さらば夜空を駆け抜けたスーパースターたち!+判決報告

1 判決報告
 去る2月4日,東京地裁でファンド商法について,判決を得ました。
 この判決は,過失相殺を認めた点等不満な点も多く,現在控訴中なのですが,良い部分もありました。

 この事件は,業者の代表等が,一般的なセミナーなどは行うが,業者の外務員による勧誘ということは行われておらず,原告らが,その説明会などで,当該ファンドのことを知り,自身で進んで同人らのブログなどを読んで,自身でインターネットで申込を行ったという事案でした。
 被告らからは,自身は勧誘は行っていない,説明会で一般的な話をしただけで,原告らが自らインターネットで申し込んだだけであり,よって,自身に勧誘行為の違法性はない,これで違法性を認めることはインターネット取引の否定である等の主張がなされました。

 これに対して,裁判例は,説明会やブログを通じて,原告らが本件ファンドの有利性ばかりに目がいってしまう状態を作り上げていたという本件においては,インターネットの申込の際にリスクをインターネット上で告知したのみでは,説明義務を果たしたとはいえないとしました。
 このようにインターネット取引が問題となる事案では,外務員からの直接の働きかけはなく,説明義務違反を認めにくいという状況はあると思いますが(そのこと自体問題であるとは思いますが),本裁判例は,本件の特殊性(原告らが本件ファンドの有利性ばかりに目がいってしまう状態になっていた)に着目して,インターネットの申込の際にリスクをインターネット上で告知したのみでは足りないとして点で意義があります。

 控訴審判決が出ましたら,またご報告できればと思っております。

 

2 さらば夜空を駆け抜けたスーパースターたち!
 本日,3月14日は,JR各社のダイヤ改正。
 北陸新幹線開業,上野東京ラインの開業…。
 新幹線開業で盛り上がるのは最初だけ,上野東京ラインも複雑極める東京のダイヤ状況を混乱の極地にするだけ。

「3月14日ダイヤ改正にて北海道方面へ向かう夜行列車の相次ぐ廃止。」
 今回のダイヤ改正の知らせを受けて,私は,まさに名状しがたい寂寥感に襲われている。

 夜行列車,ブルートレイン…。
 この言葉に,どれだけ旅情をかき立てられてきただろうか。
 この言葉を聞くと,胸が熱くなる鉄道ファンは多いはずです。
 当時は,茶色や紺など,冴えない色の車両が多く,そのような中で,目の覚めるような青で統一された客車は,さぞかしみんなの目に美しく映ったことでしょう。
 そんな美しい客車に付いたニックネームは,「ブルートレイン」。
 その美しさは,今でも古さを感じさせず,見る者は目を奪われます。

 そして,昭和末期,青函トンネルの開業に合わせ,豪華列車の名を冠して時代の寵児として運行を開始したのが,「北斗星」でした。
 そんな列車に付いた列車番号は,栄光の「1レ」,紛れもないスーパースターでした。
 その後,トワイライトエクスプレス,カシオペアと趣のある名の付いた北海道行き夜行列車が各地に次々と登場し,多くの旅人にたくさんの思い出をもたらしてくれました。

 しかし,時を経て,時代はひたすら高速化の道を走り始めます。
 そしてあろうことか,鉄道までもが,速度で到底かなうとも思われない飛行機に,速度で対抗しようとし始めます。
 突然訪れた夜行列車の不遇の時代,次から次へと,かつて時代の先端を走った名列車達が,ダイヤ改正毎にいとも簡単に切り捨てられていきました。
 理由はいつも同じ,「利用客の減少」。
 それはそうでしょう,JR各社は,夜行列車について何ら対策もせず完全放置,それどころか邪魔者扱いしたのですから。
 それでも一定の客が必ず乗っていたことが実はすごいことで,暖簾も出さない,何の工夫もしない,なのに高額な料金を取る,そんな料理屋に一定のお客が常時入っているような状態でしたから。

