東京高裁は,本日(平成24年4月27日)付で,
不動産強制競売手続においていわゆる無剰余通知が発せられ,同手続が取り消されることが必至となった場合に,市場価格を基準とすれば無剰余の状況にはなく,強制競売手続が取り消されたことを奇貨として,債務者が不動産の転売その他をする可能性があることから,この点に保全の必要性がある(その前提である権利保護の必要性にも欠けるところはない)ものとしてする不動産仮差押命令の申立が許されるか
という論点について,抗告許可決定をした(FAXによる告知を受けた)。
民事執行手続における不動産価値の評価及びこれを基礎とする無剰余通知・取消と現実の不動産の経済的価値の間に乖離があるという民事執行制度に内在する問題のとりあえずの解決として,少なくとも暫定的には適切なものとして許容されるべきものといわなければならないだろうと考えている。
買受可能価額は一般的に市場価額よりも低くなり,本来ならば当該不動産の売却額によって債権の満足を得られるはずの債権者が,このような制度のいわば間隙によって無用の不利益を受けることになる可能性にさらされることになるところ,このような事態は,無剰余取消しの制度を採用する民事執行法が予定し,容認している事態であるかのようにいわれることもあるが,民事執行法は,そのような事態を嬉々として歓迎しているわけでは全くなく,強制競売手続という,限られた期間で限られた情報の元でかつ事後的な保障などもなく,限られた広報しかできず通常の不動産取引におけるそれとは格段に異なる数の潜在的買受希望者しかない「市場」の中では実際の価値を強制競売手続に反映させることが困難であることから,実際の価値よりも低い価格を基準とする無剰余取消をやむを得ないものとして行わざるを得ないものとしているのであって,無剰余取消制度が現実の不動産価値との乖離部分の余剰価値という執行不能財産を作出することを積極的に容認し,これを回避する手続があり得るのにこれを禁じる趣旨に出るものであるとは到底考えられない。