(続き)
この様な状況下で複数の抗告許可決定がなされており,最高裁が充実した判断を示すことが期待されていた。
そして,平成23年9月21日に許可抗告審の決定2例(最三小決平成23年9月20日,平成23年(許)第28号,同37号)の送達を受けた。いずれもただ執行抗告を棄却した原審の判断を正当として是認することができるとのみいうものであり,その理由は何ら付されていない。同日付の別の決定(同34号)は,預金検索との関係について一定の説示をするものの,補足意見を含め,債権の特定が公平の観点から求められるものであること,23条照会に応答しないことから負担が増加するとしてもそれは自ら自招した結果であるというべきではないかと考えられることについては,何らの説示もしていない。下級審実務はいったんこの種申立を否定する方向に向かうことになろうが,この論点についてこのような判断しか示されないことには失意を禁じ得ない。預金探索の技術のみではなく,公平の観点から23条照会の前置などをどのように位置付けるべきかというのが,昨年8月から一気に盛り上がりを見せたこの論点の中心に位置付けられるべき論点であったのであり,最高裁の決定が,この点に結局何らの応答をもせずに旧来の預金探索の問題のみにしか言及していないのは,このことを正解していないからであるとも思われる(預金探索のみを抗告理由とする事件について,抗告審係属が後であるにもかかわらずその限度でのみ理由を付して本論点に一応の応答をしたことにしようという姿勢からは,新たに提起された問題意識を正解しながらあえてこれに対する判断を避けたものともうかがわれる節がないではない。)。
いずれにせよ,一連の下級審決定群を契機として実務の取扱いが現状に即したものに変容されていくことを期待したい。(荒井哲朗)