1 平成17年最判と仕組債①
最近自分が担当している事件に,仕組債と呼ばれる金融商品に関する事件があります。
仕組債とは,一般的に債券の利回りを上げるためにデリバティブ等を使って追加のリスクを組み込んだ債券を指します。
通常の債券は,定期的に利率分の利子を受け取ることができ,満期日を迎えると,額面金額である償還金を受け取ることができるもので,発行体の信用リスクを除いてはリスクがなく,比較的安全な金融商品と考えられています。また,債券によっては満期日まで待つことなく市場で売買することも可能です。一般に人が思い浮かべる債券のイメージはこちらではないでしょうか。
一方,デリバティブを利用して,金利リスク,為替リスク,株価リスクなどのリスクを加えることにより,通常より高いリターンを得られるようにして組成されたの債券がが仕組債です。また,仕組債は,満期日前に中途で売却することに大きな制約があるのが通常です。
同じ債券でも両者は,随分異なった性質であるといえます。
このような仕組債の販売(勧誘行為)の違法性,特に適合性原則違反の有無が問題となる場面で,判断規範とされているのが,最判平成17年7月14日民集59巻6号1323頁(以下,「平成17年最判」といいます。)です。
平成17年最判は,「証券会社の担当者が,顧客の意向と実情に反して,明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するなど,適合性の原則から著しく逸脱した証券取引の勧誘をしてこれを行わせたときは,当該行為は不法行為上も違法となると解するのが相当である」と判示し,それは具体的な商品特性との関係で検討することが必要であるとしています。
その上で,?「デリバティブ取引の中でも,より専門性の高い有価証券店頭オプション取引などとは異なり,証券取引所の上場商品であり,広く投資者が取引に参加することを予定するものである」こと,?「投資者の保護のための一定の制度的保障と情報環境が整備されている」ことなどを理由として,同事案において適合性を否定すべきとまではいえないとしています。
そこで考えるのです。
仕組債は,平成17年最判の視点で考えると,上場商品ではなく,より専門性の高い有価証券店頭オプション取引など店頭デリバティブ取引に関する金融商品で,投資者の保護のための一定の制度的保障と情報環境が整備されていない金融商品であり,個人投資家に適合性を認めることができない金融商品である。
確かに,上記??の要件は,適合性原則との関係で十分条件に過ぎず,?でないこと,もしくは,?でないことは,適合性原則違反が認められることを直ちには意味しないかもしれませんが,少なくとも適合性の判断は厳格になすことが要請される金融商品であるといえるはずです。
同種訴訟において,適合性原則違反が認められることは,必ずしも多くはありませんが,まずは,上記のような平成17年最判の考え方を裁判所に理解してもらうことが大切であると思っています。
2 そして…ばんえつ物語①
それでもって,次は,趣味の話。
タマネギ列車の話が一段落つきましたので,今度は,ちょっと違う話をしてみたいと思います。
今回は,郡山と新潟を結ぶ磐越西線を走る蒸気機関車(SL)牽引の列車,「ばんえつ物語」号を紹介したいと思います。
ばんえつ物語号(上り:8226レ)は,磐越西線の中でも,新潟を出発して東に向かい,新潟県から会津地方にかけての山間を抜けて,会津若松を目指す観光列車です。
牽引機関車は,「C57(シゴナナ)の180」。
シゴナナ型蒸気機関車は,その端麗な容姿から「貴婦人」の愛称で親しまれています。
道中は,日本の原風景のような景色が続く,風光明媚な路線です。
そして,この時期は,新緑の季節…。
青葉がつき始めた木々や遅咲きの桜。
残雪の残る飯豊山系や磐梯山の山々。
エメラルドグリーンの水が,何度も蛇行しながらゆったりと流れる阿賀野川
その川にまたがる幾何学的な形を持つ,色とりどりのトラスト橋。
そんな美しい景色は,水の入った田んぼに水鏡となって映っています。
そのような中で,今回ご紹介するのは,この1枚。
列車は,葉のつき始めた木々の中を走る逆S字カーブの急勾配の線路を,爆煙を上げながら,豪快なドラフト音とともに登ってきます。
「シュシュポッポ,シュシュポッポ,ピーーー!」
よくSLの音の表現で使われる擬音語ですが,本当に,そんな感じでした(笑)。
SLらしい迫力あるカットになったのではないでしょうか。
因みにSLは,急発進や急勾配の登りなど,パワーを要する場面でしか煙を出しませんので,爆煙を上げる場面というのはなかなか巡り会えないのです。
なお,SL過ぎれば,撮影者は爆煙に巻かれ,「ゴホッ,ゴホッ」という感じになります(笑)。
?としている以上,?もいつか紹介するつもりです。
季節を変えて,逆S字カーブのカットを1枚,追記(6/27)
右に左に車体をくねらせながら,ばんえつ物語号がやってきます。