 仲間達が,次々に消えていく,そんな不遇の時代も,北海道へ向かう夜行列車たちは,黙々と鉄路をひた走りました。
 先頭の機関車に掲げられたヘッドマークは,夜行列車の誇りであり,そして矜恃であったと思う。
 そんな夜行列車が,ある者は終焉を迎え,またある者は,もうすぐ終焉を迎えようとしています。
 そんな彼らを,仕事の合間を縫うようにして,北へ北へと本気で追いかけた,この一年。

 突然現れたちぎれ雲(通称ゲリラ雲)により惨敗を喫した礼文華峠の夏の悪夢も,
 車の中で夜を過ごして(いわゆるマルヨ)トワイライトエクスプレスを待った長万部の秋の夜も,
 寒空で6時間,北斗星を待ち続け,有珠山バックに晴れを極めた冬の日も,
 そして,撮影が終わり事務所に戻り,連日徹夜で起案の山と奮闘した日々も,
 今はすべて良い思い出。

 ここに心から愛した夜行列車達の最後の姿をいくつか紹介したいと思います。
 (なお,写真はクリックすると大きくなりますので,試してみて下さい。)

1-1

カシオペア 長万部-静狩 D610+300mm/f4D

1-2

北斗星 長万部-静狩 D610+300mm/f4D

 ここはカニで有名な長万部。
 空気が澄んで遠くの山まで見渡せる秋の日,今日はここしかないと思って選んだ撮影地。
 東京から長駆,夜を駆け抜けてきたカシオペアと北斗星,終着札幌まではもう一息。
 乗客は,食堂車で朝食の時間でしょうか(自分は,この日はたらふくカニを食べました)。

1-3

トワイライトエクスプレス 長万部-静狩 D610+70-200mm/f2.8G

 場所を変えて,長い車体をうねらせてS字カーブを疾走する姿を。
 迫力の機関車DD51が重連で,長大の客レを引いて,非電化区間を疾走する。
 こんな鉄道情景は日本中どこを探しても北海道にしかなかったし,そして,再びこのような情景が日本に現れることはないでしょう。

2-1

北斗星 礼文-大岸 D610+70-200mm/f2.8G

 1つ先のトンネルまで見渡せるトンネルから飛び出して,首カックンのところを。
 北海道らしいスケールの大きい撮影地でした。
 スノープロウに旋回窓,寒冷地用の重装備機関車が,気候の厳しい北の大地の列車であることを物語っています。
 
 北斗星は,自分にとって北海道の思い出そのもの,北海道に行く時はいつだって北斗星でした。
 北斗星には,今までの人生で50回くらいは乗っていると思います。
 機関車を先頭に,食堂車,ロビーカー,寝台車と連なる列車は,みんなのたくさんの思いのせていつも夜空の下を走っていました。

 下り北斗星はいつも,旅の始まり。
 夜の東北路を駆け抜ける車窓を見ながらこの先の旅のこと,今までの人生のこといろいろな思いが心を巡りました。
 そして朝起きると,噴火湾が朝日と共に迎えてくれて,大沼公園を見ながら食堂車でのモーニング…。
 オリエント急行風のテーブルライトが素敵なJR北海道の食堂車がお気に入りでした。

 上り北斗星はいつも,旅の終わり。
 函館に近づくと見える,同街の夜景。
 宝石をちりばめたような光景を寝台に寝っ転がりながら眺めていると,後ろ髪引かれる思いで北海道を後にする自分の心が癒されれて,東京に戻ってからまた頑張ろうという気持ちにしてくれました。
 帰りのガラ空きの食堂車で食べた,バブル時代のペンションでよくでてきたようなもちもちの食感の(絶滅危惧種の)ハンバーグ定食も良い思い出の1つ。

 そして,冬場は遅刻常習犯(「遅延王子」なんて愛称も(笑))として知られる北斗星!
 乗っていると大雪で大幅遅延,札幌までたどり着ければばいい方で,函館打ち切り,長万部で打ち切りということもしばしば。
 時には,札幌を出て東京に向かうはずが,函館で打ち切り何てことも…。
 「本州行き夜行列車が北海道で打ち切りって,どないやねん!」と突っ込みを入れたくなるところですが,そんなときは,食堂車でカレー(名付けて「遅延カレー」)を振る舞ってくれる,そんな優しさも持ち合わせている暖かい列車でした。

