ひるおびに出演,報道ステーションでコメント:「かんぽ生命保険の不正問題」

7月31日,今,大きく取り上げられている「かんぽ生命保険の不正問題」で,二つのメディアでコメントをさせて頂きました。

まずは,TBSの「ひるおび」に出演させていただきました。
やはり,スタジオ生放送ということで緊張もしましたが,出演者及びスタッフの皆さんの丁寧な対応のおかげでリラックスしてのぞむむことができました。
前回も指摘しましたが,金融商品取引被害の問題に携わる弁護士としては,このような特集をして頂いたことは大変ありがたく思いました。

今回のひるおびで紹介された事件もまた,極めて悪質なものでした。
そのうち一つは,90歳の女性のもとを,合計27人の販売員が入れ代わり立ち代わり訪れ,10年間で54件の保険契約を締結させたということでした。
そもそも高齢者になってから新規契約を締結する場合,再契約時に保険料が上昇するのが通常であり,顧客には不利益な契約となる可能性が高いといえます。
そのような契約は顧客には何のメリットもありませんから,販売員が報酬を得るため,ノルマを達成するために,繰り返し保険契約を締結したとしか考えられません。

また,報道ステーションの事案で紹介された事案も,顧客にメリットのない契約を繰り返し締結させ,合計で2000万円を超える損失を生じさせたというものでした。

いずれの事案も,もはや正常な金融商品の取引の域をはるかに超えており,言語道断の行為です。

ここで,今回行われた「かんぽ生命保険の不正問題」について,問題となる法令について整理してみたいと思います。

①まずは,保険業法300条が問題となります。
販売員が,契約者に対して,虚偽のことを告げ、または,保険契約の契約条項のうち重要な事項を告げないでする勧誘行為は,保険業法300条1号に反することになります。
この場合,販売員には,1年以下の懲役もしくは100円以下の罰金,またはこれを併科という刑事罰があります。

また,販売員が,契約者に対して,不利益となるべき事実を告げずに乗換契約を勧誘することは,保険業法300条4号に反することになります。
この場合,登録取消や業務停止命令または業務改善命令等の行政処分の対象となります。

②次に,本件で問題となった行為が,消費者契約法4条1項の「重要事項について事実と異なることを告げること」や2項の「不利益事実の不告知」に該当して,取り消し得る行為となる場合もあるでしょう。

③さらに,販売員が,虚偽の事実を告げて,相手方をその旨誤解させ、それにより損害を生じさせた場合には,民法709条に基づく損害賠償責任が成立することになります。
またこのような事情がある場合,販売員に刑事上の責任(詐欺罪)が成立する可能性も否定できません。

今回の件については,日本郵便,かんぽ生命には,不正な契約をさせられた被害者への対応とともに,再発防止に向けた十分な対応が求められるはずです。