判決報告:ベトナム未公開株ファンド事件

1 判決報告 
 先日,東京地裁でファンド商法(ベトナム未公開株ファンドへ投資すると称するファンド)の集団事件について,判決がありました(東京地判平成28年2月18日)。

 当該事案は,業者の代表等が,一般的な説明会などは行うが,業者の外務員による勧誘ということは行われておらず,原告らが,自身で被告らのブログ,コラム,メルマガでなどを通じてベトナム未公開株ファンドのことを知り,その後説明会に参加したり,投資の内容を説明するDVDを購入したりした上で,自身でインターネットで出資の申込を行ったという事案でした。

 ①被告らからは,ブログ,コラム,メルマガ,説明会等における話は,ファンドの一般的な話をしただけであって,勧誘行為を行ったとはいえない(原告らが自らインターネットで申し込んだだけである。)。
 そして,②業者は,インターネットの申込に際しては,リスクを確認しなければ出資ができない体制を採っており,これによって説明義務も果たしており,自身に勧誘行為の違法性はない。これで違法性を認めることはインターネット取引の否定である等の主張がなされました。

 これに対して,本判決は,まず①?被告らの勧誘行為を行っていないと主張に対しては,説明会,DVD,コラム,メルマガなどの性質に鑑みれば,被告らの行為は勧誘行為にあたるとしました。

 また,②被告らの説明義務を果たしたとの主張に対しては,被告らは,説明会,ブログ,メルマガ及びDVDなどを通じて,原告らが本件ファンドのリターンにばかりに目がいってしまう状態を作り上げていたという本件においては,インターネットの申込の際にリスクを確認しなければ出資ができない体制を採り,説明会の最後に一般的なリスクの説明を行っていたとしても,それだけでは説明義務を果たしたとはいえないとしました。
 さらに,本判決は,被告らの行為に断定的判断の提供の違法も認めました(断定的判断の提供については,裁判では言った言わないの争いになることも多く,なかなか認められない傾向にあるのですが,本判決はその点を認めました。)

 インターネット取引が問題となる事案では,外務員からの直接の働きかけはなく,説明義務違反を認めにくいという状況はあると思いますが,本判決は,本件の特殊性(原告らが本件ファンドの有利性ばかりに目がいってしまう状態になっていた)に着目して,インターネットの申込の際にリスクをインターネット上で告知したのみでは足りないとした点で意義があると思います。

 ただし,残念だった点もあり,それは,商品自体の違法性について,明確な判断を避けている点です。
 本判決は,本件で問題となった商品について,海外へ行っての金銭が流れている等の点に鑑みて,「出資者に損益を適正に帰属させる実質を欠いているとまではいえない」としています。
 しかしながら,これは考え方が逆で,金融商品ならば,業者側が,出資者に1円も返金されない事態に至った経緯,理由(本件はそのような事案でした)を,明らかにおかしくないと説明できない限りは,商品自体を違法と考えるべきだと思います。
 すなわち,「出資者に損益を適正に帰属させる実質を備えている」と断言できない限りは,その商品自体を違法とすべきです。

 以上,判決報告になります。

2 今日の1枚

2016.2.23-1

タマネギ列車(石北貨物) 常紋信号場-金華

随分前の写真です。

道東の真冬,快晴の早朝。
数年来,夢に見ていた情景です。
最高の条件だからこそ,撮影地も最高の場所にこだわりたい。
そして選んだのは「常紋峠」(あっ,結局いつもの場所でした(笑)),しかし,連日の大雪で,この日の山道は入り口から全く除雪がされていない状態。

放射冷却で気温が零下20℃を超える環境の中,スノーシューを履いて山道を分け入り,線路を俯瞰できる場所へ,時には腰まで雪に埋もれ,時には小川に落ちながら,一歩,もう一歩と高度を稼ぐ。
そして,午前8時半過ぎ,統一色のコンテナを2台のディーゼル機関車がプッシュプルで牽引する長大貨物列車は,山に轟音を轟かせ,真冬の峠道に躍り出ました。

当時を思い出すと,今でも熱くなる,そんな1枚です。