 あの非日常の日々が懐かしい…,そして,もう味わえなくなるあの瞬間…。

 そんな北斗星を廃止に追いやった新幹線が,来年函館に到達しますが,僕は,絶対に北海道に新幹線では行きません。
 これからは飛行機で北海道に行くことを北斗星に誓います。

3-1

トワイライトエクスプレス 北舟岡-伊達紋別 D610+70-200mm/f2.8G

 荒涼とした冬のある日,夕暮れ時の噴火湾を大阪へ向けて疾走するトワイライトエクスプレス。
 その名のとおりトワイライトタイム,青空が印象的な日だったので思いっきり空を入れたカットを。
 列車の中の旅人は,ロビーカーから海に沈む夕日を眺めていたことでしょう。

4-1

北斗星 洞爺-有珠 D4+300mm/f4D

 ここは撮り鉄には有名な撮影地(いわゆるお立ち台),通称,「宇宙軒カーブ」。
 宇宙軒というラーメン屋の裏手から坂道を登っていくと,この「ステージ」があります。
 朝日を浴びて車体をうねらせやってくる姿は,長大編成の迫力十分(機関車重連がたまらん!)。
 なお,この宇宙軒ラーメン,とても美味しいです。

5-1

トワイライトエクスプレス 北舟岡-伊達紋別 D610+70-200mm/f2.8G

 冬の北海道で撮影していると,突然の吹雪に襲われることもしばしば。
 この時も,直前まで夕日が線路を照らしていたのですが,列車通過直前にこのような状況に。
 でも,冬の北海道を撮影しているのですから,このような姿も風情があって結構好きです。

6-1

北斗星 稀府-黄金 D610+70-200mm/f2.8G+TC20Ⅱ

 この日の北斗星は3時間遅れの情報が…。これは稀府(まれっぷ)付近の通過は正午過ぎだ。
 その時間なら,有珠山バックに光を浴びた北斗星が突っ込んでくる姿が決まる!
 早速,午後から車体に日が当たりそう場所を地図で探索,そして決めた撮影地がここ。
 北海道の真冬の一日,吹きすさぶ寒風の中,北斗星は待てど暮らせど,来ない…。
 そして,本来の通過時刻から遅れること6時間,空の雲がすべて消え,西日に車体が照らされるという最高の条件の中,待たせるだけ待たせたこの日の主役が,ゆっくりとファインダーの中に現れました。
 「北帰行」そんな言葉がぴったりな,北斗星の最高の1枚になりました。

8-1

トワイライトエクスプレス 礼文-大岸 D4+300mm/f2.8G

 露出よし,前後のバランスよし,天地のバランスよし,すべてを入念に確認。
 やがて遠方に2灯のライトが見えると臨戦態勢,雪煙を舞上げて,威風堂々たる登場。
 冬晴れの早朝,朝日に照らされ輝くその姿は,スーパースターの風格十分。
 金色のナンバープレートがキラリと像を結んだ瞬間,この日のために新調したレンズをセットしたD4でシャッターを切った渾身のカット。
 常紋の山々でタマネギを地道に運ぶDD51の姿にも魅せられてきましたが,本線で優等列車の先頭を張るDD51の勇姿もかっこよかったです!

 まだまだ,たくさんの思い出がありますが,もうこのくらいにします。

 最後に。

 僕らの北斗星には,まだまだ夢の続きがありました。

 伝説の蒸気機関車C62がブルートレインを牽引して,冠雪した後志の山々をバックに力走する姿…。
 DD51がプッシュプルでブルートレインを牽引して,常紋の急峻な山々に全力で挑む姿…。 
 そんなまだ見ぬ情景を,鉄道ファンは皆,夢見ていました。
 しかし,それは夢のまま,今日別れを迎えました。

 出会いがあれば別れがあるのが人生であり,避けては通れない世の常,それは鉄道も同じです。
 だからこそ,別れのこの瞬間も,彼らと向き合うのだ,万感の思いとともに。

 今まで本当にありがとう,そして,さようなら…。
 夜空を駆け抜けた僕らのスーパースターたち!

 そして,いつの日かまた,僕らの前に現れてくれる,そんな奇跡を信じて…。