ソフトバンクモバイルが,裁判所の調査嘱託に回答する義務があることの確認を求めるという,少し風変わりな訴訟を提起したことはすでに報告したところである。
ところで,確認の訴えというのは何やらややこしい確認の利益を要するらしく,却下の危険も相当程度にあるように思われた。そこで,請求を損害賠償請求に交換的に変更することとした(1月24日の期日においてこれを行った。)。
その意図は,次のようなところにある。
すなわち,(事件全体としての)本件訴えは,金銭請求が認容されなくても,回答義務のあることが確認されれば目的を達することができるのではないかとの期待に出るものであった。しかし,通常の確認の訴えにおける「確認の利益」のレベルの議論で請求が排斥されるのではないかとの懸念を生じたところ(そのような考えが正当であるとは必ずしも考えられないことはここでは措く),同旨の目的は損害賠償請求訴訟に変更した後にその請求を拡張してする民事訴訟法145条の中間確認の訴えによっても達し得,同請求については,大判昭和8年6月20日民集12巻1597頁が,「訴訟の前提問題である法律関係に争いがあるときには,中間確認の訴えは,何ら特別の煩累を他人に及ぼさないから,当該前提問題である法律関係について争いがあればそれのみで中間確認の訴えの利益は備わり,他に権利保護の利益などの確認の利益を要しない」旨判示しているところであって,通常の確認請求として提起した当初請求に生じうる障害を懸念する必要がないことに想到した。
なお,損害賠償請求という通常の民事訴訟に行政訴訟を(一旦)併合することとなることは,その逆(行政訴訟に通常訴訟を併合する場合(行政事件訴訟法19条1項,41条2項後段))や当初から併合して訴えること(行政事件訴訟法16条1項,41条2項後段)とは異なり,行政事件訴訟法に規定がない(いわゆる「逆併合」の問題)が,これらが許容されることとの均衡からもいわゆる「逆併合」を許容するべきであるし,本件請求は(交換的に変更された「現在生きている請求」である)損害賠償請求の先決問題の確認を求めるものであるから最判平成5年7月20日民集47巻7号4627頁の求める「請求の基礎の同一性」にも欠けるところはないから,中間確認の訴えは適法であろう。
これにより,要らぬ争点を排除して,迅速に裁判所の判断を得ることができればよいと期待している。それにしても,裁判所の調査嘱託に応じなければならないという当然のこと(このことは,ソフトバンクモバイル以外の電気通信事業社が,いずれも調査嘱託のみならず,弁護士法23条の2に基く照会請求に適切に回答・報告していることからもおよそ明らかである。ソフトバンクモバイルのみが通信の秘密を正当に守る存在であり,その余の電気通信事業社は通信の秘密に頓着せずにこれを侵し続ける違法業者であるかのごとき結論は,常識に照らしておよそ採り得るようなものでもなかろう。)を理解させるために,なんと難しい議論を経,困難な手続を追行しなければならないことか。