代理人とのぎりぎりの折衝などが相まって奏功したものと思います。ある場面では運も良かったといえるでしょう。
また,ランサーテクノロジーという,広く未公開株被害を生んだ「銘柄」があり,この種被害の例に漏れず,なかなか実態がつかめず,勝訴判決を得た後もなかなか現実の被害回復を見ないまま日時が経過していました。ところが,およそ1000万円の被害(及び100万円の弁護士費用相当損害金)の全部について近時被害回復を完了することができました。その方法はここで開陳しても仕方がありませんが(現在同じ手続が奏功するとは思われません。),王道の訴訟からトリッキーな手続まで,色々と試みました。尊敬している裁判官と膝をつき合わせて議論し,有益な示唆を得ることもありました。依頼者は高齢の女性でしたが,他に資産がないわけではなく,おっとりとした性格の淑女であり,被害回復にはいわばリラックスして臨むことのできる人でした。そういう事件でも,当たり前であるが,我々は淡々と手続を続けるわけですが,運も味方してくれました。平成21年4月に相談に来られた方ですので,4年弱の年月を費やしたことになります。改めて,被害回復手続の困難さが思い出されますが,様々な工夫を凝らして被害回復を志向し続けることの大切さも改めて感じた事件でした。そうしてはじめて,運もこちらを向くものでしょう。
株式会社クリーンエネルギーという銘柄の社債詐欺事件でも,被害額に弁護士費用相当金・遅延損害金まで加えた額の回収に成功しました。この事件は被害金を口座に振り込ませるタイプだったので,担当弁護士は受任後に即座に振込先口座を凍結するとともに,口座の調査を行うところから始めました。すると,複数の口座に凍結された資金が残っていることが判明したのですが,それには振込先の口座名義人が有する別銀行の口座からの資金移転先についての資金移転元口座などといった,とても一筋縄ではいかない複雑な関係性の口座が多数ありました。そのような口座からの回収はあまり聞かないことであり,担当弁護士にとっても初めての例でした。しかし,時機に応じた各種手続(仮差押,銀行に対する債権者代位権の行使,訴え提起とともにする調査嘱託で行う被告の特定,強制執行対象を限定する和解等,多岐に渡ります。)を波状的に行ったことが,全額回収へとつながりました。ちょうどこの手続を進めている中で,当法律事務所の弁護士が同種の困難な別事件が高等裁判所で逆転勝訴判決(東京高判平成25年4月24日先物取引裁判例集69巻231頁)を得て,その高裁の判断をこの事件でも引用することができたという点も大きく影響したように思います。このように,多数の事件を取り扱っていると,事件同士がノウハウを高めてくれるということが良くあります。こういった良い解決は,次のより良い解決へとつながっていくものですから,被害回復に当たる弁護士には,様々なチャレンジを続けていくことが世の中全体のためにも大切だと思います。