昨日(東京地判平成24年3月1日),先物取引被害の判決があった。被害額は6000万円を超えるものであるが,先物業者は1億円近い手数料収入を得ており,これにより損害が人為的に生じさせられているという,旧態依然とした客殺し商法の典型のような事案であった。
取引の客観的履歴から無意味な反復売買がされていることが明らかであり,違法性は動かしがたいものと考えていたが,法人名義での取引であること,代表者は先行する先物取引の経験(被害の体験)があること,金融商品に関連する書籍の執筆をしていることなどから,一定程度の過失相殺がなされるかもしれないと予測された(事案の悪質性からすれば過失相殺が否定されるべき事案であると考えられるが,この点は措く)。
判決は適合性原則違反,反復売買の違法を認め(直し取引について「既存建玉を仕切ることによって損失を発生させ,その後に同一ポジションの建玉を行うといういわゆる損切り直しなど,合理的な説明が困難なものも含まれている」,両建て取引について「当初から売り玉と買い玉を同時に仕切るつもりで両建てをするのは明らかに不合理であるから,両建ての各建玉が同時に仕切られた場合には,特段の事情がない限り,委託手数料稼ぎを目的とした違法なものというべきであ」る,「同時に又は短時間のうちに両建てがされる場合も,その手法の性質上,特段の事情がない限り同様の目的とした(ママ)違法なものというべきである」と判示している。),故意の不法行為であるとまで認定したが,いわゆる一体的不法行為構成を採ることとの均衡などから,4割の過失相殺をした。弁護士費用相当損害金や遅延損害金を加えると実損害額の73%程度の認容額となり,訴訟の途中での和解の勧試の際に出た割合(必ずしも裁判所案として出された数字ではなかったが,被告に検討を求められた数字)に近い結果となっている。