判決報告(第一商品)

 今回は、以下の二つの判決についてご報告します。
 第一審:東京地判平成24年11月2日
 控訴審:東京高判平成25年3月28日

 金の現物取引を行おうと思い,第一商品(以下、「被告会社」といいます。)に連絡を取ったら商品先物取引(以下、「先物取引」といいます。)を勧められ開始し,その後FX取引も開始させられ,5か月の取引期間で2400万円以上の損害を被ったという事案。適合性原則違反,説明義務違反,新規委託者保護義務違反等の成否が問題となりました。
 なお、本件では、特定売買は直しが1回、損金に対する手数料の割合は先物取引が9.5%,FX取引が2.5%にすぎませんでした。

 本件においては、主に大きな争点が二つありました。
 争点?:本件取引当時,原告がうつ病を罹患しており,それが取引に影響をしていると思料される状況であったことから、被告会社に病歴(病状)を確認する必要があったか否か
 争点?:本事案は,先物取引開始の数日後にガイドラインの基準いっぱいの建玉が行われ,その状態が続いたがそれを超えることはない中で,被告会社内の先物取引とは別部門の担当者が,FX取引を原告に開始させたという特殊性があったことから、商品先物取引とFX取引を一体として考えて,新規委託者保護義務違反の判断をすることが許されるか

 第一審は、争点?について、
 「原告は,被告会社に対し,うつ病に罹患している旨申告したことはな」いと認定しつつも,「原告は,本件取引当時,うつ病に罹患しており,商品先物取引及びFX取引を行う適格性に疑問があるところ,原告本件取引開始当時70歳と高齢であることや原告が,上記のとおり,ガイドラインによれば原則として勧誘不適格者であったことからすると,被告会社としては,原告の病歴を確認するのが適切な適格性審査であったというべきところ,被告会社は原告の病歴を確認していない」と判断し,その他原告の投資意向,両取引の理解状況等をも検討して適合性原則違反を認めました。

 争点?については、
 先物取引の担当者及びFX取引の担当者のいずれもが,各々他方の取引を行っていることを認識していたこと以上,「新規委託者保護義務の趣旨に照らし」,「本件取引について全体として新規委託者保護育成義務違反」の判断をすることが許される」と判示し,新規委託者保護義務違反が認めました。

 そして、控訴審においても、同判断は維持されました。

 争点?に関しては、この種事案では、被害者が取引当時、何らかの病気に罹っており、それが取引に影響したと考えられるが、被告からはそれを了解していなかったと反論される場合が多々あります。そのような場合について、業者に、「原告の病歴を確認するのが適切な適格性審査であったというべき」であるとしたことは意義のあるところでしょう。

 また、争点?についても、先物取引単体では、新委託者保護義務の基準を守っているが、FX取引をも含めて考えれば、同義務違反があると判断したことは、同種事案での参考になると考えます。

 なお,同社との間には多数の訴訟が係属し,判決に至っているものも相当数あります。弊所のホームページの主な担当裁判例,先物取引をご参照下さい。