判決報告(商品CFD取引)

 東京地方裁判所平成25年3月19日判決。
 商品CFD取引の違法性について充実した判示がされており,形式的な賭博論よりも強い説得力があると感じられます。ここまで言われれば,業者も反論できまい。
 当該判示部分は,次のとおり。
 「原告の主張するとおり,本件取引は,ロンドン渡しの金現物100トロイオンス(1トロイオンス=31.1035グラム)を1取引単位として,最低取引単位あたり60万円の証拠金を支払ってロンドン渡しの金を売買したと同様の地位を取得し,任意の時点で当該地位と反対の取引をすることによって生ずる観念上の差損金について差金の授受を行う旨の差金決済取引であり,被告会社が提示するロンドン渡しの金の現物価格及びドル円為替変動を差金決済指標とする差金決済契約であると認めることが相当である。
 さらに,差金決済指標となるロンドン渡しの金の現物価格は,被告会社が任意に設定し,ドルの為替レートも被告会社が任意に設定するものとされている。なお,本件取引は相対取引であり,原告と被告が常に利益相反関係にあること,被告会社は本件取引に関してカバー取引を行うなどのリスクヘッジ措置を講じていないこと,被告会社は,金融商品取引に関する許可,登録を受けておらず,相対取引によって生ずる損害(顧客の利益)を担保するに足る財務状況を備えていないこと等も認められる。
 このように,本件取引における売買差金の額は,顧客が買った(又は売った)ロンドン渡しの金の現物価格についてドルの為替レートによって換算した額と,顧客がその後に売った(又は買った)ロンドン渡しの金の現物価格についてドルの為替レートによって換算した額との差額によって算出されるところ,上記のロンドン渡しの金の現物価格も上記のドルの為替レートも,被告会社と顧客には予見することができず,その意思によって自由に支配することもできないから,本件取引は,偶然の事情によって利益の得喪を争うものであって,賭博に該当し,公序良俗に反するというべきである。
 また,本件で被告らは,原告を含む顧客から預託された取引証拠金について,被告会社がどのように運用していたかを全く明らかにしておらず,被告会社が自認する預託金の残高すら原告に返金していないことからすれば,被告会社が自称する商品CFD取引の実体があったとは容易に認めがたいのであり,実体のない本件取引を顧客に勧誘することが原告に対する詐欺に当たることは明らかである。
 さらに,上記のとおり,本件取引は,相対取引であって原告と被告会社が常に利益相反関係にあること,差金決済指標となるロンドン渡しの金の現物価格やドルの為替レートも被告会社が任意に設定できること,被告会社が本件取引について何らのリスクヘッジ措置を講じていないこと,被告会社に資金的な裏付けがなく,相対取引によって生ずる損害について担保がないこと等からすれば,本件取引は,顧客にとって極めて大きな危険を伴う取引であったというべきであり,被告会社としては,本件取引を勧誘する際,顧客に対し,上記のような本件取引の内容を十分に説明すべきであったところ,被告会社は,原告に対し十分な説明を行わずに勧誘し,本件取引を行っていると認められるのであるから,本件取引が賭博や詐欺に該当するかどうかにかかわらず,本件取引は違法なものであるというべきである。」

 追って,HPで紹介します。