本日,過失相殺のみを争点として控訴した事件の東京高裁の判決がありました。
いわゆる「121関連ファンド商法」という,概要,自動売買ソフトを用いた外国為替証拠金取引(FX取引)により,月3%程度の利益を恒常的に得ることができるとの触れ込みで,資金を交付させるという事件です。原判決も,分別管理も,そもそも運用さえもされておらず,単に金銭を投資金名下に騙取したに過ぎないと認定していました。
被控訴人会社の代表者である被控訴人自然人は,原判決も,故意に,あるいは一部について重大な過失により(金融商品(まがい取引)の勧誘者ないし媒介者としてなすべき注意を何ら尽くさず),虚偽の事実を原告に申し向けて原告を誤信させることにより本件損害を被らせるなどしていたと認定していました。
しかし,原判決は,このような事実関係のもとで,控訴人は投資経験が多く,リスクは理解しているなどと記載したメールで詳細な質問をしていることを以て2割の過失相殺をしたので,「意地の」控訴をしたものです。
本日の控訴審判決は,「被控訴人らの損害賠償責任が肯定される根拠等と,控訴人の関与の内容程度等を総合的に比較考量すると,控訴人の投資判断に過失があったとして損害を減額するのは,当事者間の損害の公平な分担に適うものとはいえず,他に損害の公平な分担という観点から斟酌すべき事由も特に認められない本件においては,控訴人の損害額の算定に当たって過失相殺をすることは相当ではないというべきである。」として過失相殺を否定して請求を全部認容しました。
過失相殺に関する議論は,ここ数年で急激に進んでいます。その中で,こういう,まあ,何となく過失相殺,というのを高裁が改めていくというのは,非常に好ましいことだと思います。